第11話 学園編④自宅で
「蓮くんお帰りなさい。そしてごめんなさい……。あの時は調子に乗ってしまいました……」
「お、おいおい……どうしたんだよ」
蓮が玄関扉を開けて、家に帰宅した矢先だった。
そこには、真白が床に正座して蓮に向かって頭を下げてる姿が映った……。
「お弁当を渡しに言った時とか、生徒さん達にいろいろ言っちゃって……ごめんなさい!」
「あぁ、あの時か……」
「あ、あのね……。わ、わたし、蓮くんに褒められて嬉しかったの……。だ、だからあんなに舞い上がって……。蓮くんが嫌なことはしないって決めてたのに……ほ、本当にごめんなさいっ!」
真白は額を床につけそうな勢いで、再び頭を下げた。
「もう良いって。真白はなんにも気にすんな」
「で、でも……っ!」
「真白。そんな調子じゃ、サキとサヤに気を遣わせるぞ? それだけは子どもにさせちゃならない」
「……そ、そうだけど」
どのように諭しても、真白は納得した表情を浮かべない。それだけ自分が犯したあの件に関して罪悪感があるのだろう。
昔から責任感が強かった真白だが、その性格は今でも引き継いでいる。……そして、このようになった真白の調子を直す方法を蓮は知っている。いや、これは蓮にしか使えない技でもある。
「……はぁ。そんなに納得出来ないんなら、俺の願いを一つだけ叶えてくれ」
「蓮くんの願い……?」
「はい。……真白が立たないと出来ないんだが、これ」
蓮は靴棚の上に手提げカバンを置き、真白に向かって両手を広げる。
『ハグ』そう暗示した行動に、真白は勢いよく立ち上がり、勢いよく飛び付いてくる。
「れ、蓮くんっ……!」
「お弁当、美味しかったよ。いつもありがとうな」
「……うん、うんっ!」
「今度は弁当忘れたりしないから」
「そ、そうしてくれると嬉しいな……。蓮くんのためを思って作ったから、ちゃんと食べて欲しい……」
「ああ、分かった」
蓮はそんな真白を強い力で抱きしめて、暫くした後に力を緩める。
「……さて、サヤとサキを起こして飯にするか」
「……」
サヤとサキは、蓮が帰宅するまで睡眠を取るという生活サイクルになっている。帰宅した時に帰りの挨拶がなかったのはそのせいであるのだ。
そして……子ども達を起こしに行こうとする蓮だったが、真白は一向に離れなかった。
「おい、離れろ」
「やだ……」
「離れろ」
「いやだ……」
「離れろって」
「いやだよ……。蓮くんがわたしをこうさせたのが悪いんだもん」
蓮が力を入れなくとも、片方がしがみついて入ればハグは成立する。真白は蓮の首に腕を回して一向に離れない。
「……あ、あのな。正直な話、真白にずっと抱き付かれてるとへんなスイッチが入るんだよ……。だからこれくらいにしてくれ」
「スイッチ、入っていいです……」
「馬鹿なこと言うな」
サヤとサキにご飯も食べさせていない。お風呂も入っていない。そんな状態であのスイッチを入れるわけにはいかないのだ。
「わたし……蓮くんにこうされただけでもう、スイッチが入りそうです……」
「おっ、おい。それだけはやめろよ!?」
その言葉を言われた瞬間に、蓮は真白の腕を強引に解いてサッと距離を取った。
蓮が言えることはただ一つ。真白のスイッチが入ったなら、もう抵抗することは出来ないのだ。
それはまるで、蜘蛛の巣に捕まった羽虫のように。
「わ、わたしはあの時の言葉を撤回しませんから……」
「あ、あの時の言葉って?」
「今日、わたしが蓮くんを襲うことです……。もうこれは確定事項です……」
「あ゛!?」
頰に紅葉を散らしながら、意志のこもった瞳で蓮に視線を向ける真白。
「そ、そのために今日のご飯はウナギにしました……。精のつく食べ物です」
「……」
「精のつく食べ物です……」
「おい真白……。謝る素振りを見せて、実際は反省してないだろ」
「ほんとにしてますよぅ……。で、でもこれとそれは話が別じゃないですか!」
『精のつく食べ物』を二度も言い、襲うことを前提とした夜ご飯。
玄関前で謝っていた割には、抜かりのない用意周到なものである。
「……な、なんで蓮くんはわたしとシようとしてくれないんですか……? も、もしかして、わたしとするのが嫌になっちゃったんですか……? そ、それとも別の女性とシてるんですか……?」
「そ、そんなわけじゃないが……」
「じゃあ、シましょうよっ!」
「だからなんでそんな持って行き方をするんだよ……」
強引な話の持って行き方は、真白の得意分野。特にこの話題になった時には無双するほどの実力がある。
「だ、だって蓮くんが奥手だからっ! そ、そんなのだから、わたしはどんどん、どんどん溜まっていくんです……。欲求不満なんですっ!」
「欲求不満でも堂々と
「ちゃんと言わないと罪悪感が湧くじゃないですかっ! ヤるならそんな気持ちは無くしたいんです!」
「はぁ……」
寝ているところを襲ったことがない蓮に関しては、その気持ちは全く分からない。むしろ、分かってはいけない気持ちである。
「それに、サヤとサキが言ってました。3人目がほしいって……。わたしもそう思います……」
「3人目……なぁ」
「さ、幸い、貯金もまだまだありますし、わたしも若いですし、産むなら今のうちだと思うんです……」
「確かにそうかもしれないが、そんな大事なことはもっと時間をかけて決めるべきだと思う。だから、今はまだ決められない」
計画も無しに、ただ子どもが欲しいだけで進んでしまっては後々に影響が出てしまう。
子どもが欲しい気持ちも分かる蓮だが、妊娠は真白の身体に一番負担が掛かること。
だからこそ、子ども産める環境にあっても、貯金があると言っても、勢いに任せた行動をしてはならないのだ。
「じ、じゃあ、子どものことは我慢しますから……今日の夜中、シて良いですよね……」
「はぁ……、もういい。その件は後にして、とりあえず夜飯にするぞ。俺は飲み物と箸の準備しとくから、まずはサキとサヤを起こしに行ってくれ」
「う、うんっ! それじゃあ、わたしは遠慮しませんからねっ! 夜中、空けといてくださいねっ」
「……は?」
「サキー、サヤー、パパが帰ってきたよーっ!」
なんて意味の分からない言葉を残して、ご機嫌を隠すこともなくスキップして真白はサヤとサキを起こしに行った。
そして……案の定、真白は静けさに包まれた夜中に攻撃してきた。明日が仕事であ
るにも関わらず、蓮を眠らせなかった真白である……。
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更新遅れましてすみませんっ!
ただ今、忙しい時期でして応援コメントも返せてないです><
時間に余裕が出来ましたら、嬉笑を浮かべながら返す次第でありますっ!
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