これぞ推理小説!絡み合う事件の糸を解きほぐすのは愛すべきオジメンです!

 こちらの作品は本編と番外編で、二つの世界観を体験することができます。 
 場所はイタリアのフィレンツェ、主人公はジャンニと言う名のおじさん。
 同じ場所、同じ名前を持つ登場人物たちが、十六世紀と現代、二つの時代でそれぞれの事件を追う姿が見られると言う、なんとも贅沢な作品です。
 
 まず本編では、十六世紀のフィレンツェで、宝石職人のジャンニ親方が、今で言うところの陪審員&裁判官のような役目に任命されたことで、数々の殺人事件の謎を追っていくことになります。
 ジャンニ親方は、イケメンでも無いし、だらしなくてエッチな妄想全開な普通のおじさん、どうやって仕事をさぼろうかと画策しているうちに、深く深く事件に関わっていくことになるのですが、不思議なことにいつの間にかとってもカッコいいイケオジに見えてくるのです。
 正にマジックのように!
 それだけこの主人公が魅力的であり、作者様の人物描写が見事なのだと感動しました。
 
 また、貧しい十六世紀の人々の生活や、特権階級の人々の様子、市居のほんのチョイ役の人々に至るまで丁寧に描かれているので、目の前で繰り広げられる映像のように鮮明に想像することができます。正に読む歴史体験でした。
 脇を固める弟子のミケランジェロ、若き警官のレンツォ、バスティアーノ、上司のラプッチを始め、綺羅星のように輝く個性派揃いなのも楽しいです。

 番外編では現代のフィレンツェで起った教授殺人事件が二転三転しながら意外な犯人へと導かれていきます。
 先の読めない展開、次から次へと起こる事件に、犯人を予想する楽しみなど、推理小説ならではの醍醐味を満喫することができます。
 また、十六世紀で活躍した人々と同じ名前の登場人物が出てくるので、重ね合わせたり、違いを楽しんだりと言うことができるのも二倍の満足度。

 本格ミステリを読みたい方、おじさんが活躍する姿を見たい方、歴史小説を体感したい方等々、みんなが満足できる上質のエンターテイメント作品です。
 是非この感激を味わってみてください!

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