第29話 新居
私は、事情を話していない祖母と叔父夫婦を残して、両親と私だけで引っ越しした。元々人間としてネイさんが暮らしていた家で、事情をよくご存じの人が管理している。その人は、私たちに、遠い親戚同士だと教えてくれた。
ちなみに、ネイさんもこの家に移された。目は覚ましてないけど、呼吸器とか数字見るのとかいろいろ機械をつけなくても安定した状態を保っている。
大学に通うときにはボディガードの車でドアtoドア。寄り道なんか「保安上の理由」でほぼ却下。新しい家と大学を行き来するだけの日々。癒しは新しい家の空井さんの作るごはんと学食のスイーツだけかも。
厳重な警備っぷりに即怪しまれたから、大学や残してきた叔父たちには、マモルやカナデの知人だから、マスコミや二人のファンに狙われているということになっている。友だちがそれを信じてくれたので、政府関係者の尾行がへたくそだと友だちが発見してくれて、そいつらは逃げ帰る。
UFOはひと月経ってもたまに撃たれて軍事基地に報復する以外何もしてこない。ただ、あまりに数が多すぎて昼は気持ち悪い。ただ、月の表面を覆うように、何か人工物がじわじわ増えていることだけはすぐわかった。ちょっとした望遠鏡を向ければ、変色したような模様の月が見える。
そこには、『塔』もあった。遺跡で見たぼろぼろじゃない、表面まで磨き上げられたような、大きさもこれまでのどの『塔』よりも高くて太い。
あんなに離れているのに、胸の奥がほんのり熱くなる。間違いなく、同じ『塔』だ。月にいるあの変な人は、塔の仕組みとかどうやって知ったんだろう。何より、どうやって『管理者』を置いているんだろう。
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