特別編 来たぞ! 我らのタイタノア 前編
――宇宙怪獣ゼキスシア。
地球から遥か何万光年と離れた、この大宇宙の果てに現れた彼の者は。その本能に刻まれた闘争心に命じられるまま、強者との戦いを渇望し続けていた。
彼の者が振るう牙と業火によって、滅びた星や文明は数知れない。全宇宙の守護を担う銀河憲兵隊の力を以てしても、数百年もの間――その者を完全に滅することは叶わなかった。
今から約5年前――銀河憲兵隊の精鋭・ルヴォリュードと、太陽系第3惑星「地球」に住まう人類の光によって、辛くも彼の者を撃破することに成功したが。その体細胞は虚空を漂い、ロガ星に出現したメカ・ゼキスシアの誕生へと繋がってしまった。
彼の鋼獣も最後には、ロガ星の人型兵器――ノヴァルダーAによって倒されたが、それで全てが終わったわけではない。
――かつて約30年間に渡り、地球を苦しめてきた怪獣軍団。その首魁である「大怪獣」は、全ての災厄を運ぶ元凶であった。
それと同じように――ゼキスシアという「種」にも、また。
その頂点に立つ、「首魁」が存在するのだ。
『――奴が、動き出しておる』
そして。
『行かねばならぬようだな。余の愛する、娘のために』
全てを穿つ災厄の襲来を、誰よりも早く予感していたのは。
地球人でも、銀河憲兵隊でもなく。
『そうであろう? ――ヒュウガ・タケルよ』
とある惑星の守護神として君臨する、赤き機械巨人であった。
『さて。……チキュウとやらは、どっちだ?』
◇
「ねー……あれ、あの制服。もしかして『
「うっわマジだ……パトロールにかこつけたお散歩しかしてねぇんだろうな、あの税金泥棒団」
東京の往来を歩む、防衛軍の兵士達。赤と黄を基調とする戦闘服に袖を通した彼らを、道行く人々は訝しむように見つめていた。
30年に渡って続いた怪獣軍団との戦いから8年。ロガ星人との戦争が終結して5年。怨厄魔獣の全滅から4年。幾度となく地球の平和を脅かしてきた厄災は、世界防衛軍の尽力によって切り払われてきた。
そんな彼らが、市井から疎むような視線を浴びることなど、滅多にない。彼らが、「税金泥棒団」と揶揄されている特殊防衛チームの隊員でさえなければ。
――怪獣攻撃隊「
5年前に東京ドームを襲った宇宙怪獣の事件を受けて、世界防衛軍が新たに編成した特殊部隊である。
人型ロボットを戦力の中心としていた当時の防衛軍には、その武力を要する程ではない脅威への即応性に欠けていた。当時の事件に出動した戦闘機や戦車では、件の宇宙怪獣には太刀打ち出来ず、結局は人型ロボットが現場に到着するよりも先に……戦場に現れた謎の巨人によって、倒されてしまったのである。
人型ロボットは多方面に配備されるようになったとはいえ、その高コスト故に出撃許可が降りるまでのタイムラグが課題となり続けていた。そこで防衛軍は、人型ロボットのようなコストが高い兵器に頼らずとも、こうした事態に即応するための特殊部隊を編成したのである。
ロガ戦争の終結後に得た、地球外のテクノロジーをふんだんに利用した、最新兵器の数々。それらを取り入れて創設されたのが、このBATなのだ。
そして高い戦闘力と引き換えに運用コストがネックとなる、人型ロボットを使わず即応性に重点を置くBATは、人類の新たな守り手として活躍する――はずであった。
しかし5年前のロガ戦争以降、BATが地球の防衛に貢献する機会は、与えられなかったのである。
4年前に人類の脅威として現れた怨厄魔獣。彼の者達にBATの最新兵器は全く通用せず、感情式特殊人型兵器第1号「ツナイダーロボ」、及び第2号「アイゼンファイヤー」の登場まで、「即応性に特化した新部隊」は手も足も出なかったのだ。
結局、彼らの活躍によって怨厄魔獣は全滅し、BATは「足手まとい」のまま平和な時代を迎えることとなった。それでも未だに解体されていないのは、BATに代わる組織を配備できるだけの予算がないことにある。
度重なる戦いや、それに備えるための軍事費や復興費の増大に伴い、人型ロボットの需要が高まる一方で、そのための予算が追いつかなくなりつつあるのだ。
