精霊物語り/#精霊物語り

作者 真野てん

65

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★★★ Excellent!!!

200年もの長い間「救国の魔道士」として活躍をしてきたメイルゥが、任を解かれて新天地で生きていく、その道程の物語。

メイルゥと、新天地に向かう列車の中で出会った青年フレッドとの恋模様に着目する読み方もありますが、私が特に注目したのは、この作品に込められたある種の皮肉……風刺のような部分でした。

ネタバレ回避のためどういう部分かというのは伏せますが、M.エンデの『モモ』が好きな人には特に感じるものがある作品です。
もちろん『モモ』みたいに長い作品、読んでられないよ!っていう方にもお勧め。

「時代と戦う」
この意味がずしんと心に響く名作です。

★★★ Excellent!!!


魔女、精霊石、蒸気機関車、狼男に黒い猫。
ファンタジーとしてオーソドックスな内容を含ませつつ、揺蕩う時代の移り変わりをしっとりと書き上げた挑戦的なノストラジックロマンファンタジー。

全体的にゆったりと流れていく物語の中で、時折スパイスとして非情なダークマターを生地に混ぜ込んでくる真野てんさんのやや焦げた手作りクッキーと言ったところでしょうか。(←何を言っている?)

二百年という時の中、魔女のメィルゥは彼方の時の中で交わした人々の約束や思いを継ぎ、時代を次へと引き渡した。自由の身になった彼女は自分が何を守り続け、そして何が変わっていくのかを見届ける為に世界を巡る。

その先で彼女が出した答えとは?
どうしようも無く愚かでそして愛すべき人間。

彼等は防国の英雄の目に何を映し出すのか。

魔女とは?魔法とは?世界とはなんだ?
ちょっぴり不意にダークです。

ネタバレしないように私が語れるのはここまでです。
精霊物語れないです。

婆を語りつくしているのは間違いありませんが。

★★★ Excellent!!!

※この作品は、タグにある通り、最近跋扈しているテンプレとは、全く違うものとなっていますので、序盤で脱落してしまうかもしれません。ですが、この作品は、読めば読むほどグイグイ読ませてきます!積ん読に回している方、そもそもこの作品を知らない方、今すぐこの作品を読むんだ!めちゃくちゃ面白いぞ!

★★★ Excellent!!!

真野てん渾身のハイファンタジー。
文明の原動力が胡散臭い魔法から計算と技術である科学に移り変わる時代。それに飲み込まれようとし、また抗おうとする人々の姿を悠久の時を生きる魔女メイルゥの視点から語るというスタイル。
敵は時代とあるが、時代と戦っているのは同時代の人々、イコールメイルゥ以外の人物全員。その姿は現代に生きる我々の姿と重ねることが出来る。だから異世界ものなのに妙に親近感が登場人物たちにわくであろう。
派手な戦闘シーンとかもあるが、この物語の一番の売りはやはり時代に翻弄される人々の群像であろう。読者よ、身構えて読むべし。さもなくば中盤、作者に殺意が沸くであろう(なぞ)。

★★★ Excellent!!!

 世界は魔法至上の旧時代から、蒸気機関隆盛の新時代へと移り変わっていた。

 物語は、国の魔導士として200年もの長きに渡り、たった一人で国を護った魔女メイルゥが、他国の圧力に依ってその任を解かれ、列車で王宮を離れるところから始まる。
 魔法を駆使して国を護った彼女が、新時代の象徴である列車に乗って都落ちするというのもいかにも皮肉な話である。
 しかし奇妙なことに、200年の間、魔導士として国の中枢で辣腕を振るっていたというのに、列車に揺られるメイルゥは、どう見ても十五、六歳の愛らしい少女にしか見えなかった。

 この冒頭だけでもワクワクする要素が満載なのに、読み進める度にワクワクが二倍、三倍、いや、二乗、三乗に膨れ上がるのだから、始末が悪い。
 それは、心地よい文章であり、心躍る設定であり、愛すべきキャラクターであり、心揺さぶるストーリーであり、それら全ての要素が絶妙のバランスで組み合わさった相乗効果の賜物である。
 そのクオリティの高さは、流石に作者氏をして、数年かけて構想を練り上げたということだけはある作品だ。

 もし、貴兄が本作を未読ならば、冒頭からラストまで読む手が止まらず一気読みしてしまうことだろう。
 そして、読み終えた後こう言わずにはいられないに違いない。

 もっと、続きを!

 それは、この作品を読了した者が等しく口にする言葉であり、当然、私も同じ台詞を口にした一人である。

 願わくば、続編を期待したい。
 そう思わずにはいられない作品である。

★★★ Excellent!!!

強大な魔王も、大空を舞うドラゴンも出てこない異世界ファンタジー。
なのに、ここまで読ませる世界観がとてつもなく素敵です。

時代背景は、産業革命期をモチーフとした、魔法から科学への過渡期。
偽りの魔法は廃れる一方で、蒸気機関を始めとした技術が世界を動かしていきます。
主人公となるメイルゥは、200年もの間、一国を一人で守り抜いた大魔導師ですが、魔法主流の時代が終わりを告げると共に、ようやく一人の人間として人生をリスタートさせます。
そんな彼女の目を通して描かれる世界は、時に残酷で、時に物悲しい。
特に、時代の変化についていけない人々の悲惨さは、読んでいて気が沈みそうになります。
けれど、全体を通してそう感じさせないのは、メイルゥの人柄が理由なのだと思います。
口で言うことは厳しいのだけれど、心の奥にはちゃんと愛情がある。
子供を無条件に甘やかさず、転んだ我が子が自力で立つまで、黙って見守る母親のような優しさを持っています。
そんな彼女だから、自然と人に慕われ、人が集まってくるのでしょう。
そんな彼女と共に、この独特な世界を歩いてみるのはいかがでしょうか。
きっと新しい発見があるはずです。

★★★ Excellent!!!

