のば「のっぺらぼう」

「では我が3年6組24名の10年ぶりの再会を祝して!

かん・・・」

「ちょっと待ったぁ~!

ひぃ、ふぅ、みぃ…

やっぱ23人しか居ない」

「委員ちょ~!しっかりしてくれよぉ」

「ん、なぁにぃ~!

来てない奴誰だぁ!返事しろぃ!」

「お約束はいいから確認しろよ」


俺は参加名簿をひったくるとじっくり確認した。

「んと、えと、ん~~、あ!いた。

野平、野平奈子」

「だれか~、野平の事知ってる奴いる~?」

みんな顔を見合わせながら確認し合ってるが誰も知らないらしい。

「誰か近所に住んでた奴、いる?」

誰も返事をしない。

「同じ部活の奴とかいねえの?」

ざわざわ。

「誰もいねえの?何部なんだよ?」

ざわざわ。


「野平の友達だった奴とかいねえ?

一番仲の良かった奴は?」

ざわざわ。


やべえ、俺、クラスにイジメがあったの気づかなかった?

委員ちょ失格じゃん!!

俺だけでも友達になってやればよかった。

野平、野平、野平?

…野平?

野平ってどんな奴だったっけ?

背はそんなに高くなかった。

髪はそんなに長くなかった。

痩せてもなく、太ってもなく

普通だった。

顔は?

顔が思いだせん!

まるでそこだけフラッシュがあたったようだ。

「なぁ、野平ってどんな奴だっけ?」

「えと、背はそんなに…」

「髪はそんなに…」

「そんなに痩せてもなく…」

いや、そんな事は分かってんだよ!

「顔は!顔はどうだったんだよ?

誰かに似てたとかさ」

ざわざわ、ざわざわ。


「おぉ、遅くなってすまんすまん」

「鈴木先生!」

「さ、これで24人揃ったな」


一瞬頭のなかを何かが通り過ぎた。

が、すぐに俺は『何を忘れたのか』すら忘れてしまった。


「では、3年6組10年ぶりの再会を祝して、かんぱーい!」


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