――つまるところ、基本役立たずではあるがいないよりはマシ、という扱いなのである。
「駆動戦隊スティールフォース」も「ヒュウガ駆動小隊」も、世界各地に散らばっている今――日本及び東京の防衛に専念できるのは、BATを置いて他にないのだから。
「……
「ああ。……志波司令の呼び出しもある。一度基地に戻ろうか、朱鳥隊員」
そして市井に名付けられた渾名が、「税金泥棒団」。その誹りを受け続ける朱鳥流星隊員は、
亜麻色の長髪と赤い瞳を持つ、どこか浮世離れした佇まいの青年は――逞しく成長した部下に、穏やかな眼差しを向ける。そんな彼に促され、流星は今日も「役立たず」の1人として、人々の前から立ち去っていくのだった。
彼らを乗せた調査任務用乗用車――ホンダS660をベースとする「BATチェイス」が、エンジンを噴かし街道を駆け抜けていく。そのボンネットには、星型の中心にBATの字を描くシンボルマークが刻まれていた。
(……なんと言われようと構わないさ。彼のような良き地球人を、守るために戦えるのなら)
3年前にBATに入隊した彼は、謂れのない罵倒を浴びせられながら、それでも挫けることなく人々のために働き続けている。
そんな朱鳥流星という男を、新兵時代から見守り続けてきた烈騎は――他の惑星から流れてきた「異星人」として。勇敢で優しい地球人のために戦う、という己の決意を、人知れず新たにしていた。
(……きっと、それでいいんだろう? なぁ、ヘラクロア)
かつて遠い宇宙で、怪獣軍団と戦っていた頃。自身の相棒として、死の一瞬まで戦い続けていた「機械巨人族」の戦友を想い――果てしない空を仰ぎながら。
◇
かつては機械兵士の侵略により、荒廃していた地方の町。その地は今や、過去の災厄を感じさせないほどの活気に溢れている。
それほどの復興を遂げた立役者の1人は、今も故郷のために働き続けているのだ。そんな彼女が作るパンを求めて、今日も町の外から訪れた客が長蛇の列を作っている。
「いらっしゃいま……あら、杏奈さんじゃないですか」
「こんにちは、悠依さん。いつもの二つ、お願いしますね」
「ふふ、かしこまりました。あ、今朝のニュース見ました? あのクレア・デリンジャー大尉が、ロンドンで挙式されたんですって! しかもお相手は、元防衛軍パイロットの日本人!」
「見ました見ました! お相手の人もスッゴいイケメンでしたし、デリンジャー大尉もスッゴく綺麗で……って、あれっ? 猇さん、今日もデリバリーですか? 大変ですね」
「えぇ。全く、身重の妻を置いてあっちこちフラフラと……困った旦那様ですよ」
「……その割には、嬉しそうですけど?」
「……バイクに乗ってる彼が、カッコ良すぎるせいで……ね」
かつてULT78のセンターとして絶大な人気を集めた、元トップアイドル――天城杏奈も、その1人。常連客として顔馴染みになった彼女を、美人パン屋と評判の「立役者」こと
艶やかな黒髪を靡かせる彼女の陰から、2人の子供達が飛び出してきたのは、その直後だった。
「杏奈ねーちゃんだー!」
「こんにちはー!」
「あっ、もうダメよ2人とも! ママ仕事中なんだから、あっちに行ってなさい!」
「ふふっ……
「きいてるー!」
「きいてるよー!」
「今聞いてないでしょ、もうっ!」
杏奈によく懐いている、双子の姉弟。彼らに手を焼いている悠依の腹は、大きく膨らんでいた。子供達の相手をしながら、杏奈は彼女に宿る3人目の命に微笑を送っている。
「……来年には、もっと賑やかになりますね」
「こんな平和が続いてくれるなら、ですけどね。ちなみに、もう名前も決まってるんですよ。男の子でも女の子でも、『
「わぁ……! 素敵なお名前ですね! いいなぁ……」
無邪気に駆け回る子供達。母の中で誕生の日を待つ、新しい未来。そんな光景に「将来」を思い浮かべ、杏奈は羨望の眼差しで悠依を見遣る。
そんな彼女の視線に気づいた悠依は、にんまりと含みを持たせた笑みを見せていた。
