ホラーというと、単に怖さを追及した作品が多いのですが、この作品はそれだけではありません。
この小説には、さまざまな個性的な人物が登場します。
登場人物は個性的ではありますが、私たちにも共感できる部分がたくさんあると思います。
だからといって、恐怖的な要素が薄まっているかというとそうではなく、
私たちの日常にも、そういう恐ろしいことが起こるのではないかという、身近な恐怖を感じてしまいます。
怖いながらも読み進めるごとに物語に引き込まれてしまう、そういう魅力がこの小説にはあると思います。
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この物語のなかでは、呪物というものが中心となっていますので、私はこの呪物を意識しながら読み進めていたのですが、
この呪物がどう絡み合っていくのかとてもハラハラしながら最後まで面白く読むことができました。
亡霊が生み出した曰く付きの品『呪物』を巡る群像劇から、物語はスタートします。
一つ一つの呪物がそれに関わる者達を大きく翻弄する、オムニバス形式で綴られる物語はどれもぞっとするほど恐ろしく、自分の身近にあるものももしかしたら……と考えて、トイレに行くどころか身動きするのも怖くなってしまいました。
しかし、恐怖は呪物単体に留まりません。
これらの群像劇は物語の前夜祭にすぎず、全てのエピソードが一つに収束するのです。
後半はもう、先の見えない恐怖、亡者に襲われる恐怖、欲望に囚われた人間の恐怖と、様々な恐怖のオンパレード!
一話読むたびに心が削られ、もしや自分自身も『読む』という行為で呪物に触れてしまったのではないかと、本気で震えました。
けれどこの作品の素晴らしい点は、ただ怖いばかりではなく、その恐怖の裏に潜む悲しみや弱さについて触れられていること。
恐ろしいだけの存在であった亡者達も元は自分と同じ、いやそれ以上に傷つきやすく繊細な心を持つ『生者』だったのだと気付かされた時は、不覚にも涙が零れそうになりました。
呪物に導かれた者、そして呪物が導く先には何が待ち受けているのか?
ホラー好きな方もそうでない方も、まずは一話を開いてみて下さい。
呪物に魅入られるかの如く、止まらなくなりますよ!
スクリーンの幕が上がる。すると、そこに広がるのは毒々しいまでに赤く染まった夕空。視線を落とせば、どこででも見かける平凡な街並みが、今にも闇に呑み込まれそうに沈み、佇んでいる。
たとえば、そんな印象的なシーンではじまる映画を見るような気持ちで、読者は作品世界に誘われていきます。
自分の隣にもいそうな普通の人たちが、『呪物』を手にしたことによって、ある日突然放り込まれる生と死の狭間。死に引きずりこまれるか、生をつかみ取れるか。いくら抵抗しても、読者は当たり前のように彼らの恐怖に自分を重ねてしまう。
前半は、さながら壁に浮き出た染みのごとく。黒く不吉なそれが少しずつ人の形になっていく様を無理やり見せつけられるような、恐怖を味わえます。そう、ジワジワと迫りくる恐怖です。
対する後半は、迫りくるものに追いかけられるドキドキ系の恐怖。
ひと粒で二度美味しい!
けれど、不思議ですね。登場人物たちには悪人もいますが、それぞれが自分なりに生きる意味を、目的を、自身に問い直し、見つけようとあがき、しがみつく姿に、私は人間の強さを感じています。読み手にそう思わせるところに、このホラー作品の厚みがあると思うのです。
しかし──一度読んだら忘れられなくなるこの作品こそ『呪物』かもしれませんよ。
私はあまりホラーやオカルトに興味のない人間です。
幽霊や怨霊なんて実体のないものより、生きた人間の方がよほど怖いと思うから。
お話はオムニバス形式で進行します。
『呪物』という、恐ろしい力を宿したアイテムを手にする登場人物たち。
それぞれ、劣等感や虚栄心、抱えきれない欲望など心の闇に端を発して、呪物の力に取り込まれるように人生を狂わされていきます。
すぐに、夜遅くに読み始めたことを後悔しました。
怖すぎる。
目に視える風景だけでなく、匂いや音など五感に訴えかける心理描写が巧みで、作中の現象がまるで我が身に起きたことであるかのように感じました。
特に『ガラパゴス携帯』の話は背筋が凍るほど恐ろしく、その後うまく寝られなくなったほどです。
オムニバスで綴られるエピソードは、それぞれに関連性があります。
前編で登場した『呪物』の虜となった人々が後編にて一堂に会し、張り巡らされた伏線が回収されていく様は圧巻でした。
幾重にも重なった人々の業が一挙に浄化されるラスト。思わず感嘆の溜め息が漏れました。
最後まで読み通して、思うのです。
やはり、生きた人間が一番怖い、と。
もっと言えば、生きた人間の心の闇が生み出した、生者を亡者に堕としてしまうほどの念が、恐ろしいのだと。
大変面白かったです。
心が弱った瞬間など、怪しげなものを拾わないように気を付けようと思いました。
