体裁こそラノベのそれですが、内容は現代社会における問題点を明らかにする素晴らしい作品です。
何でも無料の通販。それが、本当に存在することは我々にとって一見幸せのように思えます。
ですが、それって人間本来のあり方としてよいものなのでしょうか?
物質的、金銭的に満たされていることだけが、人の幸せではないはずです。
このような考えを、再確認させてくれる。よい作品だと感じました。
(ここからは少々批判入ります)
作者の発想、伝えたいこと、考えさせたいことなど、非常に独創的で面白いと感じます。
アイデアは素晴らしいので、この部分は有名作家にも勝っているとおもいます。
ですが、何度も熟読を強いる文章になっていることは否めません。
一般読者や編集者にとっては、それによって良さが伝わらず、評価が得られないのではないでしょうか?
素材はいいものを持っていると思うので、改稿することで、もっと輝く作品になると思います。
例えば、冒険を繰り返していますが、1つの冒険に対し、達成感が弱いと感じました。
謎はどんどん膨らむのに、得られるものがゼロという状況はつらいものがあります。
また、転の存在が弱い。
順次謎が見えて行っている状態なので、承が発展しただけという感想を持ちました。
誰かと仲たがいするような大きな転機が欲しいところです。
結論は、締め切りの関係でしょうか?
上から目線で申し訳ありませんが、率直なところとしてお伝えします。
目指せ!新人賞!!!!
何でも好きなだけ無料で注文出来てしまうという「天蔵」。一見すると夢のようなサービスだが、何やら不穏なディストピアの気配が漂っている。「天蔵」とは一体何なのか?
それは現実世界で某密林がしばしば独占や廉売で市場を支配しようとしているのともリンクし、読者の興味をぐいぐいと引っ張っていく。
このディストピアとは何も舞台設定だけの話ではなく、登場人物の内面を反映してもいる。ディストピアから抜け出そうと試行錯誤するうちに、登場人物達は必然的に自己の内面とも向き合い、見つめ直していくことになるのである。
内面を反映した詩情感ある風景描写や心理描写なども作品の雰囲気を上手く伝達しており、途中で描かれるDIYの光景なども良いスパイスでした。
欲しいものは何でも無料で届けてくれる「天蔵」なる通販サービスで、働くことなく、またお金に困ることもなく、暮らせる世界。
そこで生活するヒロイン・律歌は、しかし持ち前の旺盛な好奇心で、その世界の仕組みを見極めたいと考え、北寺と共に行動するのですが――前半のスローライフパートで二人の距離感にヤキモキさせられたかと思えば、中盤からは予想だにしなかった怒涛の展開。
この世界に隠された秘密を知っていくにつれ、冒頭で見せた律歌の涙の意味も明らかになり、何とも苦しく切なく、いたたまれない気持ちになりました。
しかし、辛い記憶を取り戻して尚も『夢』のために立ち上がる律歌。
その強い意志と行動力に、『夢を叶えるためにはこれだけの覚悟がなくてはならない』という強烈なメッセージを受けました。
『夢』とは何なのか?
『幸せ』とは何なのか?
『自由』とは何なのか?
数多くのテーマがぎゅっと濃縮されておりますが、『夢を抱く者』の心に間違いなく熱を灯す、圧巻の作品です。
総ての商品無料!送料無料の通販、天蔵!
ボタン、一つで――― ピンポーン!「白猫アマトの宅急便でーす」
だけど・・・「何で、無料なの?」
ポジティブで、恐れを知らないヒロインがその謎を追って駆け巡る。
ときにマウンテンバイクで森を行き、おんぼろトラックで山道を疾走。空だって飛んでみせる!
そして、辿り着いた答えとは・・・それは読んでのお楽しみ。
明るくて、ときどき甘えん坊で我がままのヒロインに、あっという間に作品の世界に取り込まれます。
忘れたいこともあるけれど、落ち込むこともあるけれど、それでも前進あるのみ!
作者の未来を信じる心が溢れる作品です。
勉強で、仕事で疲れきった、あなた、絶対に読むべし!
