17話 モーニング勇者。

 宴終わって一夜明け、同じ酒場で朝食を摂る冒険者と勇者達。


 戦士ダイナスは朝から分厚いステーキを切りながら

 「勇者様はこれからどうするつもりかな?魔王を倒しに行かれるのか?」


 向かいのconan Mk-IIIもステーキだった 「まおう?」


 女盗賊ハミルは木の実の炒めたのと野菜のジュースである

 「魔王ってのはね、五年前に無人島に突然城をおっ立てて、時々そこから軍艦でモンスターを大陸に送り込んでくるヤツさ。

 正体はサッパリ分からないんだけど、都の王様んとこに使い魔を送って寄越して、大陸の統治権をそっくり寄越せって言ってきたらしいよ」


 魔法使いシェケムはサラダだ

 「そうそう。ですが不思議なのはどこからそのモンスターを連れて来ているのか分からないとこです。

 一説には魔界から召喚しているとか」


 老僧侶エルダーはパンと魚の定食だ

 「加えてモンスターは年々強力になってきておる。

 今回この街を襲撃したリザードマンも大陸に元からおった物ではなかったしのう。

 あんなに強いのは見たことも聞いたこともなかったわい」


 アイネはホットケーキにハチミツとクリームを、見るものの胸が悪くなるほどかけていた

 「そーなんだよ。お師匠様もレッドドラゴンの退治に出掛けてるしー。

 強い魔法使いはみんな大忙しなんだよねー。あー私もそうだねー」


 朝日を浴びて輝く美剣士は二個の茹で卵だけだった。

 「れっどどらごん?それはどんな妖怪だ?」


 アイネは人差し指をハチミツのついた唇にあて

 「えっとー。スッゴく大きくてー、高ランクの魔法も唱えるしー。それから火も吹くんだよー!

 あっ!後ねー!いっぱいの金貨と宝物の上に寝てるんだってー!もし倒せたらお金持ちになれるよねー!」

 

 女盗賊ハミルはそれを聞いて吹き出した

 「なーに夢みたいな事言ってんだよ!

 レッドドラゴンを倒せる冒険者なんかいないよ」


 戦士ダイナスは髭剃り跡を擦り

 「いや、最高ランクのゼータがいるぞ?

 あいつの二つ名はドラゴンキラーではなかったか?」


 魔法使いシェケムは上品に口元を拭い

 「いえダイナス、彼が倒したのはグリーンドラゴンまでだったと思いますよ。

 レッドドラゴンはモンスターランク規格外の生き物ですから、いかにゼータさんといえど一人では倒せないでしょうね」


 戦士ダイナスは銀のゴブレットを下ろし  「そうだったか。じゃあレッドドラゴンは魔王とどっちが強いかな?」


 魔法使いシェケムは薄い肩をすくめ    「さぁ?なにしろ魔王の姿を見た者も闘った者も、魔王の島から帰って来てませんから、何とも」


 鏡二郎が銀狐を撫で

 「お前達はこれからその魔王とやらを退治に行くのか?」


 女盗賊ハミルは手を振り

 「冗談。魔王征伐クエストなんて命が幾つあっても足んないよ!

 アタシ達はギルドの高ランクのクエストをこなして、歳喰っちまう前に一財産作りたいだけさ」


 鏡二郎はうなずくと隣を向き

 「どうだこなん、俺の宿敵はその魔王という奴らしい。

 お前とムラマサは腕が立つ、その魔王とやら、退治しに行かんか?」


 ハミルが野菜ジュースを吹き出しそうになる。

 「ちょっと待って待って!アタシ達の話聞いてた?!

 魔王討伐なんて誰も帰って来れない死への片道旅だって!!」


 conan Mk-IIIはそれを聞かず

 「ウム、モンスターという生物達によってこの街のように、この星の民間人に被害が及んでいるようだな。

 シルバーウロボロスMk-IIIがその魔王とやらにどこまで通用するか試したいし、基地との通信が取れなければ救助申請も出せん。

 その独裁者の制圧、俺はやっても構わん。

 おい、司法の敵、お前も帰る当てがないのだろう?

 俺はお前を見張らねばならん、だからお前も協力しろ」

 


 ムラマサは椅子に仰け反り、手拭きで頭を冷やしていた。


 「よーし!じゃ、俺様もいっちょやってやるぜー!!とか言うとでも思ったか?

