確率を越えた存在《ヒロイン》―2
「……は? 街がない?」
ゲーム世界の中に街がないって言ってるんだよな? この
え……理解できる? 俺には出来ない。
「は、はいぃ。
わたしは所属できる
ちょっと強目の口調になってしまったのか、魔法使いはビクつき始めた。
少女の碧色で真っ直ぐに肩口まで伸ばした綺麗な髪が、そよぐ風でファサファサと揺れている。
そしてその髪色と同じ色の瞳が潤みを含ませながら、こちらをじぃっと見ては合わせる視線を逸らしてを繰り返している。
……少女は確かに言った。所属できる
「もしかして、ユニーク
「はいぃ。……わたしは治癒士見習いというユニーク
ヒーラー、か。
……仮にヒーラー職が全くないとした場合、この子が
なるほどなるほど。今はまだ推測の域を出ないが、アルマトの言っていたユニーク
だけど少し変だな。アルマトはあのチュートリアルの中で確かに″中立都市″と言った。
それについてをあまり深く考え過ぎても仕方ないけど、とりあえず一息つける場所を探し当てないとな。
「おっと、悪い。まだ名乗ってなかったな。俺はソウキ。結晶士っていう、今は君と同じ立場のユニーク
「……コ……、コットって言います。わ、わたし、ゲーム下手ぴーで……。
アルマトさんから色んなことを聞いて覚えたのはいいですけど、いざこの世界の中に飛ばされてから、全然上手くいかなくて……」
まぁ、さっきの戦闘でのあの感じを見てればそうだよな。なんか今もキョドってる感じするし。
単に俺にビビってるだけかもしれないけど。思い返すと俺はキャラの見た目をいかついものにしていたしな。
「まぁ、六体のモンスターに囲まれてても、俺がこうやって助けに入るまで死なずによくやったよ。
落ち着いてやりゃあ敵も倒せるようだし、そう後ろ向きになることはないだろ」
まぁ、自分で言ってて気休めにしか感じないけど、それでもコットにとって俺の言葉が、このゲームを辞めちゃわない一つの理由になればと思って言ったつもりだ。
「あ、あの……」
なんとなくコットと話していると、会話がひとテンポ遅れるのが少しイラつく。まるでだいだいと話しているような感覚だ。
まぁだけどだいだいみたく、わざとでやっている訳ではないからコットとのこのやり取りでなんのかんの思ったり、言ったりするのはないとは言い切れないけど、俺の方が多分歳上だと思うし、それだけは極力ないようにしたい。
「ん? どした」
「わ、わたしとパーティを組んでくれませんか? 始めたばかりでフレンドも居なくて、ユニーク
「あー、うん。いいよ。パーティってどうやって組むの?」
このゲーム、本当に色々手探り過ぎないか?
それとも俺が本来アルマトから教えて貰うべきことをすっ飛ばしてここまで来てしまったのか?
「ちょっと待ってて下さいね」
コットはポーチを軽く叩き、メニュー画面を操作し出す。
直後、コットさんからパーティー申請されています。参加しますか? というウィンドウと共に、はいいいえの選択画面が出た。あ、
『同じフィールドに居る近くのプレイヤーとパーティを組むことで、フィールドやダンジョンの攻略難易度が下がります。様々な
だと。なるほどね。このゲームの進行に関する何らかの
それをあのアルマトとのやり取りで拾えてるかどうかで、メニューにある
「これで、わたしのパーティに入れるようになったと思います。どうですか?」
(待てよ……?)
とすれば、コットが持っている情報って結構多いのかも知れないな。一度一通り教えて貰うべきか。
「お、サンキュー。明日も仕事があるからあんまり長くはここに居られないけど、よろしく頼むよ」
俺は[はい]の所をタップして、無事にコットのパーティへと参加する事が出来た。
俺の目の前のコットの頭上には、HPとMPを表すゲージが表示された。さっきの戦闘で結構なダメージを受けていたのか、HPゲージの六割くらいを空白を占め、残りの部分が黄色くなっている。
新たに表れた
「はい、よろしくお願いします! とりあえず、安全にログアウトできるエリアを目指しましょう」
なるほど。そこら辺で適当にログアウトすると、ログインした時にモンスターや他のプレイヤーに狩られている可能性があるのね。なかなかシビアに出来てるよ。
コットのことや、アルマトから聞きそびれたであろうこのゲームの最低限の情報をコットから聞き出しながら、俺達は広がる大自然をゆっくりと歩いていく。
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