死人花

作者 田所米子

83

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★★★ Excellent!!!

辺り一面紅に染まる彼岸花。
近くの民宿からでも小一時間かかる場所に彼岸花の群生地があるという。

群生地まで道案内をする傍ら、彼岸花について語り出す……。

そもそも彼岸花とはどんなものか、これから行く群生地にはどのようにして彼岸花が咲いたのか、と。

案内人の語り口調で進んで行くストーリーは、まるで案内人とともに読み手が群生地に案内されているかのように引き込まれていきます。
そして案内人のまとわりつくような語り口調に恐怖を覚え、ハッとした時にはもう……。


読み終えた頃には辺り一面紅の海になっていることでしょう。

★★★ Excellent!!!

彼岸花、というと不吉なものを想像させられますが、この物語はその想像力がかき立てられる妖しい魅力に満ちています。

かつて、この地で起こった陰惨な昔話。
それを観光客に語り聞かせるという形でストーリーが進むのですが、語り部である民宿の主人の口調が優しげでいて淡々としていて、どこか不安を誘うものとなっております。

伝えられた昔話と語り部の見解、どちらが正しいのか。

どちらであろうと紅の花の美しさには変わりなく、しかしかき立てられた想像が、狂い咲く花々に潜む妖しさを際立たせます。

その光景を思い浮かべてしまった胸に、紅の残像を残すような作品です。

★★ Very Good!!

 としか言いようがないですね、はい。
 女将が昔話を語るだけの短い物語ですが、キーワードや秀逸な表現が上手く散りばめられていて、読んでいるだけで容易く想像でき、ぞくぞくしてきます。実際にあったかもしれない、昔話として残っていそうなところがより怖い……。
 繰り返される表現が、特に秀逸ですね。それに、聞き手がこの後どうなったのか……想像を掻きたてられます。

 これ、ちょうど彼岸花が咲いている時期に読んだら、もっとぞくぞくしたでしょうなあ……読む時期間違えたかも。

★★★ Excellent!!!

怖く、残酷だけども、美しい景色に鳥肌が立つ。
とっても、好きです。(突然の告白)

この話は、案内役の人が彼岸花にまつわる昔話をするものです。
語り手から紡がれる言葉は、どこからが真で、どこまでが実話なのかが、わかりません。きっと、当時の当事者のみが、知っているのでしょう。
ですが、語り継がれる、その彼岸花———死人花は美しく、奇妙で、悲しい……。

「生きる」ということは、「人の業」とは、その艶やかな「紅」の秘密とは———
彼岸花の下には、何が埋まっているのでせう。

是非、案内役に導かれ、彼岸花の景色に魅了されてください。
読み進めるごとに、辺り一面に赤が咲き乱れます。

★★★ Excellent!!!

民宿の主人が観光客に昔話を語り聞かせる物語です。
彼岸花の群生地、美しいその花畑には、陰惨な伝承が残っています。
物語は民宿の主人の語りで進められていきますが、彼はどことなく楽しそう。
確かに彼の言うとおり。
伝承というのは誰かが伝えてきたことです。
語られているということは全滅したなんて嘘――かもしれないし、ひょっとしたら、本当かもしれない。
あるいは昔話が嘘か真かはどうでもいいことかもしれなくて、この彼岸花たちは「今」何を養分にして咲いているのか、がこの美しい話をホラーたらしめているのかも、などと考えてみたりしました。
そう、ここは田舎。都会のひとが来るなんてそうそうないことです。
そんな当たり前の地方のひとコマに華を添えるは彼岸花。
美しく悲しく、それでもきっとどこかにある物語だと思いました。

ところで、この作品の美しい情景を想像した時、私の頭には松井冬子の絵が浮かんだのです。
ああいった幽玄の空気を感じたい方は、ぜひ。

★★★ Excellent!!!

飢えがもたらす、陰惨な出来事。
この物語の主題は、語り部が伝えるその事実、あるいは虚飾ではなく、それが広がってゆく様にあると感じます。

時間の経過。意味を持ち、植えられていたはずの彼岸花は、時と共に別の意味を持つようになる。
それは作為か、自然の摂理か。

はじめ、誰かの手により、管理されていたはずのものが、いつしか際限なく、気づけば、はじめからそこにあるものへ。
その花の紅いことに、また別の理由を持たせて。

広がり、飲み込んで、時間が咲いてゆく。

★★★ Excellent!!!

桜の下には死体が埋まっている──梶井基次郎の短編小説の有名エピソードを引き合いに、読み手を深淵へと誘うホラー作品。

短い文字数の中に散りばめられた、生への執着と死への畏怖。
喰らふと云う欲望の根源を曝け出し、恐怖とは何かという根本を問う。

人は。
屍を埋めて業を作り、屍を積み上げて楼閣を建てる。

怪談が、怪談へと成り得るその行程を見たように思います。