とてもよく作り込まれた世界観の作品です。
記憶をなくした律歌が迷い込んだ世界では、アマゾウという通販で何でも無料で手に入る。
働かなくても良いし、好きなことをしていられる、そんな夢のような世界。
しかし、好奇心旺盛な律歌は、この世界で出会った男性、北寺とともに、この世界の謎に触れることになる。
律歌の記憶が回復するにつれ明らかになっていく、この世界の謎、神の存在、そしてもう一つの世界。
小さな箱庭に始まった物語は、やがて律歌と北寺の過去につながっていきます。
自由奔放な律歌と、彼女に振り回されつつも、優しく見守りながらサポートする北寺の共同生活にも注目です。
本作の魅力はふたつ。
ひとつは意表を突く展開。もうひとつは主人公のキャラクターである。
記憶を失くした末松律歌が目覚めた町は、すべてが通販で揃う世界。なんでも買える。しかもすべて無料。何不自由ない暮らし。彼女の周囲には気の合う仲間もいる。
そのままずっと、そこに住めばなんの苦しみもないのだ。
だが、律歌はそこに疑問を持った。その楽園のぬるま湯に安穏とつかり続けることを自ら拒否したのだ。
彼女が動き出すことにより、徐々に明らかになって行く秘密。謎。そして醜悪な人間のエゴ。
読み進めるうち、ページを繰るたびに様変わりする物語。謎が解かれれば新たな謎が顔を出し、箱を開けば、中から出てくるのはさらに大きな箱。
これはいったいどうなっているのだと読み進むうちに、読者は未曽有の狂気と驚愕にさらされる。
とにかく物語の展開がすごい。ラストまで読んで、これ、最後にこうなること分かっていて冒頭とか書いていたのかと思うと、作者の構成力には舌を巻かざるを得ない。
先が分かっているのに、作者がその場面その場面で読者を欺くことが出来るのは、そのシーン、そのときのキャラクターの心情を1つ1つ丁寧に描写できるからだ。
そしてその、騙し絵の入れ小細工、開ければ開けるほど大きなって行くマトリョーシカのようなストーリー展開の中で、しっかりと貫かれる主人公・律歌のキャラクター。
ぶれず、曲がらず、へこたれず。
かといって律歌は、決して血の通わないブルドーザーのような性格ではない。傷つき、悩み、苦悩する。殴られれば、倒れて気絶だってする。ただし、必ずもう一度立ち上がるのだ。
その姿に読者は胸を熱くし、心を動かされる。
本作は、集約するなら、驚愕の展開に瞠目し、主人公の姿に勇気をもらう。そんな作品であるといえよう。
着替えることもできなかった主人公が、そこから歩む物語。
それを優しく見守る北寺。
二人を通して、この世界が語られていきます。
何も不自由のない生活。
楽園を思わせる描写に、そこに生活する人々。そこでの生活は、いつしかその痛みを忘れさせていきます。
生きることに必要なものは、何でもそろう天蔵サービス。
逆に、生きることに必要ないものはそろわない。
そんな中で、主人公は何かを求めて行動していきます。
そんな主人公をそばで支える北寺。秘密に包まれた彼の行動。
そして、もう一人。
優しさとはなんなのか。
見守るとはなんなのか。
その行動は、そんなことを教えてくれるような気がします。
生きるということは、生かされるのではない。
主人公の魂の叫びをお聞きください。
気がつくと、あらゆるものが通販『天蔵』(Amazou)から届くユートピアにいた主人公の律歌。
彼女は、気の良い友人の北寺と一緒に甘く幸せな日常を送っていた。
何の不自由もない、何の苦しみも、何の辛さもない世界。
しかし、そんな世界に彼女は少しずつ疑問を抱き始める。
彼女は果たして、世界の真実を探り当てることができるのか?
