基本ストーリーは、少年が成長しながらお姫様を助けに行く話。
ストーリーラインは非常に素直で単純だ。
しかし、そこに日本刀をはじめとした武器、そして武術というエッセンスがたっぷりと詰めこまれている。
さらに、漫画チックな個性的なキャラクターたちが暴れまわることも強い魅力を放っている。
だが、それはあくまで味付け。
やはり、ゾンビ!!
このゾンビの導入があまりに自然で驚く。
少年の一人称ながら淡々とした文章で、日常から非日常へと運ぶのだが、その運ばれた先の非日常がなぜか日常のような空気を漂わせている。
その独特の雰囲気が強い個性を放って、「怖い」というよりも「面白い」という印象を強く焼きつけてくる。
そしてスピーディー。
語り型の文章の特徴を活かした物語の進行は、次々と展開していき、飽きさせない構成が練られている。
見終わった時、まるでゾンビ映画を1本見たような満足感と快感がある。
素直に「おもしろかった」と思える作品だろう。
ごちそうさまでした!<(_ _)>
やり直すはずだった日常が、壊れていく。
突然のことに主人公、上町邦彦は現状に追いつけない。中学生、15歳なら無理もないでしょう。
彼は祖父をはじめ、様々な人達――個性豊かな仲間たちに生きることを教わりながら、迫り来る「死にかけ」を倒し、踏み、進んでいく。
幼馴染の女の子、ユミを救うべく。ただの幼馴染という枠を越えて、大事な存在となっていく彼女を想い、時には辛い別れも刻みながら一歩ずつ強くなっていくのです。
好きな子を救うために敵を討つというシンプルな構成ですが、それがいい。最後まで圧巻でした。
「ゾンビVS日本刀」ってキャッチコピーに惹かれ、そしてタイトルの「カネサダを北極星へ向けろ」がかっこよくて、パッケージ買いっていうのかジャケ買いっていうのか…読み始めた動機はそんなでしたが、本編がめっぽうかっこよく、物語に引き込まれました。
武道に関する知識や描写が作者様らしく、とにかく説得力があるので安心して読み進められます。いや、内容はまったく安心できないんですが。
生きるか死ぬかの瀬戸際で、それに仲間が容赦なく死んでいく……つらいです。好きなキャラクターが死んでいくのはつらいです。
それでも生きなきゃいけない。死ぬわけにいかない。邦彦とともに前を向いて進んでいきました。
リアリティあふれる情景に、この悲惨さがどうにも身近に起こりそうで、怖い。
たとえゾンビに襲われないにしても、日本は災害大国ですから生き抜くための術、知恵や武器を備えるに越したことはない。便利になりすぎた現代だからこそ必要な知識ですね。
正吉おじいちゃんの教えに頷きながら、ショウさんのマニアックな知識に唸りながら、読者も主人公とともに術を蓄えていける。
スリルなサバイバルアクションだけでなく、たくさんのことが学べる一作でもあります。
また、物語もさることながら、筆致のかっこよさに惚れました。
愛すること、生きること、死ぬこと、戦うこと、大事なものを得られる作品です。ぜひ、ご一読ください。
読み終えて「完璧!」と思いました。
Web小説として素晴らしい完成度。
まず、出だしの二文が出色です。
「誰だって、布団に入って目を閉じたときに空想するシーンがあるでしょ?
それと同じさ。」
そこから先は、あれよあれよという間に物語が展開していきます。中だるみは全くありません。
そして最後の最後まで、物語の面白さを詰め込んであります。
素晴らしいと思ったところを箇条書きで。
・見事に構成されたストーリー
・魅力的なキャラクター(名前のついているキャラのほとんど)
・迫力がありつつも理知的な戦闘シーン
・自然な伏線とその鮮やかな回収。
・とにかく読みやすい。
・ゾンビ物として画期的な点がいくつもある(後述)
そういうわけで、多くの方が、無理なく楽しめる作品だと思います。
ものすごく読みやすいんですよ。こんなに分かりやすく情景を描写するのって、すごいことです。
前述の「ゾンビものとして画期的な点」についてです。
私はゾンビものが好きで、主に海外の映画を色々観ているんですが、それらと比べても全く遜色がない。それどころか、今までなかった「工夫」がいくつもあるのですよ!! 作者様すごい、天才か⁉ と思いました。
どこがどう工夫されているかは、是非読んでみて下さい。ゾンビ好きなら、「そう来たか!」となるところがいくつもあるはず。
是非たくさんの人に読んでもらいたい作品です。
まずね、タイトルに惹かれますよね。
そして次に浮かぶのは「カネサダ」って誰の事?ってなりますよね。
この言葉が指すのは会津兼定、つまり一振りの刀なんですね。
よく刀とは武士の魂とは言いますが、本作ではキーとも言える立ち位置。銃規制により日本では基本的に銃は出回ってません。(猟銃を除く)ロメロ(監督)ウィルスが蔓延し、死に掛けと呼ばれるゾンビが徘徊する町で刀は有効な防衛手段として利用価値のあるものとなりました。
なら、北極星に向けろとは単に方角を指しているだけなのか?
