本作はカクヨムコンテスト10ホラー特別賞受賞作。それにふさわしい舞台演出と展開技術は一級品です。
幽霊が見えるネコ・パルメザン。その気になれば幽霊を味方につけ、人間を●すこともできるサイコパス・キャットが本編の主人公。パルメザンは普通じゃない。人間の話を理解できる危険なネコ。そう思わせるこの強烈なキャラが読者の心を惹きつけて止まないでしょう。
パルメザンは飼い主をはじめ、周囲の人間とも幽霊とも話すことが出来ません。言葉を理解することはできますが、意思疎通はできない設定なのに、何だろう……さっきから感じるこの不気味さは。
「半透明な存在」や「呪い」といった得体の知れない舞台演出がサイレントかつゴーストライク。さらに町全体が正体不明の浮遊感に覆われている気味の悪さを醸成し、交通事故や自殺といった不穏感で何倍にも増幅されていて怖いくらい巧いです。
そんな中、女の子の幽霊・ミズナに話しかけられ、会話ができることを知ったパルメザン。彼女はパルメザンとともに立ちはだかる謎を追いかける展開は、ホラーを一層引き立てつつ、バディとしての同盟感をもあわせた魅力にあふれています。
か弱き存在……
ことばの壁……
パルメザンのネコという非力かつ不自由な存在証明を描く一方で、周囲を上手く巻き込みながら逆境を乗り越え、事実を解明していく立ち振る舞いが秀逸です。
目には見えない何かに反応し、叫び、前脚で訴えかけていく。
人間の側から見れば、いったい何だ!? と一瞬でも思わせたらネコの勝ち。
可愛いネコほど恐ろしい……パルメザンにしかできない可憐な●しを秘めた一連の仕草。
それを目撃したら「半透明な存在」と「呪い」から逃れられなくなって……
ねぇ、見えるでしょ? ホラ、あなたの目の前にいる存在が……
猫のパルメザンはおばあちゃんが大好き。
しかし愛する飼い主は突然、自殺してしまった。
――――地獄に落ちる、と確信していたにも関わらず。
新しい飼い主に引き取られても、パルメザンの頭の中はおばあちゃん一色。
彼女が生前に犯した「悪いこと」とは?
そもそも、なぜ死ななければならなかったのか?
わからないことだらけ。
無気力にすら陥ったある日、街のいたるところに幽霊が「視え」てしまった。
ほとんどの者は悪霊。
人がその存在に気付くと、呪い殺されてしまう。
そう、パルメザンが気づかせてやれば……人が死ぬのだ。
おばあちゃんに再び会えるなら、地獄にだって行ってやる。
一緒に焼かれ、刺され、茹でられたって構わない。
パルメザンは得た力を使い、町を歩きだす。
次々に出てくるクセある人物、やむを得ない状況、迫られる選択。
それらは次第に、呪いの真実をさらけ出す。
その救いのない性質は、我々が生きる世界にも共通。
人間のどうしようもない残忍さであり、どうしようもない労しさでもあり……
はたしてパルメザンは地獄に行けるのか? おばあちゃんに会えるのか?
それとも――――
ジャンルや創作物、の範疇に留まらない名作。
殺人事件。殺された人はもちろん、自分に起きたことを証言することはできない。だから警察官や探偵役が、真相を突き止めていく。でも、もしも、その場に居合わせてすべてを見ていた動物が、真相を話すことができたとしたら? 被害者の霊が現れて「犯人はあいつです」と語ることができたとしたら? 霊障が、殺害手段として認められたら?
作者様は、人間や生者の範疇を越え、動物の目線や死後の世界や霊の存在までも見据えて構築したミステリーを執筆されています。「死人に口なし」とは限りません。いえもちろん、霊の存在が公的に認められている世界観ではないのですが、仮に、霊と同調できる特殊な条件を備えた探偵役に、霊が話を伝えることができたとしたら。……でも、霊にも意思があります。その証言を鵜呑みにしていいのでしょうか?
そんな、「人間ではないもの」を巻きこんだがゆえに、かえって謎が複雑になって、推理のレベルが上がってしまったミステリー……。読んでみたくありませんか?