魔法の時代から近代化が進む蒸気の時代への転換期。
200年もの間国を守っていた魔道士メイルゥは旅に出る――

ルツの濃度で年齢――外見が変わってしまうメイルゥの細かな描写は胸に刺さり、世界の変わりように驚く姿は共感できます。
そんな彼女も常に強気な口調であらゆる人物と接し、逞しく生きている一面も見ることができました。

他の登場人物も個性的な人物ばかり。
浮浪児からメイルゥのかけがえのない存在となるサラや小説家のエドガー、もふもふな人狼卿ルヴァンなどなど。
そして、タイトルの通り「精霊」もしっかり登場します。

もちろん、メイルゥによるアクションも満載で飽きさせないつくりになっています。
各章五話構成で綺麗にまとめられていますので、ぜひご一読ください。

★★★ Excellent!!!

 魔法って、いつか解けてしまうもの。
 シンデレラの魔法は12時になったら解けてしまう。

 私たちは、子どもから大人になる過程で、世界中の不思議を説明できるようになってしまう。つまり、魔法が解けてしまう。
 魔法がいつか解けてしまうものだから、魔法にかけられている間はワクワクする特別なひとときです。だから、魔法が解けてしまうのは、なんだかとても寂しいですよね。

 この精霊物語りも、そんな魔法が解けてしまう物語りなのかもしれません。
 魔法の時代から、科学の時代へと移り変わる時代。200年もの間、国を守り続けた偉大なる魔術師も、過去の存在になってしまう。それだけで、魔法にワクワクしていた――あるいは、まだ魔法にワクワクする人は、切なくなってしまうのではないでしょうか。
 これは、そういう物語り。

 偉大なる魔術師メイルゥが、受け入れていく世界の流れの中に、私たちは大切なものを見つけられるかもしれません。
 ぜひご一読を。

★★★ Excellent!!!

個人は単体で生きてるわけではありません。
家族があり地域があり国があり、この世界がある。
キャラクターと世界。一点と無限大は常にリンクしています。
その繋がりを行き来しながらサラリと読ませることが書くことの醍醐味かもしれません。

この物語は魔法の時代から科学の時代への移行期。近代産業の黎明期です。
国は混乱のただ中。拡大する産業の労働に駆り出される子供達。流入してくる移民者。チンピラの縄張り争い。ハチの巣をつついたような様相。

主人公は二百年ものあいだ魔法の力で弱小国を外敵から守ってきた魔導士。
国の英雄です。
隣国との和平によりお役御免となった彼女が、王宮を出て旅に出るところから話が始まります。

精霊石によってもたらされるルツの濃度で変化する彼女。時には少女に時には老婆に。ただ話っぷりはいつも姉御口調(笑)
高慢さはかけらもなく、自分が守ってきた国を大切に思っている一人の人間として描かれます。

出会う人物たちもとても魅力的です。
重要な役どころは、孤児でありながら好奇心旺盛でとても賢い子供。
この物語のワトソン役の小説家。狼の顔をした人狼卿。誠実な青年車掌。

夜の闇を切って進む蒸気機関車。人里離れた作家の家。廃墟となった図書館。
九龍城砦を思わせる雑多な街。
どこかノスタルジーを覚えさせる国で、過去の英雄が今の時代を生きる。

変わりゆく時代のなかで、彼女がどう変わり何を変えていくのか。
堅実でありながら軽やかな筆致と、抜群の構成力を持つ作者の作品。
今後の展開が楽しみな作品です。

★★★ Excellent!!!

このお話は魔道士として200年国を守ってきたメイルゥが、お役御免となり在野にくだり旅をする話です。

読んでみて驚いたのが、圧倒的文章力と重厚な世界観、そして魅力的なキャラクターたちです。隙がありません。
特に目を引くのが重厚な世界観。
戦争の同盟国から技術や単位が流入し、精霊石採掘の産業が興り、時代はまさに混乱期。
そのひずみは当然のように現れます。難民同然の外国人に、戦争孤児、ゴロツキに浮浪児、鉱山からの虐待から逃れてきた子供たち。
その苦境にあえぐ人々を正面から書き切っている様に感銘を受けました。

またキャラクターも魅力的です。
主人公のメイルゥは、魔力(ルツ)の濃度によって若返ったり、年老いたりする性質の持ち主。若いときは妖艶な美女で、美貌の迫力にごくりと喉が鳴りますし、おばあちゃんの姿になるとおもわず手を差し伸べたくなるほど可愛いです。
名前のないキャラも生き生きとして、物語を読む手が止まりませんでした。

今このレビューを書いている時点では第五話まで発表されています。
ハイファンタジー好きの方、ぜひ本作を読んで、時代の過渡期を一緒に見届けましょう!