交錯する陰謀と、運命の行方
- ★★★ Excellent!!!
宝余(ほうよ)は、涼国の公主として、隣国・烏翠(うすい)の王・顕錬(けんれん)のもとへ降嫁することになった。顕錬は、烏翠では国を滅ぼすと噂される「紫瞳の国主」だった。国同士の政略とはいえ、宝余を迎える烏翠王宮の対応は冷たい。極めつけに、夫である顕錬には、新床で刀を突きつけられてしまう。それは、宝余の抱える秘密を、見破られたせいなのだがーー
すれ違う宝余と顕錬の心。やがて謀叛を疑われた宝余は、王妃としての地位を奪われ、幽閉されてしまう。心理的に追い詰められるが、なお自己を保とうとする彼女に、さらに過酷な運命が襲いかかる。
中華風異世界FTは、文化的な描写や用語が難しいと感じる方も多いでしょうが、本作はするすると読めます。何より、ヒロインの宝余に次から次へと降りかかる苦難に、終始ハラハラさせられました。想像するだに過酷な状況ですが、常に顔を上げて進んでいく宝余に、力づけられます。最後は、彼女と顕錬と、この国の未来に希望を感じる結末で、ホッとさせて頂きました。緊張感があるからこそ、読後感は爽やかです。
個人的には、忠賢が好きです。彼と宝余の将来をちょっと期待しました。技芸を生業とするこういう集団の在り方には、民俗学的な興味を惹かれます。