「……杏奈さんも、来年は大学卒業ですよね。いい機会、だと思いますよ?」
「……えぇ、まぁ」
そんな彼女に対し――杏奈は、歯切れの悪い返事で茶を濁していた。
5年前にアイドルを引退し、当時の稼ぎを基に大学に進学した彼女も、22歳の大学4年生。「適齢期」としてはやや早いが、不自然な時期ではない。
――だが。彼女の恋路はまだ、円満なゴールインには届いていないのだ。
高校3年生の時に想いを告げ、交際を始めてから4年になるが――まだ、朱鳥流星との正式な婚約には至っていない。それは高校卒業後、自立のために防衛軍に入隊し、BATに配属された彼の難しい立場に由来していた。
役立たず。税金泥棒団。そんな心無い言葉で揶揄されている組織に属している流星は、元トップアイドルである杏奈の相手としては相応しくない――というのが周囲の見解なのだ。
無論、そんな言い掛かりを真に受ける必要はないだろう。彼女の親代わりを務めてきた祖父母も、流星との結婚には賛成している。
だが、周囲に理解されないまま無理に一緒になれば、余計に流星への風当たりが強くなってしまう。そこへ付け入るかのように、最近は大学の男子達だけでなく、芸能関係の有力者達までもが声を掛けるようになってきた。
流星以外の相手など、万に一つもありえない。だが今のままでは、彼にさらなる負担を強いることにもなりかねない。
この状況を打開しうる展開となると、何か大きな事件をBATが解決する――等が挙げられるが、そんな事態が起きることを期待するなど、言語道断。
(……流星君、私……)
二進も三進も行かないジレンマを抱える彼女は、微かな憂いを帯びた笑みを浮かべながら、平和な時代を生きる子供達と戯れる。
「……」
そして、その横顔を神妙に見遣る悠依は――「特製」のパンを、彼女の前に差し出した。
「えっ……悠依さん、これ」
「いつもありがとうっていう、常連さん限定のサービスです。……大丈夫ですよ、杏奈さん。誰だって誰かにとっては悪役ですけど、分かってくれる誰かがいれば、それだけで十分なんですから」
「……ありがとう、ございます」
BATの制式戦闘機を模して焼き上げられた、特別な一品。それを受け取った杏奈は、くしゃっとした笑みを浮かべている。
そんな彼女に、優しげな笑顔を向ける悠依は――愛する子供達を抱き寄せながら、遠出している夫への想いを馳せていた。
――悪鬼に居場所も顔も奪われ、同じ身の上の同胞達からは「裏切り者」と糾弾され、孤独に苛まれながらも。決して屈することなく、戦い続けてきた「彼」への。
◇
かつてノヴァルダーAを収容していた、東京都内の秋葉原基地は現在――BATの拠点として利用されている。そこに集う防人達は、ブリーフィングルームで顔を合わせていた。
「どうしましたか、司令」
「……集まったわね、みんな。パトロール中に悪いけど……説明の前に、まずはこれを見て頂戴」
彼らを纏め上げる女傑――BATの司令官にして、かつて怪獣軍団から地球を救った英雄の1人でもある、志波円華は。長い軍隊生活で培われた鋭い眼差しで、部下達を見渡している。
艶やかな黒髪と小麦色の肌を併せ持つ、歴戦の戦乙女。彼女はブリーフィングルームの中央に出現したホログラムに、険しい視線を向けていた。
「これは……」
「……先程、防衛軍管轄下の宇宙ステーションから観測された熱源反応よ。この動き……意思のない存在、ではないわね」
地球を中心とした、世界防衛軍の勢力圏内に当たる宙域。その全範囲を網羅したホログラムの中で――赤い光点が、不規則に飛び回っている。
立体映像の海原を、水を得た魚の如く自由に漂うその様は、彼女が言う通り。件の熱源に「意思」があるという仮説に繋がっていた。
宇宙を漂う、正体不明の熱源。
星の大海から訪れた「来訪者達」との戦いを、絶えず重ねてきた地球人にとって――その実態はもはや、自明の理であった。
「……怪獣、ですか」
「それも過去のデータと一致しない『新種』の、ね。……すでに獅乃咲中将からは、威力偵察の指令が来てるわ」
