隣の音

　昭和二十年、東京。焼け野原に生えた木に、赤子そっくりの実がなった。
　いかにも負け犬然とした風貌の卯井彦太郎はその数か月前、陸軍二等兵として中国奥地をさまよっていた。同じ部隊の長田、小茂田、佐伯と行動をともにしていた彼はある日、別部隊の那須から食糧を受けとるよう命じられる。だが当日、那須が持参したのは役に立たない砲弾だった。責任をとらされ、裸で木にしばられた卯井。つもった怒りを爆発させ、四人に復讐を誓う彼の元に男が現れる。男が湖からひろった箱には、不老長寿をもたらす秘宝、人参果のありかが描かれた地図が入っていた。一万年に一度実をつける人参果は赤子に瓜ふたつで、『髪縫いの洞窟』や『彼岸の村』でカギを獲得すればもぎとれるという。
　長田ら四人と秘宝探しの旅に出ることになった卯井。
　一方、日本…続きを読む