初めてのレアドロップを装備出来ない奴おる?―2
「初戦闘だ。行くぞオオカミ」
チュートリアルリッパーを鞘から引き抜き、三匹居る内の一番手前の狼に向けて刃先を向けた。
んー? なんだかイマイチしっくりこない。柄を返して逆手に持って構えてみる。
……うん、こっちの方がいいかな。
そのまま狼の元へと駆け寄っていく。身体能力だったり、スタミナに左右されずに全力疾走出来るのは大きいね。全く疲れない。
俺の接近に気付いた狼三匹はそれぞれ違う動きを見せた。
奥の二匹は遠目に体を引き、まるで俺と手前の狼の戦闘を窺っているような様子。
一対一。だけど相手の強さはわからない。もしもHPが0になって死んだらこれどうなるんだろうな?
「おっらぁぁあっ!!」
なーんて考えながら、駆け近付いてきた狼の頭に向けて勢いをつけて右足を伸ばす。
叫んだのはあれだよ、気合い。
顔面を思い切り蹴られた狼は怯む。
何も手にした武器だけが戦う手段じゃない。大人は常に姑息で汚いものだ。
「汚い大人は見せたその隙なんて逃さないからね?」
そう吐き捨てては、切って突いては殴って蹴る。戦い方なんてのは在って無いようなもの。
瞬く間に狼のHPを0に出来たのか、無抵抗のまま一匹目の狼は紫色の煙を立て放ちながら消えた。
ゴールドやドロップアイテムなんかが落ちた気配はない。生え渡る草で見えてないだけかもしれないが、何も落とさなかったとしたら本当に残念。
仲間の狼が無惨に倒されるのをただただ見ていた残りの二匹の狼の方に目を見やれば、二匹ともこっちに駆け出して来ていた。
右側を走って来ている狼の方がこっちまで辿り着くのが早い。
(こりゃ被弾は免れないな……いや待てよ……?)
俺は今さっき一匹目を倒した時のことを思い出し、ちょっとした閃きを試してみることとした。
一匹目と同じように、右側の狼の頭へと思いっ切り蹴りを入れる。
「あぁ、なるほど、やっぱそうか」
先程の一匹目の狼の頭へと蹴りを入れてから倒すまでの数秒の間、妙に狼が無防備だったように感じたのだ。
一瞬の
汚い大人が賢くなると、とても厄介になる。
怯んでいる右側の狼を放っておいて、正面から迫ってくる三匹目の狼へと蹴りでお迎えしてあげた。もちろん頭だよ?
「ハロー。お目覚かい? おやすみなさい」
右側で
正面に居た狼? そんなもんとっくに倒してるよ。
こうして三匹目の狼も難なく撃破し、チュートリアルリッパーを鞘に納めた。
その瞬間、白いウィンドウが目の前に現れた。
「あぁ、なるほど。鞘を納めればリザルトに飛ぶのね」
そこに書いてあったのは獲得したものと、獲得した経験値。経験値って一応溜まるんだな、レベル上がんないクセに。
ゴールドもドロップアイテムも自動取得みたい、幾つかドロップ品がウィンドウの中に表示される中、目を引く一つの緑色に光るテキスト。
「ブルーウルフサーベル……固有ドロップくさいぞ! レア武器じゃないか!?」
このゲームについての情報がまだ何もない以上、ぬか喜びとなってしまいそうだが、なんだかレアそうな色つきのテキストに少し興奮しながら、メニュー画面を開く。
「とりあえず、装備だろ装備!」
装備画面へと進み、武器一覧を呼び出す。
そこにあったのは、灰色の文字で見にくくなった文字の″ブルーウルフサーベル″。
『青白く、凛とした輝きを放つ刀身を持った剣。優しき心を持ったブルーウルフの魂を具現化した剣だとも言われている。』
だそうだ。
……装備できませんでした!!
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