ホワイト企業のあやかしビルで働くのは、訳アリ尸解仙(しかいせん)!?

物語はまだ完結していないけれども、レビューをば。
新宿の一角にある「神渡ビル」は飲食店やプールなどが敷設された雑居ビル。
一見ごく普通の繁盛した、人の出入りの多いビルに見えるが実は秘密あり。

実は霊力を持つ狐、あやかしの類がせっせと労働に励んでいるのだ。

巽総司はビルを根城に水陸両用……じゃなかった、人間とあやかし双方を顧客とする「トレーナー」であるが、実は少年時代、ある事件によって「尸解仙(しかいせん)」となった身。仙人としての修行を積みつつ、人間やあやかしの相談に乗ったり治療したり。

読みどころはいろいろあって、中国や日本の神話・伝説が好きならクスリとさせられる小ネタが一杯だし、神渡ビルのホワイト企業ぶり、暗躍する影の陰陽師一家、殺生石、スイーツ大好き女神さま、ビルのオーナーの「思い」……それらに笑ったりしんみりしたり、ハラハラしたり。
なぜ総司が「モテる」のか、なぜビルの従業員はせっせと働くのか、人間を助けるのか……ひとつひとつ理由づけがあって面白い。
そして、あやかしも時に悩まされる現代日本社会の諸相。

手堅い現代ファンタジーをお探しの方にご一読をお薦めします。