第14話 結婚記念日①

「れ、蓮くん……。今日は何の日か分かりますか……?」

 早朝、真白は蓮に向かって小声で話しかける。その声はこもっていた、、、、、、


「…………なぁ、真白。それより説明することがあるんじゃないか?」

「なんですか?」

「なんで俺のベッドの中にいるのか説明してくれ」


 蓮が目を開ければ、そこには真白の端正な顔が数十センチ先にあった。しかし、こんなことがあっても驚くことはしない。

 何故なら……蓮はこんな体験を、今までに何度もしているのだから。


「蓮くんのベッドに入ってた理由は、朝ご飯を作り終えたからです……」

「理由になってない」

「朝ご飯を作り終えて、暇になったからです……」


 布団の中でもぞもぞもと動く真白は、脚を絡めてくる。


「あのな、そんなことしてると俺に何をされるか分からんぞ? 寝起きで思考も鈍ってるんだし」

「ナニかしてくれるんですかっ!?」

「……はぁ」


 真白の厄介なところの一つ。それは、このような諭しが全く効かないことである。

 むしろ、何かを期待するようにキラキラとした視線を向けてくるだけ。

 こうなった真白は、諭すことの出来ない最強の存在と言っても過言ではないだろう。


「……とりあえず、おはよう真白」

 だからこそ、蓮はパッと上半身を起こし、早めに逃げの一手を打つ。

「うんっ! それじゃあ、おはようのハグ……しよ?」

 だが、逃げの一手の前に立ちはだかる真白の発言。……流石である。


「言葉だけで十分」

「えへへ、本当はしたいんでしょー?」

「なんかテンション高いな、今日」


 真白がこんなにもテンションが上がっている理由……。それを蓮は密かに理解していた。


「だって今日は結婚記念日、、、、、なんだよっ! 結婚記念日だよっ!」

「『何の日か分かりますか』とか言ってたのに、結局は自分で言うんだな……。まぁ覚えてたよ、ちゃんと」

「蓮くんも覚えてくれてるって思ってたから! これは絶対忘れてはいけないことです……!」

「分かってるよ」


 結婚記念日があるたびにこんなにはしゃぐ真白。そんな真白を見て、蓮は小さな微笑みを浮かべていた。


「じゃあ、ハグの代わりに頭を撫でてください……っ」

「それぐらいならな」

「うん……っ」


 蓮に頭を撫でられる真白は未だ蓮に足を絡めた状態で、えへへと満足げな表情をしている。

 そうして、頭を撫でる手を止めた蓮は身体を動かす素振りを見せる。


「それじゃあ、朝ごはんも出来てることだし、俺はサキとサヤを起こしてくるから」

「あ、あの二人を起こすのはもう少し待ってください……」


 布団の中から蓮の手を掴み、引き止める真白。

 その瞳の中には『ずっと言おうと思っていた』そんな気持ちが宿っていた。


「あの二人を起こす前に、蓮くんにどうしても話しておかないといけないことがあるの……」

「ん?」

「昨日、可憐とお買い物してた時に言われて……。サキとサヤにちゃんと性教育をすること! ……って」

「なるほどな……。あの行為を見られて、あの二人も『やりたい』って言ってるわけで、誰かに代用を頼む可能性も捨てきれないしな……」


 可憐の言葉は、保育士さんが言ってる言葉。子どもを見る目が誰よりもある可憐がそう促しているのだから、間違いはない。

 それに、可憐は体験しているからこそ言えるのだろう。あの『お祭り』での件を。


「だ、だから早いうちに覚えておかせてても良いんじゃないかって……」

「流石にあの年で教えるのは……アレじゃないか?」


 サキとサヤはまだ幼い。性の教育をする年齢じゃないのは誰だって承知していることである。


「じゃあ、なにか方法はあるんですか……?」

「ある。真白が俺を襲わないこと」

「……え」

 何の前触れもなく、真白に伝える蓮。


「第一、真白が俺を襲ったところ見られていたことが原因だろ?」

「そ、それはそうだけど……」

「だから襲うことをやめればいい。見られることがなければ、自然と収まっていくだろ」

「……やだ」

「は?」

「それはやだ!」


 事実を突き付けたと同時に、真白は否定の声を上げて起き上がった。……そう、真白にとって、襲うということは日常化していたこと。それを辞めなければいけないというのは、どうしても避けたいことだった。


「やだってなんだよ、やだって。子どもじゃないんだから……」

「蓮くんを襲えないんじゃ、わたし……爆発するもん……!」

「おいおい。襲うことを我慢するだけだろ?」

「じゃあ、蓮くんがわたしを襲ってくれますか……!?」

「それだったら現状はなにも変わらんだろ……」


 襲う側が襲われる。襲われる側が襲う。立場が逆転したとしても、サキとサヤ見られては意味がない。


「も、もし……襲うことを無くしたら、蓮くんはわたしと一週間に何回シてくれるんですか?」

「一ヶ月に二回くらいじゃないか?」

「一ヶ月に二回!?」

「なに驚いてんだよ……。真白のことを考えて一回増やしたんだぞ?」


「一週間に4回でいいじゃないですかっ! 2回も減らしてるんですよ!」

「お、おい……。それって今までに週6でしてたってことなのか……?」


 真白はいつも計画的で、深い眠りに入っている蓮を襲ってくる。結果、何回襲ってきているのかをを測れるはずもなかった。

 ただ……今ここにきてようやくヒントが得られたのである。


「た、たまに週7です……」

「毎日じゃねえか!」


 そうして、真白が一週間に襲う回数を知れた結婚記念日の朝は、騒々しいものになったのである……。



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 投稿遅れましてすみません!


 そして、アンケートのご参加ありがとうございました!

新作の件ですが、投票の多かった①番を。『クールを貫く美人な生徒会長が、彼のまでは〜』の方です!


 既に三話投稿してありますので、気になった方は是非に……(><)

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