霊や動物が重要なポジションとして登場する本作では、ホラーシーンはもちろん、亡くなってしまった人への哀惜、心無い中傷、死者をも利用して欲を満たそうとする人、絆と信頼、祈りと願い、因果応報と、人間の愚かしさ醜さと優しさ美しさが、人間を超えた目線で丁寧に描き出されています。生者の範疇を超えているだけに、この事件に関わってしまった人に救いはあるのかどうか。このような視点でミステリーを執筆される人はまだまだ少数派ではないでしょうか。人間社会の枠を乗り越えたホラーミステリー、衝撃の展開が次々と待ちかまえ、読むごとに目が離せなくなってしまいます。きちんと完結していますので(当レビュー筆者はまだ読み終えていないのですが)、数奇な生き方を背負わされた猫パルメザンとともに、この事件を最後まで見届けてください。きっと、この事件に救いはあると信じて。
ぼくの名前は、パルメザン。
人を殺すサイコパス・キャットと呼ばれているらしい。
ある夜、ぼくは突然見えてはいけないものを見てしまった。
道路に立ち尽くす半透明の男。そして、その男に触れた女性は、
まるで操られるようにして、赤信号の道路へ――。
大好きだったおばあちゃんがいなくなって、
この世界にいる理由もわからなくなっていた。
そんなとき出会ったのが、幽霊の少女・ミズナ。
人間には見えない。
でも、確かにそこにいる。
そして、触れてはならない。
動き出す過去と、崩れていく日常。
言葉も交わせない幽霊たちが、何かを訴えている。
それに気づけるのは、ぼくと――彼女だけだった。
これは、ひとりの猫と幽霊の少女が
町に潜む呪いの真相に近づいていく、静かで切ない夜の物語。
「猫視点で綴られる物語」と聞くと、きっと多くの方が心温まる可愛らしいお話を想像すると思います。
しかし本作は、人間社会に蔓延る闇を猫ならではの視点で切り取っていくホラーミステリーです。
よく、飼い猫が何もない場所を見つめている、もしや霊がいるのかも……なんて話を聞きます。
本作の主人公・パルメザンも、幽霊を見ることのできる猫です。
彼は大好きな「おばあちゃん」を追って、地獄へ行くことを望んでいます。
そんな折、同じく地獄へ行きたい幽霊の女の子・ミズナと知り合うのですが——
パルメザンを引き取った家族の中にある闇や、その周辺で起きる異変。あるいは街中で起きるさまざまな不可解現象。
それらを追ううち、生前のおばあちゃんの身に何が起きたかのかが徐々に見えてきます。
人の欲と薄汚さ。無責任な噂の残酷さ。
我々が社会で目にするようなことが、パルメザンの視点を通して明かされていくのです。
いったい誰が、なぜ、こんな悲劇を起こしているのか。
作中で描かれていく事象には、思わず我が身を振り返りたくなります。私たち自身にも当てはまることが深く関わっているのです。
パルメザンの心の変化、そして奇跡のようなラストシーンには、涙がこぼれました。
素晴らしかったです。ぜひ多くの方に最後まで見届けてほしい物語です。
おばあちゃんのことが大好きな猫・パルメザン。死んでしまったおばあちゃんの後を追って自分も地獄に落ちたいと切望した彼は、急に幽霊が見えるようになる。そして目撃した不可解な現象。幽霊の女の子・ミズナとも出会い、二人は身の周りで起きていることの真相に迫っていく。
まずは序章を読んでみてください。引き込まれること間違いなしです!
