その心理係、真実を求め……ない?


殺害事件には必ず殺した犯人がいる。
事件の真相を暴き、悪しき犯人を捉えるのが正義なのだとしたら…このとある心理係の女性が関わる四篇は果たして正義の物語と呼べるのだろうか?

科捜研の文書鑑定科・心理係に属するアラサー干物女の忠岡悲呂はその道のエキスパートであり、進展の行き詰まった事件の解決に一役買う訳だが……。

法の下に裁かれるべき悪は彼女の利害によって断される。

そう、例え、犯人で無くとも犯人に、犯人であろうが彼女の安寧が脅かされるなら……それは犯人では無くなるのだ。

勿論、彼女は有能な心理系。容疑者達の心の内を探るべく、事件の進展には大きく貢献していきますが……。

彼女の腹黒さは悪しき犯人の悪意すら凌駕する黒い正義で事件を深淵へと飲み込んでしまう。そんなアンチミステリーとも言える科捜研ドラマです。

捜査手順や用語類もきちっと下調べをされていて詳しく書かれている点やコンパクトに纏められる技量は流石織田先生です!

冤罪や闇に葬られた真相により、不幸を負った人々のその後は気になりますが、それでこそ彼女の腹黒さが際立つのでしょう。

物事には優先順位があり、それを職務基準にするのか、自分にするのか……ただそれだけの事なのです。それだけの。

救われてる様で救われて無い異色のキャラミスをお楽しみ下さい。

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