恋のオノマトペ《原著 雨天荒さん》

《改題 災害のオノマトペ》


 ホッカイドーのおそらがどすん、とおちた。

 みんながぺしゃん。ぼろぼろ。

 がらがら。ぱらぱら。ぐしゃぐしゃ。

 道は がたがた、ゴロゴロ、ボコボコ、ごろんがろん。


 石も、人も、いぬも、ねこも。


 でどりゃでどりゃ、ドクドク、ポッキリ、グチャグチャ、ぺっしゃんこ、ふわふわ、メタメタ、えーんえーん、あーんあーん、ウギャアアアア、ヒイイイイイイ、ゔアアアアアアアアア……。


 おかあさんが ずっとでんわを かけてる。


 るるるるるるるる。


 オトウサン……あのおじさん、は。

 ホッカイドウにいたの?

 テレビのひとみたいに つぶれちゃったの?


 おかあさんがなきながら でんわをかけている。


 とぅるるるるるるるるる。


 みんなが。

 ウワアウワア、きゃあきゃあ、ひいひい、ガサゴソ、ドッタンバッタン、ひっちゃらかめちゃらか、ダダダダー。


「お義姉さん!」


 バターン! ドタドタ。おっきいお兄ちゃん、しんじくんがいえにきた。


「大丈夫! 兄貴、無事だから!」


 ああああああ〜。 おかあさんが、おおきなこえで なきだした。


「俺のスマホとつながった。……ああ、良かったよ、兄貴。兄貴が死んだら跡取り問題でまたミヨちゃんと喧嘩するところだったじゃん……えーと、じゃあユキマサくん、話すか?」


 おかあさんが うああああ、ないているから おにいさんは ぼくに すまほを わたした。


「ユキマサくん?」


 とくん。おじさんの声。


「オトウサンなあ、ちょうど地下にいて無事だったんだ。ごめんなあ、びっくりしただろう」


 ほっ。しゅわしゅわ。……ちょっとがっかり。


「すぐには帰れないけど、お土産に美味しいラーメン買ってかえるから」


 じんわり。ほこほこ。ちゅるちゅる。

 あちちち。ふうふう。……ちょっとがっかり。


「オトウサンが居ない間、おかあさんはユキマサくんが守ってあげるんだぞ」


 どきん。ふわんふわん。じいいん。ぐるぐる。がらんがらん。

 ぐわんぐわん。ぐるぐるぐるぐる。きゅうううううううううん。どきどきどきどきどきどきどきどき。

 かーっ。はわわわわわ。


「ユキマサくん?」


 どきん。びゅーん。ぐぐぐぐぐ。


「……おとうさん、はやく帰ってきてね」




 ……すとん。


 ぼくのなかの なにかが ぴったりと おちて はまった。







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