1 読む前の印象や予想など(表紙やあらすじなどから想像したこと)
あらすじの感じから、人というよりはこの世界自体が主役なのではないかと感じた。
何故人を鞘としたのか? とても奇抜な設定ではあるが、そうしなければ成り立たない何かがあるのだと思う。
女性を鞘とした必然性こそが、この物語の重要な部分でありオリジナリティを形成しているのではないかと感じた。
世界自体が主役と感じたのは、この理由によるものである。
2 物語は(どのように始まっていくのか?)
ある旅人が別の旅人と出逢う所から始まっていく。主人公は旅芸人の方だろうか?
彼らは旅芸人の誘ういを受け、近くの村まで同行することとなった。そこでこの世界について語られており、剣士は特別な意味を持つことが明かされていく。旅人たちが村につくとそこは活気がなかった。果たしてその理由とは?
3 世界観について
旅芸人:ファン、エル
旅人:フミ
女性の身体が鞘となり剣へ変化するには、儀式が必要。最初の村では、強い剣を得るためのプロセスが明かされていき、旅人それぞれの境遇なども明かされていく。いわば、世界観や舞台説明のプロローグのようなもの(物語や世界観を理解したり、掴むためのもの)だと言っても過言ではないと感じた。
この剣については、誰も彼もが持てるわけではなく剣士と呼ばれる者が所持しており、それは自分の妻ではなく他人の”妻”を奪って剣(鞘とする)に変える。何故妻なのか? これにはある理由があり、それは作中で明かされている。
4 良かったところ。印象に残ったところ。好きなセリフなど。
・主人公に焦点が合っている
・伏線をきちんと回収している
・意外性がある
・悪がはびこっているようではあるが、ちゃんと爽快感がある
・設定がしっかりしている
・時代劇の好きな人が好きそうな構成である
・登場人物は多いが、名前のついている人物が少ないため、混乱しない
5 お奨めしたい部分
一章のみの話しの流れでの説明とはなるが、”絶望と希望を繰り返すことにより最大限の爽快感を読者に与えることができる作品”だと感じた。一章では話の流れや世界観、主人公の目的などが明かされているのだと思う。主人公は認めてはいないが、それ(ネタバレになるので詳しく書けないが)が旅の目的なのだと感じた。なので、方向性の分かりやすい作品でもある。
主人公の最終目的はなんだろうか? 行きつく先とは? 混沌としたこの世界に彼は光となるのだろうか?
見どころ満載の作品だと感じる。
6 物語のその先を想像して
主人公の目的が分かったので、この先は悪を成敗し世の中を変えていく物語なのではないかと想像する。
そして最終的には、この国 (世界)自体を変えていくのではないだろうか?
あなたもお手に取られてみてはいかがでしょうか?
お奨めです。
Twitterのリツイート企画できました。
作品の話の筋がしっかり通っていて、とても読みごたえのある作品でした。
あくまでも剣士は副業で本業は旅芸人。みんなを笑顔にするために剣を取るのではなく、芸を磨いて各地を旅する主人公の姿はとてもまぶしく、まっすぐでよかったです。最初は少なかった旅仲間も、主人公の人柄があってだんだんとにぎやかになっていく描写はとても心温まるものでした。
世界観もしっかりしており、「女性が剣となる」、「レア度が存在し、効果も個人差がある」という組み合わせはあるようでなかった組み合わせでとても新鮮でした。
また、戦闘描写も細かく、ただ剣を振るのではなく、どう効率よく戦うかなどの姿は必見です。
戦が変わる。
剣が変える。
力を宿し、女に宿り、
確率により顕れる、
その名も◆精剣◆、覇の要。
戦が果てて、
世が荒れ果てて、
なお民草に塗炭の苦。
訪れたのは平和に非ず。
世を統べたのは秩序に非ず。
◆力◆と◆力◆、■欲■と■欲■、求め諍う剣士たち。
悲嘆の野、
絶望の原、
弱きの涙、
強きの傲。
かくも翳りし世を渡りゆく、
旅芸人の馬車一つ。
◆力◆のさばる只中に、
◇笑み◇を育み希望を灯す。
◇愛◇とは押して奪うに非ず。
◇笑み◇とは押して作るに非ず。
いわんや◇幸◇においてをや。
通りがかった先々で。
時には剽げ。
時には和を説き。
優しさを持ち。
民に寄り添い。
忍ばせたるは――真の顔。
傍には◆精剣◆。
身には◇御流儀◇。
□智□を駆り、◇技◇駆り、■悪■を刈る。
◆力◆など無為。
■格■など無意味。
当てねばただの虚仮おどし。
落ち着け。虚を衝け。隙を衝け。
勇気を奮え。
◇愛◇もて挑め。
頭を絞れ。
裏を掻け。
要の刹那。
◆抜剣◆の時。
◇心◇を強くし、
□技□をぞ極め、
□体□もて語れ、
その□信□と◇愛◇。
彼の◇女神◇の宿りしは。
■運■には非ず。
■格■にも非ず。
ましてや◆力◆などでもない。
大切なひと。
愛しい心。
認めてくれた、その事実。
――いざ覆せ。
この一振りに、
全身全霊、
渾身総身、
あらん限りの◇愛◇をぞ注ぎ。
――その笑顔にて世を照らせ。
◇女神の白刃◇
覇でなく、義でなく、理でもなく。
◇愛◇こそ唱え、征く旅一座。
女の身体を鞘とする剣型の兵器『精剣』。
『精剣』の存在が生み出した数々の大戦により荒廃した世界。
大戦は終息せしとも爪跡深く、さらにはそんな状況下で、も力を求める『剣士』達により平和は夢物語。
そんな荒んだ世界で、男女一組の旅芸人が、『赤茶けた大地を畑や街に、煤けた顔を笑顔に変えたい』そんな想いを胸に、ゆっくりと馬車を走らせる。
物語の構成要素全てが、主人公の想いを一際際立たせているのに成功している秀逸作品。大戦により荒廃した世界、それほど優秀ではない精剣を宿したパートナー、微妙な立場の生い立ち、いまだにひとの心を蝕んでいく大戦の爪跡、精剣至上主義のような価値観。そう言った事象ひとつひとつに向けられる主人公の心情、そして決意。見事にライトアップされ、主人公を応援したくなる環境が造りだされている。
是非ご一読頂きたい!