あらゆるものが届くはずの通販『天蔵』が届けられないものを手にするための、彼女の試みは始まった。
後半の真実が次々に明かされていくくだりは、目を離せません。
幸せとは何なのか。
生きるとは、どういうことなのか。
夢を実現するということは、どういうことなのか。
そして。その裏に隠された、痛烈な現代日本や現代社会に対する問題提起。
果たして、現実に生きる私たちは何を目指していくべきなのか。
そんなものを読みながら考えさせられました。
そして同時に、彼女の行動力と彼女の選択、彼女を取り巻く二人の人物の行動と選択にも胸を躍らされました。
何度も何度も否定されながらも、それでも『夢』を持つことは素晴らしいと、そう強く思わされる作品です。
欲しい物は全て無料で届けてくれる通販サービス「天蔵(アマゾウ)」。
夢のような世界で暮らす律歌は、失われた記憶に秘められた真実に近付いて行く。
前半の律歌と北寺の暮らし。手に入る物を使って手に入らない物を創造していく発想と行動に、ロマンを含んだファンタジーを感じつつも、天蔵と運送業者アマトから滲み出る謎のミステリー要素。そして中盤のホラーじみた展開に読者の心は激しく揺さ振られる。
ジャンルの垣根を飛び越えた展開から繰り出される、後半の愛と涙のヒューマンドラマ。こんな物語は見たことが無いと、きっとそう思います。
現代社会への胸を打つ強いメッセージが込められているのも、この作品の魅力ですね。
この不思議な世界は一体「何処」なのか? 何故ここにいるのか?
あなたの目で是非、確かめてください!
好きな時間に寝て起きて、朝から晩までしたいことだけして、欲しいものは全部タダで手に入る。
誰もが一度は思い描いたことがあるであろう、夢のような生活。
しかし実際その状況になったら、人はマトモでいられるのか? それを追体験できる作品です。
記憶喪失の主人公・律歌は、半同居人の北寺と共にこの夢の楽園でまったり暮らしながら、あちこち探検をします。
マウンテンバイクで走って地図を作り、トラックで山を越え——
そこで気付くのです。
この場所から出られない、ということに。
ここは一体どこなのか?
なぜ記憶がないのか?
天蔵とは何なのか?
それらの謎が紐解けた時、きっとあなたも目の覚めた思いがすることでしょう。
これは、夢なんかじゃない。
近い将来起きるかも知れない、いや、既に起きつつある、紛うことなき現実の問題なのだ、と。
働き過ぎはいけません。
でも、全然働かないのもいけません。
個人的に印象に残ったのは、前半の途中にあった、住民全員が力を合わせて石油からガソリンを作ろうと頑張るシーン。
純粋な「働く喜び」の一つの形が、あのシーンに暗喩されているように感じました。
とても面白かったです。
余談ですが、同作者さまの『四次元の箱庭』を既読の方には、ちょっと嬉しいシーンがあるかも。
欲しい物が気軽に手に入るうえに支払いも要らない。働かなくても良い、夢のような世界。
主人公はそんな世界に疑問を抱き、様々な手段を用いて出ようとする。
この世界は何なのか? どうして自分が此処にいるのか?
そんな素朴な疑問が次第に明らかになっていく。
この話には色々な「理想」と「現実」が存在する。
何かをしようと思って手に入れたものが、全く役に立たない。
こうしたいと思って行動しても、何の意味も成さない。
こう在りたいと思って努力しても……。
主人公はいくつもの理想を抱いては現実を叩きつけられる。
そしてそれを繰り返しながらも、彼女は前へ進んでいく。
作中の全ての人間が理想と現実を持っている。
その全てを手放しで賞賛することも、真っ向から否定することも出来ないだろう。
登場人物たちがそれぞれ抱える理想と現実。それぞれの立場になって物語を読むと、更に奥行きが増してくる。
何でも無料で手に入る楽園のような場所が舞台。そこでは何もかもが満たされていて、それを享受することが許されていた。
しかし、主人公はその「楽園」に疑問を抱いてしまう。ここはどこなのか? どうして全てが無料なのか? この先には何があるのか? それらの疑問を解決すべく、様々な方法を駆使していく主人公とその理解者。
そして主人公はその「楽園」が虚構だという事実を知ってしまう。しかも、「楽園」は主人公を残酷な現実から救い出そうとして、作られたものだった。彼女は「楽園」の構造を知り、痛みまみれの現実と向き合うべく、「楽園」からの脱出を試みるのだが……⁉ 果たして彼女の向かう先に希望はあるのか? 力強い彼女の選択に、作者の強いメッセージ性がうかがえる秀逸な作品です。
前作『夜勤』からのファンで、この作者様がコンテスト参加したことを知って、すぐに読み始めました。前回の御作『夜勤』の設定も素晴らしかったのですが、今回の作品を拝読して、世界観の作りこみ方は群を抜いていると改めて感じました。
読んで絶対に損はない、素晴らしい作品です!
是非、その目で今まで見たことがない世界観を堪能して下さい!