美しい花のような少女。
けれどその「花」を枯れさせることを恐れた兄は、少女に「花のままでいる」ことを望んだ。
そのとき、少女は花だった。花だから意思などない、花はそう思っていた。
だから眠り、いびつな氷中花になることを拒まなかった。
眠っていれば、花は枯れず、ただ夢見るだけでいられるから。
けれど花は、とおいとおい、いつかの先、全く不意に、唐突に息吹いた。
息吹いてしまった、もう一度。
今度は生きる「少女」として。
主人公の小夜子は、そんな「花」だった。
めざめたことで、「花」であることの意味を考え直さなければならなくなった。
この話は、そんな空虚な「花」が、小夜子という「少女」として咲くまでのおはなし、といえるのかもしれない。
何処か「銀河鉄道の夜」を彷彿とさせる場面がある。
静かに淡々と、それでいて消すことも消えることもできずに灯り続けるもの、濁流のように渦巻くものを、確かめざるをえなくなる小夜子。
けれど小夜子のたどる「道」は、銀河鉄道のそれとは違う、「少女の歩む道」である。
ゴンフレナ、千日紅。不滅の愛。
いびつな不滅を置き去りに、小夜子という「花」のたどり着く先は。