第十二話 彼女の名前は若菜香織
〇
天文同好会のアイドル。
それが若菜さんを思い出す時に一番しっくりくる言葉だった。
向かう所敵なし、と言った
気さくで、
まさに、天文同好会のアイドルである。
新入生
ご多分に
〇
「なんだ、秋月。さてはお前、
「いや、そんなつもりはないんだけど。結果的にはそうなるかも……」
「そうはさせん!」
高野はそう
「あっ! ちょっと待て!」と高野の背中を追いかけた。
「まさかお前も若菜
「ち、
むしろ、
「言い訳は止めろ、見苦しい。そういえば、前に会った時も変な反応していたよな? 今思えばあれは
確かに
「良いから止まれって!」
「聞く耳持たんな!」
さすがは運動部。
「ちくしょう、オカッパちゃんはカモフラージュだったわけだ。秋月、お前がそういう男だったとは思わなかったぜ!」
勝手に変な
だからあの
「だから、
若菜さんを
高野にはグングンと差を広げられているが、ここで
あの秘密がある限り、若菜さんに天文同好会の話をしてはいけない。そんなことしたら、せっかく忘れかけていた若菜さんが、
それだけは何としても
〇
食堂の前を通り過ぎ、教育
グラウンドの
「しつこい
さすがに
「そりゃ……、お前が……。
一方の
「しつこい男は
いい加減、若菜さんは
「これはもう、
高野は不気味なことを
〇
暗い。
「おい、ここに
反応はない。まるで
高野は
「あ、こら待て!」
「はい、残念でした!」
ガチャリ。とそう、何かが
「おい、今なにした?」
「はっはっは! カギ、閉めといたから」
なんてことをしてくれるんだ!
「お前が
「それは誤解だ。これには深い理由があるんだよ」
「理由?」
高野は少し聞く耳を持ってくれたらしい。
しかし、なんて説明する?
まさか、二年前に若菜さんにフラれているものだから、その話題を
「その、なんだ。それは今度話すとして……」
「全然、理由になってないぞ」
高野はそういうと、「じゃあな!」と去ろうとした。
「お、おい待て待て!
「そんなの、そこの部員が
「そんなのいつになるんだよ?」
「さあね。それが
そんな無責任な。
「ああ、そうだ。忘れてた」
高野はそういうと、まるで楽しむような口ぶりで、
「言っておくが、そこから早く
なっ!?
「おい、高野! ふざけるな、さっさとここから出せ!」
「ほんじゃあな。バイバイ、相棒」
何が相棒だ。
高野の遠ざかる足音を、
ここの部員が帰ってくる=死、ということを
これは、早く
しかし残念ながら、出られそうな所は見当たらなかった。
「あれ、電気がついてる? おかしいな」
そんな声と共に、ガチャリ、と
ガタリと、
「
〇
「あっ」
時が止まるような思いだった。
まさか、こんな最悪の
部室に入ってきたのはなんと若菜さんだった。
久しぶりにみた
白のテニスウェアに身を包み、右手にはラケット。
太ももまでしっかりと見えるそのウェアーに、
若菜さんは
「あなた、こんなところで何してるの!」
キッと
「ここが女子
久しぶりに
まあ、もう二年も会ってなかったわけだし、しょうがないことなのだろうけど……。
「何か言ったらどうなの?」
「その、
「
若菜さんの表情は
「それって――」
そこまで言いかけた時だった。若菜さんは口を閉ざすと、まじまじと
「秋月君?」とボソリ、
「あ、うん。秋月です」
このタイミングで、若菜さんは
「どどど、どうして秋月君がここに? え、あれ?」
若菜さんはとても
「話すと長いんだけど……」
「手短に!」
「
「なんでもっと先に言わないの!」
さっき言ったんだけど……。
「まずいわね」
それとほぼ同時だった。
キャハハハッ。
なんていう、
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