7.秋の服装

 初秋である、七月七日の節日には、萩、女郎花、紅、桔梗などの色の衣を新しく仕立てるときには、五重にひねり重ねにしていた単を減らし、表着や裳、唐衣、張り袴などを着て、五月五日の節句と同じようにします。扇については、五月二〇日までは骨の多い生絹のような紙を貼ったもので、絵が細やかに描かれているものを使います。暑くなってきて、一重の単襲を着る頃になると、扇の絵は一面に優美な趣のあるものになり、骨の数が少ない扇に貼って持っていました。

 

 八月一五日からは、またひねり重ねを着て、普段着に二枚重ねの生絹の薄手の衣を着ます。四月に着ていた生絹の衣は、季節にも合わないので、三つ重ねのものを取り除いて着るのが、なかなか好ましいと聞きました。ひねり重ねの単を着るようになると、九月一日は色紙がかわいらしく、絵がこまやかに描かれている骨の多い扇をまた持つようになります。そうしない者もいますが、これらの決まりはしなければならないこととして、若い人々の親たちなどが、心を尽くして言い聞かせてきたことであります。

 

 九月一日から八日までは、綿の入っていない生絹の衣を五つ重ねにして着て、九日に綿を入れる紅葉、菊などの衣を仕立て、通例である正装の打衣を重ね、普段は綿の入らない衣に綿を詰め、普段着として着ています。夜も昼も重なった衣を必ず着て過ごすようになります。重なった二つ重ねの衣を着ることを許されている上臈の女房は衣を重ねなければならないという決まりの限りではない。これは、番といって、月ごとに参上する期間が替わる人々のことです。

 

 下臈の女房も、上臈と同じような二つ重ねの衣を着て、薄衣ではありますが、裳は必ず着用しています。御前に参上しないような人は、冬は単や裳は着用せずに、きちんとした衣を着用します。夏は暑いといって、単と裳を着用します。

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