「でも、怪獣軍団なら8年前に隊長達が……!」
「5年前に東京ドームを襲った、『別種』のケースもある。私達が把握している範囲だけが、この宇宙の全てじゃないわ」
「そ、そりゃあそうですけど……!」
烈騎の隣で声を上げる、茶髪の若者。元レーサーの24歳――
「……」
「朱鳥隊員、どうかした?」
「い、いえ……別に」
一方。好孝のバディであり、冷静沈着な佇まいを崩さない23歳のクールビューティ――
彼女の切れ目に射抜かれ、流星はたじろぎながらも顔を背けてしまう。――光の巨人として、「
「なんにせよ、まずはこの熱源の正体を探る必要があるわ。状況次第では、スティールフォースやヒュウガ駆動小隊に、作戦への参加を要請しなくてはならないわね」
「そうなりゃ結局、俺達は脇役ですか……」
「戦闘力だけが、防衛軍の華ってわけじゃないのよ。BATの手に余る事態であると判断された場合、私達は他の部隊にはない機動力を活かして、民間人の避難を救けることになる」
「他方の部隊は、すでにこの件を?」
「ガリアード大佐も蒲生中佐も、この件については把握しているわ。ただ、世界各地の防衛任務を解いてまで、
過去に地球人類の脅威となった、グロスロウ帝国やロガ星軍。彼らを撃退した両部隊の雷名は全世界に轟いており、軍に関わる者にその名を知らぬ者はいないと言われている。
それほどの大戦力が日本に集中していては、世界各国のパワーバランスにも影響を及ぼしかねない。スティールフォースもヒュウガ駆動小隊も、今は世界各地に散り散りになってしまい、おいそれと集まることは出来ない状況なのだ。ノヴァルダーAと明星戟も、今はロガ星の守りに就いている。
故に日本の守りは今、BATに託されているのである。例え、税金泥棒団などと謗られようとも。
――その責任の重さを口にする円華は、ブリーフィングルームの端に備わっている「赤いスイッチ」を一瞥していた。
「前座扱いは御免被りたいですね。怪獣と戦うからには、俺は『真打ち』をやるつもりですよ!」
「それはいいけど、熱くなりすぎないでよね」
「分かってるさ! なぁ、流星!」
「は、はぁ……そうですね」
「……」
そしてこの中に、市民の言葉に消沈し卑屈になっている者など1人もいない。熱くなる好孝や、彼を宥める美代子を一瞥する烈騎は――物思いに耽る流星に寄り添い、その肩に手を置く。
「……大丈夫さ、流星。僕達はこういった事態のために、今まで訓練してきたんだ。これまで通りにやればいい」
「……はい」
その心遣いに微笑を浮かべ、深く頷きつつ。5年前を振り返り、あの日よりも強くなると誓った、かつてのヒーローは。
(……ルヴォリュード。今度こそ、オレ自身の力で守ってみせるよ。君が救った、この星を……)
「彼」が救った地球を守ると、決意を新たにするのだった。
◇
威力偵察の決行を明日に控えた流星は、一旦基地を離れ――目黒川に訪れていた。コンクリートジャングルの中で、穏やかなせせらぎを奏でるこの場所は、流星と杏奈の「定番デートスポット」なのである。
春先になればこの道は、満開に咲き誇る桜に彩られ、華やかな色を包まれる。アイドルを引退した彼女との交際が始まってから4年、会う度に2人は必ずここを通っていた。
(……杏奈)
その恋人は今、大学を離れ地方の町に帰省している。そこで療養している祖父母の面倒を見るために。
亡き両親に代わり杏奈を育てた祖父母は、流星との結婚には賛成しており、早くひ孫が見たいと笑っていた。だが、今のままでは周囲は自分と杏奈の仲を認めないだろう。
――それでも、自分を選んでくれた彼女のために。せめてBATの隊員として、恥じない働きをせねばならない。
「よっ!」
「……!?」
と、決意を固めている最中であった。全く気配がなかった……はずの間合いと位置から声を掛けられ、流星は心臓が飛び跳ねるような感覚に見舞われる。
咄嗟に振り返り、背後のベンチに腰掛けていた男と対面したのは、その直後だった。
(全く気配を感じなかった……! この人は一体……!?)
