第2話 番外②
「げっ!? ピ、ピーマンが入ってるー!?」
「な、なんでぇー!?」
ピーマンから完全に逃れられた。なんて思っていたのだろう、サキとサヤは目を丸くしながらあんぐりと口を開けている。
当然、あれから料理したのは蓮であるのだからこの二人の思い通りに行くはずもない。
「サキ、サヤ。ピーマンはな、食べて欲しい人のお皿に向かうんだ」
作戦が上手くいった蓮は、抑えきれない笑みを浮かべながらピーマンを食べてくれるための嘘を付く。
「えぇっ!? じゃあ、この5つのピーマンはサキに食べてほしーの?」
「サヤのお皿に入ってる5つのピーマンもー?」
「ああ、そう言うことだ。だから、ちゃんと食べてあげないとダメだぞ?」
テーブルに置かれた料理は、甘酢あん掛けの野菜炒めに、骨を取った
「じゃあ、こげピーマンは全部パパに食べてほしいんだね!」
「ぱぱ、こげピーマンにすきすきされてるね!」
「れ、蓮くん……!?」
サキとサヤのその発言で、焦げの入った野菜が全て蓮の皿に入れられていること気付く真白。
「ああ。だからちゃんと美味しく食べないとダメなんだぞ? 分かったら返事ー」
「サキ、頑張る!」
「サヤもー!」
元気に返事をするサキとサヤは一緒のタイミングでお味噌汁を啜った。あくまでピーマンは最後に食べる算段らしい。
「ご、ごめんなさい蓮くん……。わたしが焦げを作ったばっかりに……」
「ああ、それは気にしなくていいぞ。後で責任取ってもらうから」
「せ、責任……っ!?」
何故かそこで瞳を輝かせる真白。
「……一つだけ言っとくが、ヤるわけじゃないからな。って、食事中にこんなこと言わせるなよ」
「そ、そそそそんなこと考えてないもんっ!」
「絶対考えてたよな、おい」
「あ、あの! も、もしですよ! そ、そのことを考えてたら……なにか良いこととかありますか?」
「あるわけないだろ」
真白の性欲が強いのはどうしようもないことで……それを今更責める気もない。ただ、目の前に我が子がいる状態でこのような発言をしてしまうとーー
「お! ママは今日お馬さんごっこしないのー? じゃあ、サキがするー!」
「お姉ちゃんだけずるいー! サヤもしたいー!」
当然、こうなってしまうのだ。
しかも、根本的なものが分かっていないのにも関わらず、『ヤる』と言うことが、『お馬さんごっこ』だと察せていることに驚きである。
……これが真白の血を引き継いでいるからなのか……いや、恐らくそうなのであろう。
「……お、おいおい。よ、よく聞いてくれ……サキ、サヤ。こ、このお馬さんごっこはな、まだ早い……。あと、15年くらいは早い……」
「そんなことないもーん! すっぽんぽんになって、ぽんぽーんってパパの上で動けばいいだけだもーん!」
「うんー! 動くだけー!」
「……は、はわっ、はわわわわ……」
「え、えっと、な、なんて言うか……その……、あれはな、そんな簡単なもんじゃないんだ」
この話題で真白は頼りになることはない。頰を染めてもじもじとさせるだけなのだ。
だからこそ、蓮はここで頼り甲斐のある父親を見せなければならなかった。
「サキ知ってるもーん!」
「サヤもー!」
「へ!?」
ここで飛び出すサキとサヤの予想外の発言。
「はぁーはぁーとか、パパの名前をとろーんって声で言って、どんどん早く動いていけばいいんだよねー!」
「それでね、それでね、ぱぱはあんまり動かないようにするのー! おうまさんだけが動くようにするのー!」
「おい……。流石にこれはバレすぎだろ! どうすんだよ……」
「サキ、サヤ、もうこの話は終わろっか! お料理食べよ! ねっ!?」
この二人の発言からするに、サキとサヤは大人の行為をチラッと見たわけわけではなく……ガン見と呼べるほどに見ていたのかもしれない。
それをどこかで理解する真白は、早めに話題を逸らそうとする。
「えー、ママは毎日してるのにずるいー!」
「うー、ずるいー!」
「ま、毎日ッ!? どう言うことだそれ!?」
蓮は『毎日』とのワードを聞き、ハッと真白に視線を向ける。
「ま、毎日じゃないもん……。たまにしない日もあるもん……」
「いい加減にしてくれ……」
「でもー、ママはパパにちゅーしてるほうが多いかもー!」
「ちゅーの時、へんな音が聞こえるもんねー! ぺちょーみたいな!」
「おい真白。……次襲って来た時は覚悟しとけよ」
これ以上、サヤとサキの記憶に残させるわけにはいかない。
『次襲ってきたら、もう一緒に寝ないからな』という意味を込めた発言だったが、真白はやはり一歩上を行っていた。
「か、覚悟って……。れ、蓮くんのなら……い、いつでも覚悟出来てるから……〜〜っっ!」
「そうじゃない!」
(ったく……どうすれば理解してくれるんだよ……)
ここで真白にどうのこうの言えば、サキとサヤが再びツッコミを入れてくることは分かっている。……そんなことで頭を悩ます蓮を他所に、我が子から先手と呼べる鋭い質問が入った。
「ママ! ママはお馬さんを1人でしてるけど、2人でも出来るのー?」
「3人はー?」
「え、えっと……。そ、その……4人から5人くらいは出来るんじゃないかな……?」
「あ゛!?」
と、嘘を交えることもなく自分の基準で本気の回答をする真白。もし、ここで『1人しか出来ない』と答えていたら、話は終息に向かっていったであろう。
「じゃあ、今度はママとサキとサヤの3人でしよー!」
「わーい! みんなでおうまさんごっこだー!!」
「おい真白……。なんでそれを正直に言うんだよ!」
「あっ、ぁぁぁああああ……! ごめんなさいっ!!」
ありえない失態に頭を抱える真白。その失態は自分の敷地で爆弾を爆発させるほどにデカかった。
「あー! 4人出来るなら、カレンお姉ちゃんも誘おー!」
「あはははー! いっぱいいっぱいだー! 楽しそーだ!」
真白の幼馴染である可憐は、サキとサヤの顔を見にこの家まで訪問することがある。そこから仲良くなったわけであるが……『子どもを作る行為』に可憐を混ぜようと、とんでもない提案をしてくる。
「もーいい。俺は知らない、知らないからな」
「れ、蓮くんっ! 現実逃避はやめてよーっ!」
父親としての頼り甲斐を見せようとした蓮だが、こうなってしまってはお手上げである。
「掃除とか洗濯は俺がしとくから、その間にサキとサヤにちゃんと説得してくれ。こればっかりは自業自得だろ」
「が、頑張るけど……難しいよ……っ」
そうして、真白の説得は二人を寝かしつけるまで続いたのである……。その後、訪れるのは……二人の時間。
『あとで時間をくれると嬉しい』と、蓮が言っていた時間でもあった。
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