助けて!『トイレ行けなくて困った』のレビューに戦慄! 読んで二度戦慄!
- ★★★ Excellent!!!
スクリーンの幕が上がる。すると、そこに広がるのは毒々しいまでに赤く染まった夕空。視線を落とせば、どこででも見かける平凡な街並みが、今にも闇に呑み込まれそうに沈み、佇んでいる。
たとえば、そんな印象的なシーンではじまる映画を見るような気持ちで、読者は作品世界に誘われていきます。
自分の隣にもいそうな普通の人たちが、『呪物』を手にしたことによって、ある日突然放り込まれる生と死の狭間。死に引きずりこまれるか、生をつかみ取れるか。いくら抵抗しても、読者は当たり前のように彼らの恐怖に自分を重ねてしまう。
前半は、さながら壁に浮き出た染みのごとく。黒く不吉なそれが少しずつ人の形になっていく様を無理やり見せつけられるような、恐怖を味わえます。そう、ジワジワと迫りくる恐怖です。
対する後半は、迫りくるものに追いかけられるドキドキ系の恐怖。
ひと粒で二度美味しい!
けれど、不思議ですね。登場人物たちには悪人もいますが、それぞれが自分なりに生きる意味を、目的を、自身に問い直し、見つけようとあがき、しがみつく姿に、私は人間の強さを感じています。読み手にそう思わせるところに、このホラー作品の厚みがあると思うのです。
しかし──一度読んだら忘れられなくなるこの作品こそ『呪物』かもしれませんよ。