悔恨 ~ Re:g-Re:t ~《原著 武論斗さん》
うわっ、ビックリした。
お前、俺が見えんの?
見える……見えるのか。アレか、霊感が強いっていうか、ガキだから見えんのかな。そういうことかな。
俺? 俺はユーレイだよ。
……怖くないって? そりゃ、ユーレイにもいろいろあってだな、怖くないヤツもいるに決まってるだろ。
そう、わかればいいんだよ。
坊主、お前、名前は?
そうか、ユキマサか。一人? こんな夜中に公園に来やがって。
親はどこ? 一人家を出てきた?
ふーん、おじさんがイヤだから飛び出してきた? おかあさんと結婚した?
ほうちょうでやっつけようとしたああああ!?
こら! おいおい、ガキのくせにぶっそうなことするんじゃねぇよ。もう、しちゃダメだぜ! そんなこと。ほうちょうはあぶないから持つな! 警察に捕まって、ろうやに入れられちゃうぜ!
……わかったんならまあいいよ。なんだ、フクザツな家庭で育ってんだな。
大丈夫だ。ガキのしたことだから大人は許してくれるぜ。まあ、すぐ探しに来るだろ。俺がそばに居てやるぜ。それまでここに座れよ。
俺の名前? 小林。小林戦兎。
せ、ん、と。せんとせんと。
漢字で書くとな、戦うウサギ、ていう意味だよ……おい、なんだよ! なんだそれ! 親父! おふくろ!戦うウサギってなんだよ! 弱っちそうだよな!
……ありがとう。そうだよな、刀持ってるミッフィーみたいで可愛いよな。
なんでユーレイになったかって、そりゃ、お前、死んだからだよ。
事故? みたいなもんかなあ。いや、タタリってヤツだな多分。
すげえ怖い犬に襲われたんだ。腹をかぶられて死んじまったんだよ。
山ん中にいたんだよ、そっから俺を追いかけてきたんだ。
なんでって……そりゃあ、その犬が閉じ込めてあったものが壊れたからだよ。
なんでって……俺のせいだな、多分。俺がシッコかけたら壊れちまったんだ。
なんでって……わかんねえよ。シッコかけたら壊れるようになってたんだよ。それで怒ったんじゃねえの。
どうしてって……そうだなあ、シッコかけたら誰でも怒るだろ。
どうしてって……そうだな、相手が嫌がることをしちゃいけなかったよな! ごめん! ごめんなさい! 良い子のお前はこんなことしちゃダメだぜ!
これから、俺、どうなるのかなあ。
俺、しばらくユーレイだと思うんだよ。
ユーレイになっちゃったワケかあ。
ううん、すごく後悔してるっていうか。
くやしい、ていうか申し訳ない、しまったなあ、ていう気持ちだよ。
それが強くて俺、しばらくユーレイなんだと思う。
え、いやいや、シッコかけたことじゃねぇよ。
死んじまったこともさ、そんなに悔しくないんだ。
ほら、人間いつ死ぬかわからないし、だれでも死ぬときゃ死ぬんだよ。
どんな奴でもだれもがいつか土に還るんだよ……いま、ちょっとかっこいいこと言ったよな、俺。
後悔していることが二つあってさ。
一つはダチの大木が、すげえ俺が死んだことに後悔してること。
死んでユーレイになったらさ、人の気持ちが分かるっていうか、感じることができるようになったんだよ。
大木っていうやつは、自分がしっかりしていたら、俺は死ななかったんじゃないか、って考えてるんだ。
仲の良いお友達、じゃあなかったな。
俺は大木が好きだったけど、あいつは俺のこと俺ほど好きじゃなかったと思う。
どれだけ、大木が好きかって?
そりゃ、お前、ソンケーだよ、憧れだよ、ファンだよ!
大木の名前は文士、って言ってな。ブ、ン、シ。ぶんしぶんし。
間のン、をとったら武士だぜ?
ホントにブシみたいになんかシブくてかっこいいんだよ!
ブンガクのブンに武士のシ、だぜ?
頭良さそうな名前だろ、俺と違って。
実際、めっちゃ頭が良かったんだよ。
正義マン? ああ、そういうのとはちょっと違うなあ。アレだな、ちょっと前のシンケンジャーのシンケンレッドみたいな感じ。見たことあるか?あれ。殿! って感じだよ。お、わかったみたいだな。
……でっけえあくび! 眠そうだな、お前。寝ろよ。ベンチに寝転べ。俺が居てやるから。おかあさんたちがきたら起こしてやるよ。
……大木はさあ、勉強もスポーツもなんでも出来て、クールでさあ。そんで群れなくてさあ。なんか陰があってミステリアス、てやつ。でも、一本筋が通ってるっていうか、漢、ていうか。そこにホレたっていうか。男が男に惚れる、ってヤツだよ。
あ、おい言っとくけどビーエルじゃねぇぜ!
……なんだ、もう寝たのかよ。そうだな、もう深夜だもんな。ガキは何処ででも寝るよな。
大丈夫かな。風邪引かねえかな。
俺が大木にまとわりついてただけで、大木は俺なんかどうでもいいヤツだったと思うんだけどさ。俺が死んであいつ毎日後悔ばっかりなんだよ。なんか悪いじゃん、あいつのせいで俺が死んだワケじゃないのに。それが申し訳なくてよ。俺がシッコかけたせいなのによ。そこまで気にすんなよ、て言いてえんだけど、あいつには伝わんなくてさ。それが俺の申し訳ない、ていう気持ちのひとつ。
もうひとつは。
いいよな、お前寝てるんだし。
もうどうにもならないことだから言っちまうけどさ。
……俺、実は『
くだん、くだん。ヒトのにんべんに牛。
死ぬ前に100パーセント当たる予言をしてこと切れる、ていう特別な能力を持った一族なんだよ。
太平洋戦争で日本が敗ける、て予言したのは俺のひいじいちゃんだし。
ツナミを予言したのは俺のじいちゃんだ。
俺の先祖は死ぬ前に大災害や事件を予言してきたんだ。
死ぬ前だけそんな力を発揮する、てのがミソだよな。わけわかんね。
それで、俺もさ。
死ぬ直前にそれが見えたんだよ。
伝えなきゃ、て思うじゃん。
知らせなきゃ、て思うだろ。
でも、教室にはイヌのバケモノしか居ねえし。
だから考えて書くことにしたんだよ。
ほら、サスペンスドラマで死にかけの人が自分の血で文字を書くじゃん。それ。
考えて考えて。めんどくせえ字はちょっと変えてさ。
俺は書ききったんだよ。
死ぬ前になんとか書けた。
でもさ、誰も俺が書いた意味をわかってくれねえんだよ。
なんか見当違いの答えばっかりだしやがって。
ああ、もう! 殺した犯人のなまえだとか、そんなんじゃねえんだよ。うがあああああ!
でも、誰もわかってくれないしさ。
せっかく、予知したのに。
俺、予知損だよ。死に損じゃん?
だから、これが最大の後悔。
思うんだよ。
……もっと勉強しとけば良かったなあ、て。
うん、マジで思った。
そういうことだから、お前もしっかり勉強するんだぜ。
俺みたいに後悔しないようにな。
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