夏:見つけた姿、動き出した時間

 夏祭りの出し物に目を輝かせる持田を前に、俺− 柊和也もつい顔を綻ばせてしまう。

 というのも、会場に到着してから今に至るまで、持田はずっと興奮気味で見ているこちら側まで楽しくなる。

 ふと目に留まったわたあめを2つ買い、1つを持田に渡す。

「え、いいの?」

「俺も食べたかったし、ついで」

 わたあめを手に取った持田は、手で小分けにせずそのままパクッとかぶりついた。

 お、そう食べるのか。

「美味しい・・・。ありがとう、柊」

「おう」

 そして俺はあるとこに気がついた。

 持田の母と再会してから、持田の表情が豊かになって明るくなった。

 それは夏祭りのだからではなく、もっと根本的なものだ。

 止まった時間が動き出した、と言えばいいのだろうか。

 これが本来の持田なんだな。


 今日の持田を見て、俺も自分の気持ちに気がつけた。


 そんな俺の心境なんてどこの空。持田はりんご飴を両手に駆け寄ってきて、片方の飴を俺に手渡した。

「おじさんが1本オマケしてくれたから」

「サンキュー」


 さて、いつ伝えるかな。

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