第13話 真白と可憐②
真白と可憐は、ショッピングモールで衣服類や日用品の買い物をした後に、近場
のカフェに足を運んでいた。
「それでね、それでね! 蓮くんがお弁当を忘れたから学園まで届けに行ったの! そ、そしたらね、蓮くんがね! わたしのことを『自慢の嫁さんだ』って言ってて!!」
「ちょっとちょっと、落ち着きなさいって。声が大きい」
「……はっ。ご、ごめんっ」
そこでは相変わらず、真白のノロケが炸裂している。
ただ、そうなるのも仕方がない、可憐が開幕にこう言ったのだ。『最近の調子はどう?』ーーと。
「落ち着いた?」
「うんっ! それでね、それでねっ!!」
「全然落ち着いてないじゃない! ……まぁ、蓮に言われて嬉しくないはずがない、か」
真白の気持ちをよくよく考えてみれば、可憐が同意するのは時間がかからないことであった。
「だって、よく言うでしょ……? 一緒に居れば居るだけ不満は溜まっていくって……。その中でそう言ってくれるのはやっぱり嬉しいから……」
「乙女な表情しやがって、こんやろー!」
「あはは……。もう、わたしは蓮くんに染められちゃってるのかな」
「何言ってんのよ。学生の頃からもう染められてましたー」
「そ、そうだね……っ!」
「そこで嬉しそうにしてるのがまた腹立つ……!」
右拳を作って『コツン』と真白の頭にぶつける可憐。そこにはちゃんとした加減が加えられている。
「そ、それなら可憐も彼氏さんを作ればいい! 今までにアプローチをかけられてないわけがないよね?」
「いろいろかけられたけど、全部切った」
「な、なんでっ!?」
実際に可憐は嘘をついたりはしていない。言葉通りに全てのアプローチを全部切っているのだ。
その理由はもちろん一つ。気になる男性がいなかったからである。そして、その本心を素直に答える可憐ではなかった。
「うちの彼氏はお仕事だから。男相手に浮気はしないの……どや?」
「カ、カッコいい……」
と、何故か輝かしい瞳で見つめてくる真白。正直この反応は予想外なものである。
「え、や……そこツッコミを入れるところなんだけど」
「ほんと凄いなぁ、可憐は。お仕事に誇りを持ってて、責任感があって……」
「そ、そんなこと言われると照れるなぁ……ははっ」
「それに比べてわたしは蓮くんを襲うだけしかしてない……」
「うん、それは直そうか」
どのくらいの頻度で蓮を襲っているか知りもしない可憐だが、今までの真白を知っているからこそ、必然的に『多い』ことは理解していた。
それだけでなく、襲う時間が長いことも……。
「な、直したいけど……直せないの」
「なんで? 我慢すれば良いだけじゃん。最悪、一人で済ませれば良いんだし」
「だ、だってわたしのすぐ近くには蓮くんが居るんだよ? シないと勿体ない……」
「なにその勿体ないって……」
「こ、これは例えだけど、道端に高価なショートケーキと、安価なショートケーキがあります。可憐ならどっちを取りますか!」
「それは当然高級なショートケーキでしょ」
「そう! それと一緒ですっ! 高価なショートケーキが蓮くん一緒にヤることで、
安価なショートケーキが一人でヤること……!」
上手く例えられた! と自分自身で思ったのか、『同意して……』というような期待の目を向けてくる。
「わ、分かるような分からないような……。って、ましろんの場合はいつでもヤれるんだから、1日ぐらい我慢出来るでしょ。それを続けていけば襲うクセは自然と収まってくるんじゃないの?」
「そ、そうしたら次の日はもっと激しくしちゃうから……。ほ、ほら、1日分が溜まってるわけでしょ……?」
「いや、そこでうちの同意を求められても困るんだけど……」
相変わらずの真白っぷりに、思わず頰を掻く可憐は保育士としてある注意を促す。
「分かってると思うけど、サキちゃんとサヤちゃんにはちゃんと性教育をするんだよ? その辺は親がしっかりしてあげないとなんだから」
「も、もちろんだよっ! 蓮くんを襲っていいのはわたしだけだもん!」
グッと前のめりになり……そして、ファイティングポーズをするように、顔元に両拳を近づける。それは必死さの全面的アピールだ。
「なんか目的が全然違うけどまぁ、ちゃんと教えてくれるなら問題ないや。……あの歳でオトナの行為を覚えてたらほんとヤバいし」
「ど、努力します……」
「あと、サキちゃんとサヤちゃんにあの行為を見られないこと。うちみたいな犠牲者をこれ以上増やさないように」
「分かりました……」
「それじゃ、うちはこの辺で失礼するとしようかねぇ。ましろんもそろそろサキちゃんとサヤちゃんを迎えにいかないとでしょ?」
「そうだね! 久しぶりに話せて楽しかったよ。もうこんな時間だもん」
「それはうちも」
カップに残る引き立てのコーヒーを飲み干した二人は、店員が取りやすいように机の端に寄せて席を立つ。
「……あ、明日は会えないから今のうちに言っとくね」
「ん?」
「明日の結婚記念日おめでとう」
「うんっ!」
「それじゃ、これはうちの奢りで」
伝票筒中から伝票をスッと取る可憐はそのままレジに向かって歩いていく。
「だ、大丈夫だって! 半分出すからっ!」
「いいから奢らせなさい」
「やだ」
「残念、もう遅いだなぁ」
「あぁ……!」
既にお会計の準備をしていた可憐は、真白が財布を出す前に二人分の代金を支払い、その代金はレジに吸い込まれていく。
もうこれで真白が代金を払う術はないのだ。
「ご……ご馳走さまでした」
「どういたしまして」
カフェを出た二人は、途中まで一緒に歩いた後に別れた。
そうして……1日が過ぎ、明日を迎える。その日は一年に一度しかない結婚記念日であった。
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後書き失礼します!
これはアンケートのようなものになります(><)
ようやく、旧作の全話修正が終わり、新作も最終話を書き終えた関係で新たな新作を書こうと考えてます!
それで、二つの物語を考えているのですが、どちらを書こうか作者の私、決められない状況のため、読者様方に決めて頂こうという算段であります。
考えている話になるのですが、一つ。
『誰に対してもクールを貫く美人な彼女ですが、ある人(彼氏)の前では、デレデレの甘えん坊になります』(仮題名)
二つ。
『俺がお花屋さんで働いている時、可愛い小さな女の子と別れ際に付き合う約束をしました〜冗談だと思ってましたが、その可愛い女の子があの約束を叶えるために戻ってきた!?〜』(仮題名)
です!
気になるのがないかもですが、気軽にアンケートに参加して頂ければと思います! ……して頂ければ助かります!
書く場所は応援コメントにでも……> <
それでは後書き失礼しました!
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