否、それはご自身の目でお確かめ下さい。
ひとまず
「12話 永遠には生きられない 」まで読んでその意味を確認してみて下さい。
本作の特徴としてはホラーゾンビパニックというよりは、災害に近いゾンビハザードに対し、どう対処していけば良いか、サバイバル色の強いホラーになっております。
書き手さんの影響か、どこか体育会系の匂いのする男らしい作品で、直球的な表現は読者を選びません。取材や下調べをしたであろう箇所も最低限の説明に止め、読者の事を考えてくれています。
いくつかの出会いと別れを繰り返し、少年は星の下へと辿り着けるだろうか?
ゾンビ映画の定番的要素も散りばめられてますが、根底にあるのは少年の成長物語です。
そして刀の他にチート要素として、茶色いあれが出て来る訳ですが、これがある意味で一番強いかもです。
世界が反転した時、武道の心得がその道を切り拓く。刮目せよ、このゾンビサバイバル。
始めに断っておくが、私は作者・梧桐彰氏のいわゆる固定ファンである。
氏の作品はことごとく私にとって琴線に触れる傑作良作ばかり。未だかつてハズレと感じたことはない。
しかしながら、今作に関しては当初非常に困惑し、読むかどうかをかなりためらった。
なにしろ内容が「ゾンビを日本刀でぶった斬る話」である。
ゾンビといえば、半死人が徘徊し、生者を襲い、かくして世界は亡者の王国となったのでした――そんなB級映画のイメージしかない。
この作品は本当に大丈夫なのか? いくらなんでも、私の好みに合わないのでは?
そんな一抹の不安とともに読み始めた。最悪、口に合わなければそっとブラウザを閉じればいいのだと呟いて……。
不安は杞憂だった。
やはりこの作品、最高に面白い。
まずこの作品に登場するゾンビとは「自立歩行する災害」だ。
ある日突然、前触れもなく現れて、日常を破壊する、地震や台風といった災害の象徴なのだ。
この物語の基本骨子は、その災害の中でどのように生き延びるかにある。
気合いだとか根性だとかは通用しない。たった一つの判断違いが危機を招く。綱渡りのような恐怖がある。それを乗り越える術が一つ一つ登場する。恐怖が薄れ、希望が見えてくる。
言うなればこれは「対ゾンビ災害対策マニュアル」。これを読めば明日この世が死んだとしても、生き残る確率がぐっと上がるに違いない。
そしてサブストーリーとして、主人公の人間的成長と恋模様が描かれる。
死の権化が徘徊する中を、たった一人のために歩めるか?
それも、焦ることなく、冷静なままで。私なら30分で退場すると思う。
また一方で読者を楽しませてくれるのがアクションだ。
なにしろこの歩く災害、幸か不幸かぶっ殺せば死ぬのである。
主人公は剣道、またそこから昇華させた剣術を扱う。それ以外にも多種多様な武術を身に着けた人物が現れ、それぞれの特色を活かしながら死者に引導を渡す。
やっぱり梧桐作品はこうでなくっちゃ!
そんなわけで、ゾンビものという部分に不安を感じる必要はない。
敵を退け前に進む、進み続ける。これはそういう物語だ。
小気味好いテンポに優れたプロットに魅力溢れるキャラクターに、徹底した世界観のリアリティと読者を飽きさせない緊張感の連続と、どこをとっても一級品!
いわゆるゾンビの溢れる世界でサバイバルを繰り広げる作品はいくらでもありますがその中でも群を抜いて面白い。ゾンビ相手にただ武道で立ち向かうのではなく「武道の知識、経験をどうやって生き残る為に活かすか」が練られており、武芸に対する知識と哲学が物語に深みを、キャラクターに魅力を加えている。
またリアリティの追求が徹底しているから、ゾンビが溢れるという虚構に対して全体がニセモノっぽくならず「本当になったらどうしよう」という恐怖と緊張を感じる。
ストーリーは序盤から緩むことなく加速を続け、主人公は目的を達することが出来るのか、誰が生き残るのかと気になって読み進める手が止まらない。カネサダを北極星に向けろ。タイトルも最高に格好良い。
非常に面白い、傑作!!