人の弱さと強さが染みてくる

誰もが未来に希望を持ちたい。
しかし、この作品世界では、基本的に未来への希望はない。
そんな世界でも、人はささやかな幸せを求めて、小さくても希望を持とうとする。

周囲がそのような状況で、登場人物たちは疑いつつも前に進もうと努力している。
良くも悪くもみんなが順応している悲しい現状に立ち向かおうとしている。

そこに人の強さを感じさせられる。

もちろん、辛い現状に順応していることは、人の弱さでもあり強さでもある。
大勢は日々を生きることに懸命なのだから、新たな何かを切り開けないとしても弱いとは言い切れない。
環境に順応し耐えて生きていくことは強さでもあるのだ。

だが、今のままなら決して希望は持てない。
だから、その先は?

登場人物たちはそれぞれ「その先」に向けてあがいている。
それは現状に耐えられない弱さでもあり、希望を掴もうとする強さでもある。

この作品ではいつも人の弱さと強さの双方を突きつけられる。

そこが人間らしさを感じさせるところでもあり、この作品の魅力だろう。

最終章が近づいている。
結末をドキドキしながら待つとしよう。

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