8.冬の服装

 十月になると、四月と同じように衣更えが行われます。いつものように早朝には、生絹の衣に普段持っている扇を持っています。そんな姿で参上する人々を女院は衣更えが終わるまでご覧になっていました。普段いらっしゃる御所の御簾や畳を替えたのちに女院の御服などを打衣はなく、多くの御服、御表着、小袿ばかりで、日が暮れるまで女房たちは衣更えに携わっていました。

 

 この月も、斑のある染め付けの衣、文様のある衣を普段着として着て、十一月の新嘗祭に付随する五節の行事までは、衣更えのときの衣二組のままで、五節の頃は梅襲、紅梅などの春のような衣を一組着る人々がいます。師走までは、重なった衣を着ない日は一日もありません。

 

 折り折りにつけて、貝覆い、石取り、碁、乱碁、双六など、御所にも調理場にも、上臈が待機する二間でも、ただみんなで遊び戯れて、年配の人も若い人も、明かし暮らしました。

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現代語訳版『たまきはる』  神楽坂 @izumi_kagurazaka

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