上海で世紀を越えていく若者たち。

英国籍を持つユダヤ系の主人公ゴールドマンは、共同租界の置かれた上海で「申報」の記者をしている。この、家業と家族に屈託した思いを抱えた一人の「デラシネ」は、朝鮮より亡命して来た一人の青年と出会う。朝鮮の青年は謎めいた問いを発し――。

魔都とも称される近代「上海」を舞台にし、二人の若者が新しい世紀を迎える数時間を描き、流転の魂の哀しみと新時代の希望を感じさせる、手堅い歴史小説。なお、主人公の勤める新聞社「申報館」は実在していたものである。
これから彼等は上海に根を下ろして生きていくんだろうか、それとも再び流転していくんだろうか、と彼等の人生の続きをもあれこれ想像もできる。
最終話で語られる、ある人物が主人公に語った言葉がとても印象的で、ラストも余韻が残る。

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