バフ毒虫―2
予めだいだいがやっておいてくれたUPC間でのフレンドリンクのおかげで、
どうやって、と言われると″トレード″っていうちょっと小ズルい方法でだ。
チュートリアルの間、それもフレンド登録されているID同士のみでしか使うことの出来ないこのトレードは、正直言って一般的なプレイヤーにはゴミ機能に等しい。
だってチュートリアルの間しか使えないんだぞ?
チュートリアルの間はレベルが上がることはなく、ダンジョンもない。街もない。
全てのプレイヤーが、一体何を交換するんですか? 状態である。
そんなトレードでも、俺にとってはとてもありがたい機能だった。
だいだいは手持ちの
これで無の低級
それに加えて、だいだいのキャラが所属する
″火の″って付くくらいなんだから、ちょっと火力に期待したい所があるよな。
俺からは、ブルーウルフサーベルをトレードに出してあげた。
どうせ装備できないしな。だいだいは剣士職だって言ってたし、ブルーウルフサーベルの武器性能は俺にはわからないけど、しばらくの間は使ってくれるだろう。
電脳空間でだいだいに、
まだコットとの待ち合わせには少し早いよな、なんて考えてる内に俺の視界はフィールドへと切り替わった。昨日よりスムーズに意識の切り替わりが行われてる気がするな。
「さて、と。流石にまだコットは居ないな。今の内に狩りでもやっとくか」
コットと昨日会ったのは、多分二十二時ちょっと過ぎた位だと思う。まだ四時間近くはある。
ちょっとばかしリザードサイスにちょっかいを……いや、戦闘ボットを見つけて
なんて考えながらのたのたとフィールドを歩いていると、目の前に現れたのは昨日と変わらぬ狼の群れ。
「攻撃のバリエーションを増やすのもありだな……ちぃっと実験に協力してもらうぞ」
聞こえちゃあいないとは思うけど、今から実験と称した可哀想ないじめが始まることに、俺はほんのちょっとの申し訳なさを……。
そんなもん感じてはいないけど、断りだけはひとつ入れておいた。
……
何ていうか、初期武器って感じだよね。捻りがないというか……。
もっとこう……鉤爪みたいな、いかにも危なそうな武器とかあっても良くない?
そんなぼくの下らない理想は置いておくとして、フィールドでモンスターを狩りながら、それぞれの武器を
結果から言うと、
あ、ことリザードサイスみたいなボスモンスターと戦うことを想定したら、だけどね。
剣系武器や
それぞれの武器に長短あるのは当然の事だし、それを差し引いてもどれもいい武器であることには違いない。
それでも
自分の身体であるにも関わらず、自分の身体ではないと感じる程、稼働速度や反応速度の良さといった、身体面の仮想現実でのハンディレスさが、
ほんの僅かな攻撃チャンスさえをも逃したくはない。
そういった刹那的な瞬間を
「ん? なんだあれ?」
昨日リザードサイスと戦った場所の近くまで辿り着いたは良いものの、そこにリザードサイスの姿は無かった。
変わりにその付近の道端に、少しばかり目立つように生えた腰くらいまでの高さまで伸びた草。
その草の周りを、きらきらと黄色く光る何かが飛び回っている。
近付いてみると、[取る]というアイコンが出たのでタップしてみた。
『使用者の攻撃力を活性化させるエキスを体内に持った虫。強い毒性を持つ』
アイテムパックに取得し、仕舞われたそれの説明欄にはそんなことが書いてあった。
「バフ毒虫って、ひでぇ名前だな……。でもこれ使えそうだ」
そっと、バフ毒虫をショートカットに登録しておく。虫のアイコンが左手首の棚に映し出された。
さて、困ったことにリザードサイスを探し出さなきゃいけなくなった。
ミニマップがあるとは言えど、この
疲れを感じないとは言え、探すのは自分の足頼みになる訳だしな。
メニューからミニマップを開きながら、俺はまだ行ったことのない箇所を埋めるついでにリザードサイスを探す旅にふらふらと出ることにした。
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