012:漢字の表現力


「鬱」


「どうしたんだよ、いきなり」


「いや、鬱って漢字の鬱感ヤバくないですか? こう、ごちゃごちゃとしていて。見てるだけで気が滅入りそうです」


「あー、確かに。なんとなくわかるよ」


「蟹の蟹感もすごいですよね。わちゃわちゃしていて」


「カニ缶?」


「その小ボケは余計ですよ、先生」


「ご、ごめん。でも今日の話の流れは掴んだよ。要するに串の串感すごい、みたいなことでしょ?」


「そうです、そうです。理解が早くて助かります」


「盾の盾感も中々だよね。めっちゃ守ってくれそう」


「芋の芋っぽさも負けてませんよ。素朴さが滲み出てて可愛らしいですし」


「炎の炎感や、森の森感もよく表現できているよね」


「まんまですけどね」


「でも一番は傘かな。傘の傘感に敵う漢字はないでしょ」


「先生は一つの傘に四人も入るんですか? 相合傘どころの騒ぎじゃありませんね!」


「いや、そういう意味じゃない」

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