「第三幕 扉は開かれたまま」までの感想となります。
科捜研が舞台ということで、真っ先に思い浮かぶのはかの某テレビドラマでしょうか。しかしこちらはキャラミスと銘打っているだけあって、とんでもなく濃ゆ~~いキャラが目白押しです。
そんな彼ら彼女らのやり取りを眺めているだけでも十二分に楽しいのですが、今までも数々のシリーズや短編でミステリのコードスレスレの超絶アクロバットを連発してきた作者様のこと、今作では驚異的どんでん返しは控え目にしつつ、しっかりミステリの骨格は備えてあります。むしろ真相すら捏造? してしまう心理係の暗黒面に、さる無謬の銘探偵の姿を重ね合わせて、より楽しむことができました。
現在三つのエピソードが公開中ですが、今後も新キャラや新たな展開で我々の度肝を抜いてくれることを期待しております……!
通常のミステリーでは犯人は誰だ、と読み進めていきますが、本作はすでに犯人となる人物が読者に提示され、その証拠を次々と明かしていく流れとなっています。昔ドラマでやっていた古畑任三郎みたいな感じですかね。このドラマでも一癖ある登場人物がいますが、この作品にはその何倍もの癖と人物が登場します。そりゃあもう「この部署大丈夫か?」と心配になるくらいに(笑)
しかし、それで終わらせないのが作者の凄さ。徐々に犯人を追い詰めていき、その過程はどこを拾っても納得せざるを得ない。でも、最後に迎える結末には誰もが圧巻されるでしょう。なにせ……おっとこれ以上は言えませんね。
個人的な意見としては、読み終えれば「おぃぃぃ!」とツッコミしてしまう、そんな物語です。
作者さまの『どちらかが彼を◯した』(富士見L文庫刊『飯テロ 真夜中に読めない20人の美味しい物語』収録)に登場した忠岡悲呂さんが再登場した別ドラマ。
『どちらかが彼を◯した』と合わせて読むのをおすすめします。
本作は、忠岡悲呂さんはもちろん、科捜研で働く濃いキャラクターたちがたくさん登場します。
それぞれ出番は少しだけなのですが、そのちょっとの出番だけでも、キャラクターの魅力が伝わり、それぞれスピンオフ作品が出来そうなぐらい強烈な印象を残しています。
また、ミステリー要素では、衝撃のラストに震え上がります。
このどんでん返し、騙されること間違いなしっ!
ヒントはしっかりと本文中に登場しているので、謎を探りながら読むのも良いです。
キャラクター小説、ミステリー小説、そして刑事物。
そのすべてを取り入れたエンターテイメント小説!!
とても面白かったですっ♪
殺人事件が起こり、現場に残っていた残留物から証拠を見付けて犯人へと辿り着く。現代社会における捜査では最早当たり前となっている光景と言えるでしょう。
今回の物語でも同様に殺人事件が起こり、現場に残っていた残留物を回収し、様々な科を巡り巡っていくのですが……残留物が解明されていくに連れて犯人象が徐々にズレていく光景に首を傾げ、しかし証拠だからコレが正しいのかと思い返したり。
しかし、実は………衝撃の事実は読者様の目で確認してくださいませ。ヒントは私の書いた一言紹介でございます。
そして登場人物が相変わらず濃い(笑) 個性で殴り合っていると言っても過言ではありません(褒め言葉です)
しかし、その個性の豊かさの裏には……黒い一物を抱えている人が居るやもしれません。
前作、「どちらかが彼を◯した」を拝読したときに、これは絶対に面白い! と興奮して拙いながらもレビューを書かせていただいたのです。もちろん、その物語は書籍化されました。
そして、その前作に登場した主人公である、忠岡悲呂が再び今作に。
人が創作するとき、ややもすると作者のご都合主義が入り、「なーんだ」と思われることがあるかと思います。今作をご覧になってください。その概念が見事に霧消します。
物語は殺人犯を捕縛した、徳憲警部補が一応メインなのですが、そこへ科捜研の忠岡女史が絡んできて思わぬ展開になっていくという流れです。
とにかく徹底した取材に裏付けされた、リアリティあふれる文章が際立っています。それも読み手に気づかせずにあらゆるシーンに散りばめられています。
さらに一筋縄ではいかぬ科捜研の面々が、絡んできて読み手をどんどん引き込んでいきます。
驚愕のラストに、良い意味で読み手は裏切られます。こんな終結を、誰が予測するでしょう。
計算され尽くした物語であり、ともかく面白いのです。
これがリアリティだと思います。ぜひご覧になってください。後悔はさせません。
科捜研の専門用語や知識が淀みなく溢れ、その魅力に圧倒されます。
私も生まれ変わったら死ぬほど勉強して、化学科で分析したいって思いました(笑)
そして、個性的なキャラクターたちが本当に楽しい!