「ハッハハハ、なんだい面食らった顔しちゃって。……宇宙人が、そんなに珍しいかい?」
「……!」
いかに1番の新米といえど、侵略者達から人類を守るために創設された、BATの隊員だ。眼前に立つ男がただ者ではないことは、容易に看破できる。
しかし、「宇宙人」という言葉に身構える流星に対して――漆黒のトレンチコートを纏う長身の男は、あっけらかんとした様子で笑っていた。
「……なぁんてな、ジョーダンだよジョーダン。俺はアサマ・ダイってんだ。あんた、BATの隊員だろう? いつも大変だな、テレビでよく見てるぜ」
「……どうも」
「世間じゃあ税金泥棒団、なんて言われちゃあいるが……俺は、そうは思わねぇよ。どんなに清く生きたって、誰かにとっちゃ誰もが悪役だ。でも、そう思っちゃいない奴にとってのそいつは、間違いなくヒーローなんだよ」
「……」
ベンチから立ち上がった黒髪の男――アサマ・ダイは、白い歯を覗かせて流星の隣に立つ。
手すりにもたれかかる彼は、流星を通して――遠くにいる
「……ありがとうございます。ご期待に添えるよう、
「我々自身、ね。……けど、多分アイツは……自分の力だけで救ったつもりはねぇだろうよ」
「……? それは、どういう――」
自らを宇宙人と称し、何もかも見透かしたように語る謎の男。風来坊のような格好をした、得体の知れない彼に対して――流星が問い掛ける瞬間。
『朱鳥隊員、緊急事態だ! 至急、基地まで帰投してくれ!』
「……!? 隊長、何があったんですか!」
『例の熱源が地球に急接近している! このままでは約50分後には、奴が太平洋上に現れる……! 我々で至急、現場に向かわねばならん! 急ぐんだ!』
「……! 了解ッ!」
腕輪型の通信機から入った、
「すみません! ――俺、行きます!」
「おう、頑張ってきな。市民代表ってことで、応援してるぜ」
そんな彼の背に、ダイはひらひらと手を振り――青空を。その遥か彼方の、
「……バカ強いだけの駄メシア様じゃあ、
去りゆく流星の姿を一瞥した後、彼は指先を天に向け――眩い閃光を放った。その光は不規則な線を描き、やがて地球人には読めない「異星の文字」と成る。
「さて……俺も、お仕事始めっかな。BATの連中にばっかり、いい格好はさせねぇぜ? ――なぁ、ルヴォリュード」
空に顕現した文字を見上げるダイは、やがてこの場から立ち去って行く。だが、流星とは真逆の方向へと歩み出す彼は、逃げようとしているのではない。
――戦うのだ。ルヴォリュードの「後任」たる、銀河憲兵隊の戦士として。「友」に代わりこの地球を守る、新たなる光となって。
「アスミュウゥウゥッ――ジョンッ!」
そして彼は、光の巨人――「アースマウンテン」へと変身する。閃光に包まれ、天を衝く輝きとなった彼は。
「ジュワッ――アァアアッ!」
巨大な拳を大空に翳し、戦場となる太平洋を目指して――飛び立って行くのだった。
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