天才博士の誤算
天才博士の誤算 問題編
「先輩! 先輩!」
元気そうな少女が勢いよく扉を開ける。
窓際に座っている青年はなにやら考え事をしているようで、めずらしく少女のほうを見なかった。
「先輩なにしてるんですか?」
少女が不思議そうな顔で青年を見ながら駆けよる。
「クロスワードパズル」
「クロスワードですか! 私も——」
少女は「私も手伝いますよ!」と言いかけた言葉を飲み込んだ。青年の手元にあったクロスワードパズルが英語だったからだ。
「一緒にや——どうしたの?」
今度は青年が表情の固まった少女を不思議そうな顔で見る。
「いや、やっぱり先輩の楽しみをとるのはよくないかなーって……あはは……そ、そんなことより! 今日は天才博士です!」
ごまかすように少女は声を大きくした。
「じゃあ聞こうか」
青年はペンを置き、クロスワードパズルを机の端によせた。
少女はわざとらしく咳払いをし、大きく息を吸い込んだ。
「じゃあいきますよー!」
そう、これは実際に起きた事件などではない。
後輩の少女が先輩の青年のために問題を出し、先輩の青年が後輩の少女のために解答する物語である——
あるところになんでも作れる天才博士がいました!
その博士にはめちゃくちゃ恨んでる人がいました。滅多に会う人でもないし、表向きは友人でしたが、博士はどうにかその人を殺したいと考えていたのです。そこで博士は完全犯罪が可能な毒薬を作り出します!
その毒薬は無色透明、無味無臭、死亡率が百パーセントなうえ、どのような検死でも検出できません。しかも、毒を飲んでから死ぬまで五日から十日かかり、死ぬ直前までは体調になんの変化もなく、いきなり心臓が止まり死んでしまうんです。状況証拠も物的証拠も残さない、まさに完全犯罪!
そして、博士は相手を食事に誘い、飲み物にその毒薬を混ぜて飲ませることに成功します!
それから数日、博士は相手が死ぬのを今か今かと心待ちにしていました。そしてついに、相手が死んだことがわかります!
積年の恨みを果たせたことを喜んでいた博士ですが、計算外の事実が発覚します! なんと警察が本格的に捜査をしているようなのです!
警察も自然死を操作するほど暇ではありません。しかし博士の毒薬は完璧で、他殺を疑われるようなことはないはずです。
さあ! なぜ捜査されているのでしょう!
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