失われた感覚を思い出す

 この作品で取り上げられている教員実習もそうなのですが、バイトではなく、本職の現場に初めて関わった時の不安や期待、それに希望などをこの作品で思い出しました。

 転職も経験し、長く仕事をしていると、新たな仕事の現場に入る時の、そういった感覚が薄くなっていく。
 「どこでも、どんな仕事でも、やることはさほど変わらない」
 そんな感覚になっていく。

 日々の糧を手に入れるため、家族を養うため、そういった現実的な目的に占められて、感情的になっていてはいけないという面は確かにあるのですが、それでも仕事へのやり甲斐につながる気持ちが薄れてしまったのは寂しい。
 
 そういった……ある意味青い感覚をこの作品を読み終わって思い出した。
 思い出したからといって、即、現実の仕事の現場でも気持ちを維持していくことはできないでしょう。
 でも、作品の読中・読後くらいは、やり甲斐を持ち職場に向かっていた当時の気持ちに浸っていたいと思います。

 その意味で、私にとってはノスタルジックな作品でした。

 

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