血海を思わせる、夥しい紅花に眠る罪

彼岸花、というと不吉なものを想像させられますが、この物語はその想像力がかき立てられる妖しい魅力に満ちています。

かつて、この地で起こった陰惨な昔話。
それを観光客に語り聞かせるという形でストーリーが進むのですが、語り部である民宿の主人の口調が優しげでいて淡々としていて、どこか不安を誘うものとなっております。

伝えられた昔話と語り部の見解、どちらが正しいのか。

どちらであろうと紅の花の美しさには変わりなく、しかしかき立てられた想像が、狂い咲く花々に潜む妖しさを際立たせます。

その光景を思い浮かべてしまった胸に、紅の残像を残すような作品です。

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