023:時の流れ


「先生、ご無沙汰してます」


「いきなりどうしたんだよ。別にご無沙汰なんてしてないだろうに」


「いやいや、鈍感な先生にはわからないかもしれませんが、こうして私と先生が会うのは一年以上ぶりのことなんですよ」


「はぁ?」


「つまり前回からそれだけ空いたということです」


「なるほど、そういうことね。ここは特殊な時間の流れだから気づかなかったよ。それこそ前回が昨日のことのようにも思えるくらいだ」


「ほう、先生はあくまで特殊な時間の『流れ』と表現するのですね?」


「何かおかしいかい?」


「それは特殊であれ、この空間にも時間は一定方向に流れているというわけじゃないですか。つまりいつかは時間の流れによって生徒である私は卒業し、先生との今の関係性が終わってしまうわけじゃないですか!」


「まあそうなるけど、どうしてそんなに語気を強めるんだよ。びっくりするじゃないか」


「だって寂しいじゃないですか! 私はいつまでも先生の生徒でありたいのに!」


「うん、そう言ってもらえるのは教師冥利に尽きるね。でもそうはいかないよ? 時の流れは絶対だ。いつか別れのときだって訪れるよ」


「いいえ、そんなことありません! なぜならこの空間は私たちの都合に合わせて時間が流れているからです」


「……と言うと?」


「私はいつまでも先生の生徒であり続けるということです」


「それは困るなぁ。僕としても」


「そうですか? 私は嬉しいですよ。それよりも今は、一年以上ぶりに先生と喋れて嬉しいですが」


「まあ、君が嬉しいのならそれで良いよ」


「ふふふ」

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文字だけではっちゃけてみよう ∠( 'ω')/ だるぉ @daruO

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