この人の作品は、森のなかの根っこの深さや密度が段違いです。
インプットしてきた知識量がちがうから、さらりと書いているように感じる場面も、じゃあ自分が書けるかって言うと絶対無理。
書籍で繰り返し読みたいなぁと思わせる「強い」作品です。重くないのに。
強いスキル、レアな精剣こそが価値がある世界で、主人公は最初から唯一無二の人エルと彼女に宿る精剣を持っています。強いスキルでもレアな剣でもないけど、「これこそが最強」と信じている主人公は最初から勝ってるも同然。
主人公の強さと魅力にはそれだけの背骨があるから、不敗でもチートを感じさせません。
この先のクライマックスが楽しみ。
作者の軽やかな筆致に積み上げられた知識量という土台があるのと同じように、主人公の強さにも土台があるってわけだ。やるねえ。
軽快でありながら一本軸の通ったファンタジー、ぜひ読むべしです。
私は82話〜が好き。
この小説はですねぇ……あまり詳しくは書けないですね。ネタバレ的な意味で。とにかく第一章で私はやられました。そっちか、と。
情景描写や登場人物の感情の機微などはとても高いレベルでまとまっています。だからこそ、読んでいてストレスがない。スラスラと読み進めることができました。
発想もお見事ですね。女性の身体を鞘とする。
「男は刀、女は鞘」「元さやに戻る」などといった言葉がある様に、女性が鞘に例えられることはよくあります。ですが、比喩表現ではなく女性を鞘にしてしまうというのは、思いつきもしませんでした。その発想力に脱帽です。
思わずくすりと笑ってしまうような場面があったり、時代劇のように悪人成敗ですっきりするような場面もあったりで、とても楽しめる作品です。
ある意味で王道とも思えるこの作品、皆様も一読してみてはいかがでしょうか?
この物語の面白さは、まず何より「わかりやすい」ことだと思う。
文章もだけれど、「物語が難解でない」という点で。
この話には、難しいことは、おそらく何処にも置かれていない。
なのに、読む側に考えることをやめさせない、やめたくないと思わせる文体と展開。
それぞれのエピソードに丁寧にまかれた謎の種の育つ様はとても骨太で、物語を色とりどりなパズルのような知的な構造に仕上げており、その妙味は全く失われない。
簡単に言えば、「なんておもしろいおはなし!」という言葉に尽きる。
などという面倒な御託はさておいて。
女性が剣になる?
大好きですね?
「おもいのつよさ」「遣い手と剣の繋がり」、そんな「互い」の心の在り方こそが真の強さになる?
最高じゃないですか?
それぞれのエピソードの感触は、どれもふわりと風のように軽くて、まるで主人公のありようそのもの。
けれどその軽さが、物語を通して貫かれる「確固たる重み」あればこその軽さであることを、読み進めるうちに自然に感じ取れる。
好みです。大変好みです。
これを書いた現在、彼等の夢をかなえる旅はまだ終わりの気配はなさそうです。
が、それはつまり、彼等の披露する「美し芸」を、特上の席で見る楽しみも、まだまだあるということでしょう。
どの時代にも象徴的なヒーローがいましたが
この物語には、ヒーローの歴史を編み込んだような特徴的な主人公が存在します。
それが主人公のファンです。
明るく朗らかで、のほほんとした雰囲気の彼ですが、能天気な素振りの裏には、知性と真っ直ぐな使命感を持っています。
権力と暴力を身にまとう悪い大人に、ファンが知恵と勇気で立ち向かい、見事勝利する姿はとても爽快です!
そんなファンの相棒は、姉と慕う年上の少女エル。二人の間には信頼という絆がしっかり結ばれ、ギャグやエロに走ることなく、洗練された感情で思い合う姿が綴られています。
主人公たちは一貫して「権力と暴力による制圧」を「知恵と勇気と愛情」によって鎮火させていきます。ですが普通にやると内容が薄くなってしまいます。この物語がそうならないのは、作者様による構成のうまさが根底にあるからです。あっと驚く仕掛けや展開に唸ることでしょう。