戦慄け、この黒い結末に・・・・・・!

 志半ば。貞淑な女性の殺人事件に浮かび上がる、欲望惷く好色な容疑者。

 犯人は決まり。絶対にコイツ。
 掟、法、世の中の決まり事に背くものへの厳しい罰を憲として進むストーリー――しかし。

 愉しげで、悦びに満ちていて、怖れを抱かせ、怯むことを知らない、怒気も毒気も肩すかしを喰らう――そんな心理係の前では、慫慂のままに望まぬ結末であろうとも、受け入れさせられてしまう。

 心とは、こんなにも不確かで、不安定なものだったか?
 下心、いや、心の真ん中にあるもの、それは何だ?
 悲しみか?
 己の中に在る志か?

 この心の隅に居着き、腹の底にわだかまる黒い結晶を何としよう?――そう、惑った時点で、この作品の術中である。
 正解? カタルシス? それこそ、心の数だけあるのだ。

 富士見L文庫より刊行されるアンソロジー短編集『飯テロ 真夜中に読めない20人の美味しい物語』。それに収録される『どちらかが彼を〇した』より端を発した、クライム・ノベル。
 まるで、黒曜石が如き煌めきのカクヨムミステリー。そう、――蠱惑的な宝石のように愛でるべきだ。

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