【☆番外編☆】VRMMOで鈍感な主人公に恋するむっつりスケベな彼女は現役JKアイドルだった!?
夏乃実(旧)濃縮還元ぶどうちゃん
第1話 番外① 家族編 始
「パパ、パパっ、だっこしてー!」
「おいおい、これでもう12回目だぞー?」
「えへへへへ〜、次でじぅーさんだね!」
「あぁー、サヤばっかりずるいーっ!」
蓮に飛びかかっくる女の子、姉のサキと妹のサヤ。我が家には二人の子宝に恵まれた。その二人はすくすくと元気いっぱいに成長し、ここまで喋れるようになった。
「じぃー。……蓮くんは二人ばっかり構う……。蓮くんがわたしを差別する……」
そして、物陰に隠れて顔半分だけ出す嫁の真白は、飽きることもなく嫉妬の眼差しを蓮に向けている。
「こればっかりは仕方がないだろ? なぁ、サキ、サヤ?」
「うんっ! パパが正しい!」
「ぱぱは、ままよりもえらいー!」
「ううー! パパばっかり……ずるい! わたしにも構ってよ……!」
ピョンと全身を現す真白は、小走りで蓮のところに近付いてくる。その蓮の身体にはサヤとサキがぴったりとくっ付いている。それも、蓮の頭……てっぺんによじ登ろうと奮闘している。
「真白、『パパ』って呼び方が移ってるぞ」
「だ、だって、パパって言えば構ってくれそうだったんだもん……」
「そ、そんなわけないだろ……」
筋の通ってない言い分はなんとも真白らしいものである。だがしかし、呼び名を変えれば構ってくれるなんて思惑が通用するはずもない。
「あのねー! ママはね、暗いときにパパをこうげきしてるのー!」
「こ、この前はね! ぱぱの上に乗ってたのー!」
「え……?」
その時ーーサヤとサキが蓮の身体にしがみ付きながら、とんでもない言葉を発した。
「ママがすっぽんぽんで、お馬さんしてたー!」
「ままは、しらないところでぱぱをいじめてるのー!」
「真白……。これ、どう説明するんだよ」
「あ、あう……。み、見られてたなんて……うぅぅ……」
「うぅ……じゃないだろこれ」
サヤとサキの発言は、間違いなく子どもを作る行為のことで、幼いからこそまだその意味を理解していない。だからこそ助かったわけであるが、いつまでも記憶に残させては今後、いろいろな問題が出てきてしまう。
「でもねでもね、ママがパパをこうげきしてるのに、ママがやられてるの!」
「あー! んー! って、かわいい声で泣いてるの!」
「だからね、パパはこうげきしかえしてるの! とっても強いの!」
「ぱぱかっこいいー!」
そう言う二人は、蓮の身体をよじ登り肩付近にまで到着する。
「おー、おい。そんなところに登ったら危ないだろ!?」
「パパは助けてくれるもん!」
「だから、だいじょーぶ!」
「もぅいいっ! わ、わたしお料理作ってくる……! 蓮くんの嫌いなピーマンいっぱいお皿に注ぐもんね!」
「その八つ当たりは理不尽だろ……」
構ってくれる隙などないことを悟った真白は、料理を作ることに走った。構ってくれないのを理由に、ピーマンで復讐するために。その復讐はなんとも可愛いものである。
「えー、パパはピーマンきらいなのー? じゃあ、サキのピーマンもあげるね!」
「じゃあ、サヤのもあげるー!」
「こーら、自分達の嫌いな食べ物を俺に押し付けるんじゃない」
「ママー、今ね、パパがママのことキライだってー!」
「いまね、ぱぱがそういったの!」
キッチンにいるママこと真白に、この二人はとんでもないデマを流す。『嫌いな食べ物を押し付けるな』が、『真白のことを嫌い』との奇想天外な変換をして。
「むぅぅううう! みんなのピーマンを蓮くんのお皿にだけ集中させるんだから……っ!」
「おいおいおいおい、俺はそんなこと一言も言ってないんだが!?」
「やったぁ! サヤのお皿にピーマンこないー!」
「サキのお皿にもこないー! やったー!」
「お、お前らぁ……」
この歳にして、真白の思考回路を完全に把握してるサヤとサキ。末恐ろしいものを持ってる……と言う感情が湧くより先に、微粒子レベルの怒りが蓮に生まれる。
