天は一つ、生きる道も一つ。転んでも突き落とされても、進んでいく。

主人公の宝余は、強いひとだ。

別に、クマを倒せるとか一日で千里を走るとか、そういうことではなくて。
平穏な暮らしを終わらせられても、嫁いだ先で理不尽な仕打ちを受けても、必ず前を向き直る。

そんな、心の強いひと。

だからこそ、危機は必ず何とかなると信じてーーあるいは、もっとひどい目に遭うのではないかとハラハラしてーー読み進んでいける。


王宮の一番奥から、虎が住まっていそうな山奥まで。物語は国中を巡る。
そして最後は、王宮の奥で幕を下ろす。
大きな大きな流れの中のほんの一部にしか過ぎない、宝余が生きる場所に真っ直ぐ立つまでの物語。
目の前に広がる風景と人の顔、続いてきた営み、情の数々。細かなところまでじっくり味わえます、是非どうぞ。


そんな物語のタイトルを、最初はふんわり優しげだなーと思った。
実際のところ、物語の中ではとあるアイテムをそう呼んでいる。だけど、ほんとうにそれだけかしら?
日輪が何を指しているのか――最後まで読み終えた今、ニヤニヤしている。

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