呪物に囚われたが最後。夕焼け色に染まる世界から、きっと逃げ出せなくなる

私はあまりホラーやオカルトに興味のない人間です。
幽霊や怨霊なんて実体のないものより、生きた人間の方がよほど怖いと思うから。

お話はオムニバス形式で進行します。
『呪物』という、恐ろしい力を宿したアイテムを手にする登場人物たち。
それぞれ、劣等感や虚栄心、抱えきれない欲望など心の闇に端を発して、呪物の力に取り込まれるように人生を狂わされていきます。

すぐに、夜遅くに読み始めたことを後悔しました。
怖すぎる。
目に視える風景だけでなく、匂いや音など五感に訴えかける心理描写が巧みで、作中の現象がまるで我が身に起きたことであるかのように感じました。
特に『ガラパゴス携帯』の話は背筋が凍るほど恐ろしく、その後うまく寝られなくなったほどです。

オムニバスで綴られるエピソードは、それぞれに関連性があります。
前編で登場した『呪物』の虜となった人々が後編にて一堂に会し、張り巡らされた伏線が回収されていく様は圧巻でした。
幾重にも重なった人々の業が一挙に浄化されるラスト。思わず感嘆の溜め息が漏れました。

最後まで読み通して、思うのです。
やはり、生きた人間が一番怖い、と。
もっと言えば、生きた人間の心の闇が生み出した、生者を亡者に堕としてしまうほどの念が、恐ろしいのだと。

大変面白かったです。
心が弱った瞬間など、怪しげなものを拾わないように気を付けようと思いました。

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