7話 狂戦士

 アイネは憤然とし、杖を大地にトンと突き、ちんまりとした鼻でフンス!

 「あー!もー怒った!勇者様ぁー!やっておしまいー!」

 片足を後ろにピョンと上げ、前のめりでアミトを指差した。


 ……………………。


 だが勇者3名、誰も反応しなかった。



 「あれー?」と怪訝な顔で三人を見上げ、トコトコとムラマサに迫り

 「じゃあ勇者様1号ぉー!張り切ってどーぞー!」

 木の杖を大義賊団のボスの眼前に突き付けた。


 ムラマサは黒革の手袋でそれを横に叩(はた)き

 「はぁ?何で俺様が、おめーみてーなクソガキに化け物退治を命令されなきゃなんねーんだよ!

 そんな事より俺様を元の場所に帰せってーの!

 

 なぁ2号!お前も何かビシーっと言ってや、れ?


 て、お前ヤル気満々じゃねーか!!」

 刀の柄(つか)を押さえつけ、ランランと瞳を燃やす超絶美剣士に気付く。



 鏡二郎は震える利き腕を、何気ない素振りで懐に隠し

 「うん?な、何を言うか。まだ殺意が俺に向いてない。

 先ずここが我慢のし処(どころ)だぞ。」

 背筋を伸ばし、美しい顔を引き締めた。



 ムラマサは頭上に?マークで

 「なんじゃそら?あ、お前アレだろ?なんつーの?アレだアレ……。」

 鏡二郎を指差し、ここまで出かかってるの顔。



 傍らのconan Mk-III

 「戦闘狂。」


 ムラマサはパキンと指を鳴らし

 「そーそー!それだそれ、お前戦闘狂だろ?!

 ヌハハハハ!正義の味方喚びましたー、アララビックリ!殺人鬼でしたーってか?!

 ヌハハハハ!!笑えるぜー!!」


 リムは笑えなかった。


 ムラマサは黒革の帽子を押さえ

 「なぁ教えろよ?お前何人バラしたよ?  あ、そーだ!殺しよりさ、女はどーだ?テメェ俺様より紙一重だけど、面が良いからな、マジモッテモテだろ?」



 conan Mk-IIIがヘルメットを傾(かし)げ

 「紙一重は正しくない。この場合……ウム、天と地か。」

 


 ムラマサがいつ出したか、2丁拳銃をconan Mk-IIIのフェイスシェードにポイントする

 「何だとー?オイ!キモロボ!テメ今なんつった?!

 休戦協定は終わりだ!今すぐ蜂の巣にしてやらぁ!!」

 この男も立派なアレだった。



 conan Mk-IIIはメタリックレッドのヘルメットをムラマサに向け、腰を落とし、スタンスを広くとると、ロボットみたいな太い両腕を前に構え

 「望むところだ、司法の敵。後、俺は」



 ムラマサは歯を剥き

 「ロボじゃない、バイオハザードだ、だろ?!!

 いい加減聞き飽きたぜ!!」

 美しい顔、その瞳に狂気の炎が燃え上がった。は



 リム「うわわわわっ!!ちょ、ちょっと止めて下さい!!

 勇者様方!!戦うならあっちあっち!あっちですよー!!」

 オートマチックガンを知らぬのか、二匹の銀狼をグーと押しのけ、二人の間に割って入り、赤いリザードマンを指差す。



 ムラマサの炎は鎮(しず)まらず、尚も銀狼を女領主の肩ごしに上げ、conan Mk-IIIの額を狙う

 「うるせー!!テメェは引っ込んでろ!!大体こいつは俺様をパクりに来やがったんだ!

 仲良く正義の味方ゴッコなんて出来るか!」


 conan Mk-IIIはメタリックレッドのヘルメットを横に振り

 「また間違いだ。お前は既に判決が下りている。

 逮捕(パクる)でなく、処刑だ。」

 平然と言ってのけた。

 


 ムラマサは狂気の哄笑(こうしょう)

 「ヌハハハハ!おんもしれー!!

 じゃ、やってみせろよ!!

 銀狼の前じゃ、お前の装甲なんか紙だ紙!一瞬で穴だらけのズタボロにしてやるぜ!!」



 カルマが額に手をやると

 「お嬢様……私が懸念しておりましたのは、これでございます……。」



 女盗賊ハミルは革鎧の腰に手をやり

 「何だか良く分からないけど、おかしな格好の召喚戦士達だね。

 プッ!なんか内輪もめし出したよ?」

 

 老僧侶エルダーが頭を振りながら

 「ま、召喚戦士などあんなものじゃて。

 さて、さっさと済ませるか。」

 法衣の右手を赤いリザードマン、アミトへグッと突き出し、人指し指と中指を揃えて曲げる。


 

 魔法使いシェケムは、炎が舐める街を見回し

 「やれやれ。この分では今夜の宿もあやしいですね。

 リザードマン、少々おいたが過ぎましたね。」

 銀の杖をクルクルと器用に回し、パシ!と握り直し、細い目でジロリ、赤いリザードマンを睨んだ。



 戦士ダイナスは

 「じゃ、こいつらを済ませたら、次は消火活動だな。」

 聖剣ジャハールを上段に、5メートル先のアミトに構えた。



 手練れ冒険者達の必殺の敵意を浴びる、赤いアミトの顔が笑った様に見えた。

 「アロン!ダイト!来い!」


 手招きし、一声呼ぶと、館の玄関前にいた二匹のリザードマンが跳び、空中でキリキリと回転し、アミトと冒険者達の丁度真ん中に四つ足で着地した。

 

 何という跳躍力か、部分鎧と刀を身に付けた三メートルが、10メートルを跳んで来た。


 アミトはトゲの顎をしゃくり、吼えるように

 「この四匹を狩れ!」


 二匹がうなずき、蛮刀を大上段に構えた。

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