のば「ゆきおんな」

「ゆ、ゆき先輩!

オレとつき合って下さい!!!」

「ムリ!」

オレは2秒で失恋した。


阿代ゆきさん、2つ年上でオレの部署のチーフだ。

色白で儚げだが芯のしっかりした秋田美人。時々見せる物悲しそうな表情にやられた。


ま、負けるもんか!

「ゆき先輩!もう一度言います!

オレとつき合って下さい!!」

「ダメよ」

「なんでなんすか!

オレが年下だからっすか!?」

「違うわ」

「じゃあオレの事嫌いなんですか!

オレの事迷惑ですか!」

「豪くん、

キミのその熱いとこ嫌いじゃないわよ。でもね」

「でも何なんですか?」

「でもね、あたしはゆきおんな…」

「???」

「あたしとつき合った人はみんな不幸になるの。

初めてとつきあったのは高校生の時だったわ。

憧れてた先輩に告白されて…」

「?」

「つき合って一週間目に…

彼、交通事故で亡くなってしまったの」

「次に彼氏が出来たのは大学に入ってから。

サークルの先輩だった。とても優しくて紳士で。

でもつき合って一週間目、火事で…」

「三人目はこの会社に入ってから」

「!?」

「同期の男の子だったわ。豪くんみたいに熱い子。

彼もつき合って一週間目に…」

「…」

「でね、あたし分かったの。

あたしは『行きおんな』。

名前の通りあたしとつき合った人は『あの世行き』なんだって」

「そんな!」

「そうなの!

あたしとつきあうと一週間で死んでしまうの!

だから!」

「分かりました。先輩とつき合うの諦めます」

「そう、それがいいわ…」

ゆき先輩は少し悲しそうな目で笑った。

「それじゃあ、ゆき先輩!

オレと結婚して下さい!」

「え?」


それから5日後、俺たちは入籍した。


オレの名前は羽合豪。

新婚旅行はもちろんハワイだ。

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