召喚呪文を知る ~本を読もう~

 のちにも書きますが、本を開くと読者はこの世界ではない異世界に誘われます(ノンフィクションなら、筆者が取材や経験した過去ですね)。


 ですが、その召喚呪文(文章の使い方、最低限のルール)を知らなければ呪文は効力を失い、読者は現実に引き戻されてしまいます。


 本を読まなくてもいい。と説く解説書があることも知っています。でもこれは少数意見のように思えます。ほとんどの参考書指南書は、本を読むことを強く勧めています。

 理由はこれに集約されると思います。


「作家の世界をアウトプットする手段がたくさん書かれているから」


 文豪の本を読め。

 というのは、なにもその作家を崇拝しろ敬愛しろというのではありません。洗練された技術がいっぱい詰まっているからです。


 いろいろな本を読め。

 というのは、様々な文体を知ったほうが武器になるからです。

 一口に文章といっても、ジャンルによって書き方がまるで違います。小説の調子でニュース原稿を書くことは出来ません。

 より深く読み込めるようになると、文章作成の下地が見えてくるようになります。

 漫画でも構いません。これは台詞回しの参考になります。


 さまざまなジャンルを読め。

 というのは、《アイデアの枯渇を防ぐ》という非常に大きな意味があります。

 特に若い方(十代・二十代)のみなさんは、人生の絶対経験値が不足しています。幸いなことに日本人は、波乱万丈の絶望や死の淵を彷徨った人なんて、若い時にそうは経験しないでしょう。

 創作活動をするとき、その経験の少なさが仇になり、アイデアが枯渇し筆を折るという洒落にならない日がやってきてしまいます。

 簡単に言えば、ネタ拾いにもってこいなのです。 


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 物語の構造について、やや掘り下げて書きます。

 それは大雑把に言うと、起承転結ではありません。


 《欠如(喪失)から異世界(全く違う環境や相容れない感性のキャラ)と出会って、回復(欠如したものを取り戻し、もとの生活に戻り、主人公は成長する)》


 という仕組みでできています。この物語の文法とも呼べる手法には起承転結の余地はありません(そもそもそれって、元は漢詩の文法です)。

 これは最古の神話体系から紡ぐれた物語に必ずと言っていいほど見られ、日本書紀や古事記も、一部を除いて例外ではありません。


 その一部とは、異世界に行ったきり帰ってこないまま物語が進む箇所があるのです。

 それを考えると、今流行りの「異世界に行ったきり帰ってくるつもりはない主人公」に通じるところがあるかもしれません。

 これは、物語評論の大御所である、ロシアのプロップ氏が分析したものです。


 そして物語は主人公が成長しきる(大人になる)と終了を迎えます。

 この解説を私なり噛み砕いてお伝えするより、アプリ「N予備校」で読んだほうがいいと思います。ものがたり創作授業はタダです。


 多くの作家は知らず知らずのうちに、幼い頃から読み聞かされた童話を聞いて身体に染み付いているからこそ、書けてるのだと思います。でも理解するのと無意識でやるのとでは、大きな差が生まれます。


 最後に、大ヒット映画やアニメであればあるほど、これら《物語の文法》にそって描かれていることをお伝えしておきます。

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