そうか、これが《原著 新吉さん》

『みんなァ、わかりましたかァ? せいぎマンとわるいマンがいましたねェ。みんなはどっちの子かなァ?』

「せいぎマン〜」

『そうだよねェ、みんないい子でおねえさん、よかったァ〜。わるいマンがなにか言ってきてもみんなはいい子のせいぎマンでいてねェ。じゃあ、今日はこれで終わりまあす。みなさん、さようなら〜』

「さようなら〜」





 わるいマンって なんだろう。


 ぼくはおかあさんと手をつないで あるきながら かんがえた。

 おかあさんの となりには おじさんが いる。このおじさんは さいきん、いつもぼくと おかあさんに ついてくる。


「ほら、くるまが とぎれた。はしろう」


 あかしんごうなのに、おじさんが おかあさんの てをとって はしりだした。


「くるまがいないのに まってるのは ばからしいからね」


 しんごうは あかだったのに。

 あおにならないと わたっちゃいけないのに。



 ――そうか、これが。






『てまを かけたらかけるだけ いいものができるからね。さいきんはなんでもべんりだけど、ズルを しちゃいかん』


 そういってたのは おじいちゃん。

 おしょうがつのねんがじょうに かたなで けずって いぬの はんがを つくってた。





「ホームベーカリーを かってきたよ。アイスクリームも おもちもなんでも できるんだよ。よるにざいりょうを いれたら ほうっておいたら あさには ほかほかの ぱんが できてるよ」


 おじさんが おかあさんに そういって ぱんやきき を わたした。


「ぱんを つくるのは じゅうろうどうだろ、な」





 ぼくは おかあさんと ぱんを つくるのがたのしかったのに。

 ふたりで こねて こねて たたいて わらって まるめて。

 これからも ずっと ぱんを いっしょに つくりたかったのに。



 ――そうか、これが。







「もう、おおきくなったんだから ひとりで おふとんで ねないとな……なに、おかあさんと いっしょに ねないと さむい?……わかった、じゃあでんきもうふを かってあげるよ。きみの すきな せいぎマンのもうふ。かっこいいやつ」




 いやだ おかあさんと これからも いっしょに ねたい。

 いままで ずっと ぼくが おかあさんとねてたのに。

 おじさんが おかあさんと ねたいから そんなことをいうんだ。

 ぼくから おかあさんを とろうと しているんでしょ。










『わるいマンは みんなの ちかくに いるよ。 たばこを みちに なげすてたり しんごうをむししたり いじわるしたり ちいさいこを なかせたり。そんなわるいマンを やっつけるのが せいぎマンだよ。みんな せいぎマンに なれるんだよ』








 ――そうか、これが。












 ぼくは だいどころの かたなをもって おかあさんと おじさんが ねているへやに はいった。






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