今まであまりホラー小説という物を読んだことがなく、読んでも「不思議だな」や血みどろでおぞましい、とは思っても、「怖い」と思うことがなかったのですが、この作品で、「ああ、文字が怖い」という体験をしました。
空白も怖いんですよ。薄気味悪いっていうか、忍び寄る恐怖と言いますか……。
前半に次々と語られていくエピソード。多くを書き込んでいないだけに、薄ら寒い感じがします。それが怖い。
様々な弱さを持つ登場人物たち。次第に、彼らの一つ一つのエピソードが重なり合うのに気づいて……。
始めは例の有名な「本当にあった」的な印象で進みます。でも「ああ、いいところでっ」で、プツンっと終わってしまう。後半にかけては、ドラマというより、映画を見ているような加速させる熱さがある。
ただ「怖い」だけでは終わらせない、エンターテインメントある作品です。
ちょっと気になるなーと思い、読み始めた瞬間引き込まれました。
最初は『呪物』というテーマに沿ったオムニバス小説だと思ったのですが、ちょっとずつ繋がりが見えてきたと思った瞬間、全体図が広がり衝撃を受けました。
各物語ごとに、いろんな人物の人生や価値観、立場が文章を辿って伝わってきます。その人物の思考に引き込まれ、実際に自分がその瞬間に立ち会ってるような緊迫感を味わえるのが、とても好きです。
あまり好感が持てない人物が描かれていても、その人物に引き込まれているせいか不快感が感じられません。
また、全ての人物の個性がはっきりしているのに、全員が集まっても衝突せず物語に調和されているのがすごいと思います。どういった展開になるのが予想がつかないのに、各人物の結末を見ると納得してしまいますね。
数話読んだ後、一気に読むのが勿体無くて少しずつ読んでいたのですが、結局最後まで見てしまいました……
今となってはもっと早くこの小説に出会えなかったのが惜しいぐらいです。
次の更新が待ち遠しいです。物語の最後まで付いていきます!
コワ面白い!!
前半は、「呪物」を手にした一人一人の恐怖短編集で、
後半はそれぞれが折り重なる群像劇となっています。
人間の狂気、怨念、からの恐怖現象……
「物」にそういった念が宿る、という設定も日本人にはなじみ深く重みがありました。
それぞれのキャラクターも生きた血が通っていて、それぞれに人生があって、それがまたリアリティや奥行きをもたらしていると思います。
また、「公園」という場所がキーになるのも面白いですね。
「呪物公園」特設サイトも拝見しましたが、地図とか写真とかあって雰囲気が増し増しでした><
個人的に一番キタのが、繰り返される夕暮れ時のアレですね。なんだか異様で、夢に見てしまいそうで……。
感性に響いてくるものがありました。
深夜に読んだのでトイレ行けなくて困りました。
トイレ行ってから読み始めることを強くオススメします。
短編連作のような形で始まる、この話。
不思議な、そしてもちろん恐ろしい能力を秘めた「呪物」が、それぞれの作品のテーマです。
「霊に触れられる軍手」や「呪いのメールを送ってくるガラケー」など、怪談話としても魅力的な小物があれこれ登場します。
このアイテムも楽しいのですけども、話が本気で動き出すのは、二部構成の後半です。
読み始めた方は、ぜひこの後半までは辿り着いて欲しい。
緻密に構成され、全ての話が有機的に繋がっていく様が、何より圧巻なのです。
最初はバラバラだった登場人物たちが、やがて一つの主題に引かれて集結していく。
そう、それが「呪物公園」です。
日本的でオーソドックスなホラーを、巧みな構成で描き切った力作、ホラーファンなら見逃せませんよ!
読了し、最後まで本当に素晴らしかったです。ホラーという枠を超えて、見事な作品です。
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(1月2日、レビュー。三十二話まで読了)。
物語の全貌がほぼ明らかになり、緻密な設定と作者の想像力には驚かされるばかりです。この面白さときたら…!
ぜひ一緒に最後まで追いかけましょう!! と他の読者さんに呼びかけたくなる作品です。
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(最初のレビュー)
タイトルが秀逸でインパクトがあるので、ひとこと紹介もあえて「呪物公園」で。
オムニバスですが、各話、登場人物やストーリーの書き分けが見事。内容は自然と頭に入ってくると思います。じんわり恐かったり、ハラハラドキドキしたり、内容は多彩。アイディアの面白さだけでなく、心理描写の巧みさが特徴。
読み終わってからレビューと思っていましたが、おそらくあと4万字くらいありそうなのと、結末どうなるのかな?と待つ楽しみもある作品だと思うので、この段階でのレビューとしました。結末がどうであれ、ここまでで十分☆三つと思いました。