イキイキとそこに存在していて、私たちを推理の世界に招いてくれます。
ラスト、人の心とは…と考えさせられます。私たちが信じていたもの、揺るがないと思っていたことが覆される瞬間に立ちあえます。
カクヨム・ミステリージャンルでは知らない人はいないと思われる、こちらの作家さん。
下調べを怠らない情報の数々、研ぎ澄まされた文章、優れたテクニック、読んで損はありません。
どうぞ、どっぷりと心理係の術中にはまってみませんか。
カクヨム屈指のミステリ作家として知る人ぞ知る作者さんが描く、キャラ文芸系作品(おそらく新シリーズ?)です。
キャラ重視の作品ゆえか現代ドラマジャンルではありますが、物語全体を構成する読み味は基本的にミステリのそれ。推理ドラマや警察小説がお好きな方であれば、申し分なく楽しめる内容かと。
新作で特筆すべき点は、やはり登場キャラクターの良い意味で際立った「濃さ」でしょうか。
導入から2万7000字強でストーリーが一区切り付くまでのあいだに、科捜研の関係者だけでも主人公を含めて7人もの人物が登場するのですが、これがまたどいつもこいつも一癖ある人間ばかり。
これだけいっぺんに沢山の人物が出てくると、普通はなかなか覚え切れないものですが、そのハードルを圧倒的なキャラ性のインパクトでクリアしているのはさすが。
一度読んだら忘れられそうもない奴等を、よくぞこれだけ揃えたものだと素直に感心させられてしまいました。
殺害事件には必ず殺した犯人がいる。
事件の真相を暴き、悪しき犯人を捉えるのが正義なのだとしたら…このとある心理係の女性が関わる四篇は果たして正義の物語と呼べるのだろうか?
科捜研の文書鑑定科・心理係に属するアラサー干物女の忠岡悲呂はその道のエキスパートであり、進展の行き詰まった事件の解決に一役買う訳だが……。
法の下に裁かれるべき悪は彼女の利害によって断される。
そう、例え、犯人で無くとも犯人に、犯人であろうが彼女の安寧が脅かされるなら……それは犯人では無くなるのだ。
勿論、彼女は有能な心理系。容疑者達の心の内を探るべく、事件の進展には大きく貢献していきますが……。
彼女の腹黒さは悪しき犯人の悪意すら凌駕する黒い正義で事件を深淵へと飲み込んでしまう。そんなアンチミステリーとも言える科捜研ドラマです。
捜査手順や用語類もきちっと下調べをされていて詳しく書かれている点やコンパクトに纏められる技量は流石織田先生です!
冤罪や闇に葬られた真相により、不幸を負った人々のその後は気になりますが、それでこそ彼女の腹黒さが際立つのでしょう。
物事には優先順位があり、それを職務基準にするのか、自分にするのか……ただそれだけの事なのです。それだけの。
救われてる様で救われて無い異色のキャラミスをお楽しみ下さい。
志半ば。貞淑な女性の殺人事件に浮かび上がる、欲望惷く好色な容疑者。
犯人は決まり。絶対にコイツ。
掟、法、世の中の決まり事に背くものへの厳しい罰を憲として進むストーリー――しかし。
愉しげで、悦びに満ちていて、怖れを抱かせ、怯むことを知らない、怒気も毒気も肩すかしを喰らう――そんな心理係の前では、慫慂のままに望まぬ結末であろうとも、受け入れさせられてしまう。
心とは、こんなにも不確かで、不安定なものだったか?
下心、いや、心の真ん中にあるもの、それは何だ?
悲しみか?
己の中に在る志か?
この心の隅に居着き、腹の底にわだかまる黒い結晶を何としよう?――そう、惑った時点で、この作品の術中である。
正解? カタルシス? それこそ、心の数だけあるのだ。
富士見L文庫より刊行されるアンソロジー短編集『飯テロ 真夜中に読めない20人の美味しい物語』。それに収録される『どちらかが彼を〇した』より端を発した、クライム・ノベル。
まるで、黒曜石が如き煌めきのカクヨムミステリー。そう、――蠱惑的な宝石のように愛でるべきだ。
富士見L文庫刊『飯テロ 真夜中に読めない20人の美味しい物語』に収録される『どちらかが彼を〇した』のずぼら系ヒロイン(ただし中身はダーク)の忠岡悲呂さんが再び登場です。
今回も徳憲警部がヒロさんの手のひらの上で転がされております。本当にもう、コロコロに(笑) ヒロさんが胡散臭すぎます。まあ、ずぼらだからお風呂にずっと入っていなくて別の意味でくさ……うわっ何するやめry
ヒロさんはずぼらだけど可愛いヒロインです。きっと髪の毛をかいだらいい匂いがするはずです(^ω^)
冗談(?)は置いておいて……。
ずぼらで腹黒いヒロインもとても魅力的なのですが、今回は「こんなキャラが本当にいたら我が国の科捜研はヤバすぎる……!」とドン引きしそうな濃ゆいキャラクターたちも物語を賑やかしてくれています。
特に、常時欲情している愉悦ペアの二人がこれ以上活躍しちゃうと、この小説が18禁になってしまうかも知れません。あだ名が「エッチ休憩」とかふざけてるのか!?
……さすがは濃ゆいキャラクター(変態とも言う)を生き生きと描くことに定評のある織田さんです。さす織田……。
こんな感じでキャラの濃ゆさを全面に押し出してくれているおかげで、捜査パートではいっさい「飽き」や「中だるみ」みたいなものを感じないのは織田さんの別作品『よくある兄妹』シリーズでも同じです。
そして、織田さんの作品といったら「心理学」。
今回も人間の心理が捜査を左右してしまうわけなのですが……。
一番恐いのは、凶悪犯や腹黒いヒロさんではなく(もちろん両者とも十分恐いけど笑)、人間の心の脆さだなぁ……と思いました。
私が作中のどのあたりを読んでそう感じたのかはネタバレになるので言えませんが、読み終えたみなさんもきっと人間の心がいかに頼りないかを知って身震いするでしょう。
今回の「心理学」を用いたストーリーは、織田さんの過去作の中でもかなり説得力があって洗練されているのではと個人的に思います。
織田さんが鍛えに鍛えた「心理学」の刃が、読者のハートを襲う! けっこうダイレクトに!
最後の最後まで油断ができない、腹黒いヒロインと事件の捜査をあなたも存分に味わい、ラストで震えてください!! おススメです!!