意外性や引きが強く、常に前へ進んでいくストーリー。読みやすい改行。読者が快適に物語を楽しめるよう意識された、エンタメ性の高い作品だと思いました。
視点が猫のため、語り口からはどことなく優しく、易しい印象を受けました。ホラーらしい理不尽な不幸が起こり、人の醜い面が突きつけられ、バタバタと命が失われていくヘビーなストーリーなのですが、パルちゃん(そして、ミズナちゃん)のおかげで重く、残酷になりすぎないバランスが保たれていたように思います。
明らかになった事がその都度整理され、その時点での謎もしっかりと示されるので、物語の設定・方向性もわかりやすかったです。個人的には、それらのおさらい的な描写からは意図的なものも感じ、後半の展開で「回収された」と感じました。
とってもヘビーな内容です。むごいし、つらいです。でも、どんどん読めちゃう。それは、先が気になって仕方がないから。読んでて疲れない文章だから。パルちゃんの視点が純粋だから。
説明くさいレビューになっちゃいましたが、詳しいことは実際に読めばわかります。ぜひ、読んでみてください。
地獄へ行く事を願う一匹の猫パルメザンのお話ですが、序盤から驚きと共に作者様の技量により、物語の世界に引きずり込まれます。
とにかくこの作品、読み手に恐怖と不安を味合わせる、と言う点において言葉も無くなるくらいの完成度なんですよ。
タイミングや引きや演出。
セリフに至るまで全く隙がない。
どんな書き方をしたら、ここまで精密機械のような作りで書けるのか理解できません(汗)
作者様はとんでもなく頭が良く、尚且つ小説を知り尽くしてる人なんだろうな……とは思ってますが……
私は作者様を本当に尊敬してますが、中でもこの作品は凄みさえ感じます。
面白さを計算しつくして、それを余す所なく読み手に感じさせる。
当たり前ですがその凄さを改めて感じさせます。
当然、この作者様の作品は私も数作拝読しただけですが、いずれも愕然とするような衝撃を頂いたので、後悔はしないはずです!
特にこの作品は第一話から間違いなく鷲掴みにされます。
この作品を面白いと思わない人がいたら、その理由を小一時間問い詰めたいくらい(笑)
あまりに理解できなくて。
完全の高い、本物の恐怖作品を感じたいならばこの作品こそオススメです!!
そして、それと共に「自分は物凄い傑作を読んでいるのでは……」とも感じさせてくれるはずです。
私はハッキリ感じました。
人類の歴史を知る者であれば、誰もが気が付く
それは思い違い、すれ違い、勘違い
「不覚」「無明」
そのあやふやから生まれる争いや、憎しみ
個人であれ部族、種族単位でも、価値観、文化の違いにより、自身の「視点」からだけで見たモノへの理解が及ばない場合、それは畏怖嫌悪の対象となってしまう。
無知からの、無知者への「救済」とは
信仰にも貧富の差があり、教養の差から様々な宗派が生まれてきた。
どちらも間違ってはいない。が、正しいと思いたがり、互いに醜く争う。その繰り返しが「人間」
人類とは、永遠に「裁かれる者」であり、決して裁く側へと驕ってはいけない
例え、それら摂理が正しくなくても
自身の心が洗われれば、それは「救済」と成り立ってしまう。
しかしそれは「視点」が違えば、ただのエゴへともなり変わってしまうものですね‥‥‥
あなたは天国と地獄、どちらに行きたいですか?
たいていの人は天国でしょうね。
でも、シャム猫のパルメザンは地獄に行きたいんです。
可愛がってくれたおばあちゃんが地獄に行ったみたいだから、おばあちゃんのそばにいたいんです。
幽霊が見えるようになった猫、パルメザンが、幽霊と『呪い』の関係について、また、おばあちゃんの死の真相について追及し、解き明かしていく本作。
猫のできることには限りがあります。
普通の人間には言葉も通じないので、妨害も、誤解も受けます。
それでも、頭のいいパルメザンは、友達となった幽霊の女の子『ミズナちゃん』と共にがんばるのです。
作者さまの素晴らしい筆力で、物語にぐいぐい引き込まれていきます。
ホラーとミステリーがうまく絡み合った本作は、作者さまがお得意とされるところ。
面白いです!
猫好きさんもホラー好きさんもミステリー好きさんも必見ですね!
パルメザンは本当に地獄に行けるのでしょうか? というか、行ってしまうのでしょうか?
絶対に見届けなくてはなりません。
大好きなおばあちゃんと幸せに暮らしていた、幽霊が見える猫、パルメザン。
ところがある日、おばあちゃんは自死してしまう。
いったいなぜ?
そう言えば生前のおばあちゃんは、「死んだらきっと地獄に行く」と言っていた……。
やさしかったおばあちゃんの過去とは?
なぜ自死を選んだのか?
パルメザン目線で謎解きが始まりますが、猫ゆえの哀しさで、人の言葉が話せないため、思うように情報が集まらなかったり、行動できなかったり。
このもどかしさと周囲の人間の思惑が絡み合って、すごく物語に引き込まれます。
しかも、パルメザン自身が「かわいいだけの猫」ではないんです!
一筋縄ではいかないこの物語、ぜひ一読をおすすめします。