満足しているのに次が待ち遠しい

 作者である結城さんの作品を読むと、素晴らしい描写な点が当たり前すぎて、こうしてレビュー書こうとする際で毎回触れる私は馬鹿なのかと思う。

 だが、結城さんの作品に初見の読者も居るので、やはり触れるべきと考えている。独特の世界観を、少ない説明と豊富な語彙、そして世界観に沿った台詞で読者へ印象深く伝える力を、この作品で味わっていただきたい。

 次に、この作品で綴られる世界観でシリーズ化されるらしいと考えたとき、十二国記の「月の影 影の海」を思い出しました。内容が似通ってるということではなく、男性作家なら本編の前振り段階にして、さあ、これからだという部分を一つの作品とする「潔さ」に同じものを感じました。

 これは結婚観の違いによるものなのか、それとも性差によるものなのか判りませんが、男性でしたら作品世界で示されてる諸々の問題を解決させようとし、そこまでを一つの作品として書いてしまうだろう。
 でもこの作品はそうではない。物足りないというのではない。十二国記がそうであったように、この作品も読者を十分に満足させてしまう点に驚いている。

もちろん物足りなさを感じる方も居るだろう。
でも、その方はきっとこの作品の次を待ち望む。
それだけの魅力がこの作品にあるからだ。

 主人公が、一生添い遂げる覚悟と愛情を持って王妃になるまでのストーリーが、この先の作品への飢えを引き出す魅力。
 是非、その魅力もまた十分に味わっていただきたい。

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