 あ痛たたたたた……」

 完全なる二日酔いである。


 「大体、俺様は面倒事はゴメンだぜ。それにテメーらと違って、帰る算段は立ててあんだよ」


 一同が注目する。


 美剣士が身をのりだし

 「何?帰れるのか?」


 ムラマサは大仰にうなずくと

 「ウイ。2号、お前はハンサムだから特別に教えてやろう。

 そりゃあな、コイツだ」

 黒革の手袋の人差し指で隣のトンガリ帽子を指差した。


 「コイツの話だとコイツには師匠がいる。 てこたぁーコイツには出来ねーことも、そのお師匠さんには楽勝で出来るっつーのが道理じゃねーか?

 ハイ!俺様天才。あ痛たたた……」


 一同「なるほど!」


 だが、シェケムが首を傾げ

 「しかし、今まで来た召喚戦士は皆この世界に居着いてしまうか、モンスターによって倒されてしまうかで、元の世界に帰ったという話は聞きませんね」


 戦士ダイナスは両腕を頭の後ろに組み、椅子をギーと鳴らし

 「ふん。よほどこの世界が暮らしやすいのだろうな」


 ムラマサは苦い顔で

 「いーや俺は帰るね!銀河にゃ殺らなきゃなんねぇ悪党もまだまだいるし、子分共が待ってるんでな。

 おっとコナン、そんな事はやらせん!だろ?」


 腕を組んだメタリックレッドがうなずいた。


 アイネは万歳をして

 「そっかー!お師匠様なら勇者召還出来るかもー!じゃあ、お師匠様の所に皆で行こうよー!」


 ハミルは笑って

 「お嬢ちゃん、悪いけどアタシ達は遠慮させてもらうよ。

 さっきも言ったけど、レッドドラゴンのいる死の谷なんて近付くのもおっかないとこさ。まだ命が惜しいからね」


 戦士ダイナスはブドウをワイルドに掴み、皮ごと食べながら

 「そうだな。次のクエストも期限が迫っているしな。

 俺達は明日にもここを出るつもりだ」


 魔法使いシェケムが美少女の杖を見て

 「そう言えばアイネさん。お師匠様とはどちら様ですか?私の知ってる方かも知れません」


 アイネはうなずき

 「あーそっかシェケムさん魔法使いさんかー。

 んーとね、ハリーネ様だよー」


 魔法使いシェケムは斜め上を向き、心当たりを検索

 「んー……ハリーネさん、知り合いにはいませんね。

 ハリーネといえば宮廷魔導師様と同じ名ですね」


 美少女はエッヘンと背筋を伸ばし

 「そーだよー!お師匠様はそのきゅーてー魔導師です!」


 シェケムが目を剥いた

 「なんと!アイネさん!それは本当ですか?!

 宮廷魔導師!我々魔法使いの頂点ではありませんか!

 そんな方と貴女が所縁(ゆかり)があろうとは。

 しかも直接の師弟関係とは驚きです!」


 アイネは杖を構えて、シェケムへ

「どーだまいったかー!」


 conan Mk-IIIが手を上げ

 「話の腰を折るようで悪いが、前々から聞きたいと思っていたのだが、そのマホウとは一体何だ?」


 老僧侶エルダーが長い髭を撫で

 「ではワシが分かりやすく教えてしんぜよう。

 コホン!まず魔法にはな、」


 ムラマサが立ち上がり

 「俺様はジーさんの話にゃ特に興味がねーから、もう少し上で寝てるぜー」

 階段へ辛そうに歩く。


 エルダーはヤギのような眉をハの字にし  「失礼な奴じゃな。

 まぁ聞きたくないのなら無理に聞かんでもよいか。

 では続けるぞい」



 エルダー僧の講義は1時間ほど続いた。



 鏡二郎はエルダーのグラスに茶を注いでやり

 「なるほど、大方は分かった。神通力のようなものか。

 御坊、俺もやってみたい。これから先の戦いで俺達の内の誰かが傷付く事もあるや知れん。

 だから御坊の分野の神聖魔法とやらをとりそぎ幾つか教えてもらえんか?」


 エルダーはグラスを置き

 「ふほほほ。直ぐにやってみたがるのはよい心掛けだの。

 だが残念ながら、神聖魔法はおいそれと簡単に会得出来るもんではない。

 天才でもなければこの場で直ぐにとはいかんの」



 鏡二郎は天才だった。

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宇宙最強の三人が異世界で暴れます。 有角弾正 @arukado

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