6.夏の服装
四月の衣更えになると、早朝の頃は御所の御衣更えがあると、少しの間、参上はいたしません。頃合いが良いほどに、「速やかにおいで下さい」と、御使いがあるので、それぞれが準備をして参上し、女院の日常の御座所や、御簾、畳などを替えている頃合いになると、女院は調理場にお出ましになられました。
女院は、春の御装束の中の萌黄色や白いものを五重に重ねて召し、その上に薄いお召し物を重ね、さらに他の女房が取り替えた春の装束などをちょっとお召しになって、調理場の端に、下臈の女房と同じような様子に飾りたてなさって、お座りになって並んでいらっしゃると、普段はあまり女院の元へ参上せず、夜勤で参るような女房で、衣更えだからとさすがに女院へのお目通りを許された者が参上すると、調理場の女房に混じって並んで座っていらっしゃる女院を見つけて大騒ぎするというようなおもしろい事があり、そんな喜ばしい日々が、必ずあったことです。
四月のうちは、衣更えの衣ではなく、春の衣である紫、紅、薄萌黄色の衣を着たり、普段着の上に紫や紅、青の衣を着ることがとりわけ素晴らしい趣として捉えていました。そうではないときは、模様のない白い着物を五枚ほど、普段着として単に重ねてきていました。
葵祭りの日には、生絹の衣を若い者は着ているが、老いた人々は着ませんでした。葵祭りから五月四日までは、祭りの生絹の衣を着ました。
端午の節句であります五月五日には、ひねり重ねにした単に正装である衣を重ね、衣更えの日と同じような服装になります。生絹の薄い衣を二枚重ねたものや、染め付けた衣の上にも、ひねり重ねの単や、白い只絹などを着るときも、一番上に重ねるものは染め付けをして、五重にひねり重ねして、雲の文様をつけた単などを重ねて着ていました。
織り目の粗い衣、薄手の衣、ひねり重ねした五重の衣、文様を染め出した衣など、時には下まで通らなくとも、白いひねり重ねなどをして、三種類の衣を重ねて必ず着ていました。
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