「や、やばいー! パパがオコったー!」
「こうげきされちゃうー! おうまさんにされちゃうー!」
あははは! と笑うサヤとサキは、ゆっくりと時間をかけて蓮の身体を降りた後に床を駆け巡って、蓮から逃げ回るようにリビングを抜けていった。
「え、蓮くん、今……サヤが『お馬さんにされちゃう』って……」
今の会話を聞いていた真白は、光のないダークな瞳を蓮に向ける。実の子どもを襲うような発言を聞いたのならそうなるのも無理はないだろう。
「バ、バカ! 子ども相手にそんなことするわけないだろ。真白じゃないんだし」
「わ、わたしだってそんなことしないもん!」
「俺にはするだろ」
「蓮くんは良いの! そ、それに……少し前は蓮くんから先にシてきたもん……」
「そ、それはそうだが……比率的に言えば0.5対9.5じゃないか。今も寝込みに襲ってくる癖は直ってなんだし、今は昔と違って隣にサキとサヤがいるんだぞ?」
「ば、ばれないようにって……その緊張がまたアレで……」
「とっくにバレてるからな! それに、その……言いにくいんだが、真白の声は大き
いんだから、も、もう少し抑えないと……」
「いっ、いきなりそんなこと言わないでよぉ………〜〜っっ!!」
『かぁぁぁぁ』と真っ赤になる真白は、キッチン下にしゃがみこんだ。
その数十秒後、焦げ臭い匂いが部屋中に漂ってくる。
「焦げ臭い……ってーーッ!」
その原因を瞬時に察した蓮は、急いでキッチンに向かい火元を消した。
「お、おい。なんで最大火力になってんだよ……。これじゃあ焦げるのは当たり前だろ……」
このキッチンの最大火力は極めて高く、炒めものをする時は炒める物を動かしながらでないとすぐに焦げてしまうのだ。
「だ、だって……早く作り終えて蓮くんに構って欲しかったから……!」
「料理をする時には火事にならないようにすることを第一に考えないとダメだろ」
「だ、だって……わたしと約束したのに、蓮くんが守ってくれないのが原因だもん……。わたしにも構ってくれるって言ったのに……」
「真白、それは本当に悪いと思ってる……。でもな、サキとサヤを優先する時間がないと可哀想だろ?」
涙を浮かべながらしゃがみ込む真白に、蓮は姿勢を低くしてそう語りかける。
「今はこれだけで許してくれ。真白のこともちゃんと考えてるんだから」
「……っ!?」
そのまま、蓮はゆっくりと真白を抱きしめる。
「真白、あとで時間をくれると嬉しい」
背中をトントンと優しく叩きながら、言いたいことを耳元で呟いた瞬間だった。
「ああー! ママずるいー!」
「ままずるいー!!」
蓮から逃げ回っていたサヤとサキがリビングに顔を出し、真白に非難の声を浴びせてくる。
「ははは、それじゃあ俺は料理作ってるから3人はテレビでも見ててくれ」
「じゃあ、ママに抱きつくー!」
「サヤもー!」
真白を抱きしめることをやめ、立ち上がった蓮は再び火元を付ける。
「えへへ、じゃあ一緒にテレビ見よっか」
真白の足にしがみ付くサヤとサキ。そんな光景に真白は大変ご機嫌そうにしている。そのご機嫌な理由は、蓮に『時間をくれ』と言われたことも関係していることだろう。
そんな真白は、二人を引き連れてテレビがある方に向かっていった。
(……さて、サヤとサキにはピーマンを入れなくちゃな……)
料理の権利……即ち、ピーマンの配分権を獲得した蓮は、サヤとサキにピーマンを少々、真白と自分自身にピーマンを半分分けることを決めた。
サヤとサキが真白の思考回路を全て読んだとしても、料理が作れるのは一人だけじゃないのだ。
『ピーマンが入ってるー!?』なんてサヤとサキの驚きの声を上げることを想像する蓮は、楽しげな笑みを浮かべながら焦げが酷い野菜を自分の皿に入れるのであった。
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