第16話 大団円ってことで
隆人が私にまとわりついてくる。
「モミじー、大好き。僕、将来をモミじーをお嫁さんにするからね!!」
あはは……。
あなたが結婚できる年齢になる頃、私はいくつになっているのかしら?
ふと思い出した。
「ねぇ、あの寒い中……ずっと、お店の外で待ってたの?」
「……?」
「ごめんね」
ふと私は隆人の両親を見た。
事件が現在進行中の間は、ピリピリとした空気を張り巡らせていたのに、今は落ち着いている。
『誘拐』された息子を間に挟んで、2人でゆっくりと星空なんか見上げている。
ああ、私もいつかは和泉さんとあんな感じに夫婦になって、そうして子供が産まれて……きゃーっ!!
「郁美ちゃん、よかったね」
突然、和泉さんが言う。
「え? な、何がですか……?」
「僕なんかよりずっと可愛い、年下の彼氏ができたみたいだね。おめでとう!!」
和泉さんはしゃがんで隆人の頭を撫でると、
「ねぇ、隆人君。彼女のこと大切にしてあげるんだよ?」
「うん!」
ちょ、ちょ、ちょっと待ったぁあああーっ!!
「ち、ちが……誤解です!! 私には、ちゃんと好きな人が……和泉さん?!」
「岩井さん。明日、お昼ご飯を奢ってくれますよね? 僕だって協力したんですから」
なんですと?!
あんたもグルだったのか……!!
まさか、何度かかかってきた電話や、デザートやコーヒーが提供された頃にかけていた電話の相手は……?!
「ねぇ? 僕、回っていないお寿司がいいです~」
「あんたって、いつもそれね」
「だって、お肉より魚の方が高価なんですよ?」
なんで、どうしてこうなるの?
そうして。
ふと、うちの上司も絡んでるんじゃないかと思い始めた私……。
だとしたら許せない!!
絶対に!!
がっでーむ!!!
翌日。
「おう、どうだった? 念願の和泉との初デートは」
「……係長。岩井さんって方、ご存知ですよね……?」
あ、目が泳いだ。
「いわい? ……祝いか。おい、まさか初回デートでいきなり結婚の約束を取り付けたんか? やるのぅ。さすがワシの娘みたいな……」
「……」
「もちろん、ご祝儀は弾むけぇの。楽しみにしとれ!! それよりも、昨日お前が休んどる間にのぅ、とんでもない量の仕事が増え……おい? コラ待て!! なんで椅子を持ち上げ……ひぎゃあああっ?!」
反省文は受付けないから。
身代金は500円~茶番と狂言に踊らされる夜の謎~ 成宮りん @mikemikeon
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